幼馴染が自撮りを連投して、可愛いのカツアゲをしてくるんですが
大学の講義が終わり、家でのんびりスマホを眺めていた時だった。
ぶるるっ。
通知。
『遥香』
嫌な予感しかしない。
「……絶対ろくなことじゃない」
恐る恐る開く。
『ねぇ』
『暇』
『見て』
一枚目。
どこぞのカフェで撮ったらしい自撮り。
さらに。
『どう?』
二枚目。
角度違い。
『これも』
三枚目。
今度はピース。
『こっち好き』
四枚目。
少し上目遣い。
五枚目。
六枚目。
七枚目。
「送ってきすぎやろ!」
思わずツッコむ。
しかも全部ほぼ同じ。
違いが分からない。
『私可愛いでしょ?』
来た。
いつものやつだ。
『知らん』
そう返すと、既読が一瞬で付く。
『えー』
『ちゃんと見た?』
『見た』
『可愛い?』
『知らん』
『可愛いって言えや』
『命令形やめろ』
『ほら』
また写真。
今度はフィルター付き。
猫耳。
犬耳。
うさ耳。
全部送ってくる。
「なんなんこいつ……」
電話が鳴った。
「もしもし」
『何で可愛いって言わんの』
「そんな催促するもんちゃうやろ」
『だって言わへんし』
「言わなくてもええやん」
『幼馴染サービスや』
「そんなサービス聞いたことない」
『今から質問』
「嫌な予感しかしない」
『この中で一番可愛いのどれ?』
「全部同じや」
『ちゃんと見ろ!』
「いや、違い分からん」
『分かるから!』
電話越しにぷんすか怒っている。
昔からそうだ。
何かあるたび俺に絡んでくる。
ゲームで勝った。
新しい服を買った。
髪を切った。
ネイルを変えた。
全部最初に見せてくる。
そして毎回感想を要求する。
『ねぇ』
「なんや」
『今の前髪どう?』
「普通」
『普通って何!』
「前髪やん」
『もっと褒めろ』
「めんどくさ……」
『聞こえた』
「聞こえるように言った」
『ひど』
数秒沈黙。
と思ったら。
『ほい』
またDM。
「まだ送るんか!」
今度は動画だった。
カメラに向かって変顔。
次の瞬間、真顔。
最後に満面の笑み。
『可愛い?』
『ね?』
『ね??』
『返事』
『おーい』
通知が止まらない。
「お前暇なん?」
『暇』
「即答かよ」
『だから遊んで』
「そのための自撮り爆撃か」
『正解』
「普通に誘えや」
『それじゃ面白くない』
「面白さ求めるな」
『で?』
「何が」
『可愛い?』
結局そこへ戻る。
俺はため息をついてキーボードを叩いた。
『はいはい、可愛い可愛い』
既読。
三秒後。
『でしょ?』
『やっぱりそう思う?』
『見る目あるじゃん』
『昔から分かってたけど』
「自分で言うな!」
電話越しにケラケラ笑う声が聞こえる。
『ありがと』
「……ん?」
『じゃあ満足したから切るね』
「それだけ?」
『うん』
「暇だから絡んできただけ?」
『そう』
「迷惑やなぁ」
『でも返信してくれるじゃん』
「まあな」
『優しいね』
「違う。放っといたら通知百件くらい来そうやから」
『バレたか』
最後まで笑っている。
『じゃ、おやすみー』
「おう」
通話が切れた。
静かになったスマホを机に置く。
「……やっと終わった」
そう思った瞬間。
ぶるるっ。
『あ、最後に一枚送り忘れてた』
今日一番の笑顔の自撮りが送られてきた。
その下には一言。
『保存推奨』
「誰がするか!」
そう返すと、
『スクショでも可』
という返信が、一秒とかからず届いたとさ。
