あの子と歩いた5年間のはなし
私がここに来て、もう5年も経つのね。
来たばかりの時はピカピカだったのに、もうすっかりすり減っちゃった。まあ、それだけ、たくさんお出かけしたってことね。
私?私は、ぽん子ちゃんの相棒よ。あの子がいつも履いてた黄色いスニーカー。
出会った頃は、こんなに長い付き合いになるとは思わなかったな。私たち、銀座の靴屋で会ったのよ。
ぽん子ちゃん、優柔不断なところあるじゃない?
あの時もそうだった。鏡の前で試着してさ、「可愛いよね。でも、ちょっと派手かなあ?」て散々迷ってたもんね。夫くん、呆れてたわよ。
私たち、随分と色んな場所に行ったわね。
近所のスーパーに、大きい図書館。ウエディングドレスの試着。私、もしも人間に生まれていたら、ドレス着てみたかったな。
ぽん子ちゃん、この時もめちゃくちゃ迷ってたわね。私がお喋りできたら、「こっちの方が素敵よ」って言えたんだけど。でも、あのお花のやつ、似合ってたわよ。
後は、そうね。よくライブハウスにも行ったわね。初めて行った時は、驚いたわよ。暗くて、騒がしくて。でも、ぽん子ちゃんは、ここが好きみたいね。ライブハウスはよくわからないけど、知らない土地をお散歩できるのは楽しかったな。
それから、ぽん子ちゃんが生まれた島にも行ったわね。私、海ってはじめて見たわ。
おっきくて、キラキラしていて、綺麗だったわね。私、自分の黄色いからだも気にいってるけど、海の色も素敵だったな。
そうそう、馬も私、はじめて見たのよ。
あんなに速く走るのね。迫力あったわ。
あとは、どこに行ったかしらね。
本屋さんに行った時は、ぽん子ちゃん夢中になって動かないし。パン屋さんもよく行ったわね。
私、食べることはできないけど、パンの匂いは好きだったわ。
私たち、毎日一緒だったもんね。もっと一緒にお出かけしたかったけど、ちょっとくたびれちゃったみたい。
私のからだがボロボロになったのをみて、ぽん子ちゃん、ちょっと寂しそうな顔してたの。
やめてよ、私も悲しくなっちゃうじゃない。
そっちのことわざに、「いい靴は素敵な場所へ連れて行ってくれる」っていうのがあるんでしょ。
いい言葉よね。スニーカー冥利に尽きるわ。
私が、ぽん子ちゃんのこと素敵な場所に連れて行けたかはわからないけど、でも、私は楽しかったわよ。
たくさん知らない場所に行って、いっぱい色んなものを見て。銀座の靴屋さんにいた時には体験できないことばかりだったわ。
5年間、色んな場所に連れていってくれて、本当にありがとう。
みんなで書く部に参加しました。
お題は「なりきって書いてみよう」
私のお気に入りのスニーカーの話でした。
結婚してからずっと履いていたので、思い出がいっぱいです。
