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debupinoko
シュレーディンガーの夫
朝起きて、コーヒーを淹れようかなあと思い、トイレのドア越しに夫に声をかける。返事がない。私の声が小さかっただろうか。もう一度、今後はもう少し大きい声で言ってみる。
「夫くん!コーヒー!飲むか!」
返事がない。どうした。消えたか?
ついさっきまで、「ぽん子ちゃん起きないの?」など言いながら、階下でバタバタしていたはずだが。
人の気配のないリビングで、ぼんやりしていると玄関のドアがガチャ、と開く音がした。
夫じゃないか!そうか、朝の運動に行っていたのか。
私は、朝から虚空に向かって一生懸命声をかけていたということか。いとあわれなりじゃん。もののあわれじゃなくて、マジの哀れ。
帰ってきた夫に、「私は、君がトイレにいると思って、ずーっとドア越しに、コーヒー飲むか?って聞いてたんだよ」と、先ほどまでの流れを説明する。
「こうやって、ドアの前でな、夫くーん!コーヒーいる?ってやってたんだよ。誰もいないのに」
私は、トイレのドアの前で、つい数分前の自分を再現する。
夫は、笑いをこらえきれず、スクワットのフォームが乱れている。
「それで、コーヒーは飲むか?」
「お願いします、今日はホットにしようかなあ」
ということで、二人分のコーヒーを淹れ、夫は街中に、私は山奥にそれぞれ仕事に向かったのでありました。
今日の話にオチもいい感じの締めもない。
ただ、私が朝から間抜けだったなあ、というだけのお話である。めでたしめでたし。
