【#HIPHOPで英語を学ぼう】Make Them Know / Drake 〜「試した」が「疲れた」に変わるまで〜

今回の英語表現

"get wind of ~" ── 〜の噂を耳にする、〜を嗅ぎつける

"They got wind of the fact I was hit"
(俺がやられたことを、あいつらは嗅ぎつけた)

「wind(風)」が情報を運んでくる、というイメージから来たイディオム。公式な発表ではなく、噂や内部情報として何かを知ることを指す。日常会話でもよく使う。

"My boss got wind of the rumor before I could explain."
(上司が、俺が説明する前に噂を嗅ぎつけた)

"How did they get wind of our plans?"
(どうして俺たちの計画がバレたんだ?)


楽曲


について

2026年5月15日、Drakeが3枚のアルバムを同時リリースするという前代未聞の奇襲を敢行した。そのうちの1枚が『ICEMAN』——「氷男」を自称するDrakeの、計算され尽くした自己神話だ。

「Make Them Know」はそのアルバムの核を担う一曲で、法廷闘争・業界への怒り・Kendrick Lamarとのビーフ余波・そして2009年の自分への自問が、休む間もなく積み上げられていく。

Drakeが「まだここにいる」と宣言するための、3分以上の長い独白。

歌詞の和訳と解説

Verse

I tried and tried and tried
試した、試した、試し続けた

'Til the R switched place with the I
RとIが入れ替わるまで

冒頭の最大のトリックがここにある。「TRIED」という単語のRとIを入れ替えると——「TIRED」になる。試し続けることが、そのまま疲弊になる。言葉遊びの中に、Drakeの消耗が刻まれている。

I'll never forget that July
あの7月のことは、絶対に忘れない

The worst that I felt in a while
しばらくで一番最悪な気分だった

2024年7月——Kendrickとのビーフがピークにさしかかったころのことを指しているとみられる。「The Heart Part 6」「Family Matters」と応酬が続き、Drakeが精神的に追い詰められた時期と重なる。

I'm glad that you think that I'm soft
お前が俺を「弱い」と思ってくれていてよかった

I'm glad that you think that I'm shy
俺を「引っ込み思案」だと思ってくれていてよかった

I need you to think all these things
全部そう思い込んでいてくれ

I got bigger than what's in my mind
俺はもう、自分が想像していた以上に大きくなった

I'll take it, an eye for an eye
受け入れよう——目には目を

I'll send a boy up to the sky
あいつを天に送ってやる

eye for an eye(目には目を)」は旧約聖書由来の報復原理。「send a boy up to the sky」は殺すことを示唆する表現だ。感情を剥き出しにしながらも、言葉の選び方は計算されている。

I still haven't lost any sleep
まだ一秒も眠れない夜はない

And I definitely didn't cry
絶対に泣いてもいない

Ayo, Gucci get back in the ride
おい、Gucci、車に戻れ

'Cause that's definitely not the guy
あいつは絶対に違う

Mistaken identity mixed with adrenaline, almost just kissed you goodbye
人違い、アドレナリン——もう少しであいつに別れのキスをするところだった

Drakeの側近・GucciはOVOクルーのメンバー。「あいつは違う」=ターゲットを見間違えた、という一瞬の判断が、誰かの命を分けた。「kissed you goodbye」は「死の寸前まで追い詰めた」という意味だ。暴力の縁をすれすれで歩く日常が、たった一行で凝縮されている。

It's rap, so it sound like a lie
ラップだから、嘘みたいに聞こえる

When I talk to you and I confide
でも俺がお前に打ち明けるとき

本音を言っても「ラッパーのの誇張したリリック」として処理される——アーティストとしての宿命的な皮肉。

I'm goin', goin' back to Cali
西海岸に帰る、帰るんだ

CaliとはCaliforniaのこと。LL Cool J の1988年クラシック「Going Back to Cali」のオマージュ。トロント出身のDrakeがロサンゼルスへの引力を語ることで、カナダとアメリカの間で揺れる自分のアイデンティティを象徴させている。Kendrickの出身もCali

I got hearts in both of my eyes
両目にハートが宿ってる

I'm sleeping with death on my mind
死を頭に浮かべながら眠る

'Cause the shots that I called in my time
俺がこれまで下してきた判断のせいで

And karma has been on my side
カルマはずっと俺の味方だった

But I also just heard that she's blind
でも、カルマは目が見えないとも聞いた

That bitch might just switch on a dime
あいつは一瞬で俺に牙を剥くかもしれない

switch on a dime」は「一瞬で、予告なく変わる」を意味するスラング。ダイム(10セント硬貨)の小ささ=ほとんどゼロの猶予で、というイメージ。カルマは公平なようで気まぐれ——という自覚が、この曲の緊張感を支えている。

'Cause she can't even see I'm a god
あいつには、俺が神だということが見えないから

The lawsuit I got is fried, 'til the R switched place with the I
俺の訴訟は終わった——また、RがIの場所に戻るまで

fried」はスラングで「終わった、壊滅した、片付いた」の意。そして冒頭の「TRIED→TIRED」の言葉遊びが再び戻ってくる。法的闘争が「試みる(tried)」から「疲弊(tired)」へと変わった、という意味を二重に含む。

They'll frame it as people retired
業界はそれを「引退」と言い換えるだろう

But we know what's a truth and a lie
でも真実と嘘の区別は、俺たちには分かってる

And they'll act like we signin' a deal
そして示談を、まるで契約のように見せてくる

When they pay me for wastin' my time
俺の時間を無駄にした代償を払わせるとき

And they'll act like I lost my appeal
俺が魅力を失ったように見せようとする

But they'll pay me for changin' they mind
でも、考えを変えたことへの代金は俺が受け取る

They got wind of the fact I was hit
俺がやられたことを、あいつらは嗅ぎつけた

And the whole world started to chime
そして世界中が鳴り響いた

Not scared of no suit or no tie
スーツもネクタイも、怖くない

'Cause shit, victory always been mine
だって、勝利はずっと俺のものだったから

If I free up, my bro gotta live with it
俺が動ける状態になれば、あいつは一生それと向き合って生きることになる

'Cause we know that that man isn't innocent
あの男が無実じゃないことは、みんな知ってる

Four hundred racks on the head
頭に40万ドルの懸賞金

How am I spendin' so frivolous?
なんでこんな無駄遣いしてるんだろう

racks」は$1,000の束を指すスラング。$400,000(約6,000万円)を「frivolous(軽率な、無駄な)」と自嘲する——その金銭感覚がDrakeのスケールを示す。

Bobby from 6 want bro
トロント(6)のBobbyが、俺の仲間に用があるらしい

And he under my arm like I'm ticklish
でもそいつは俺の腕の下にいる——脇をくすぐられるみたいに

from 6」はトロントの別称「The 6」から。仲間を腕の下にかかえて守る、というイメージが「くすぐったい」という奇妙なユーモアで描かれる。

How do they say they got classics
なぜあいつらは「クラシックがある」と言える

If it's shit that you never revisited?
一度も聴き返さない曲のことを?

And if that's the shit you revisited
もし聴き返してるとしたら

Then why am I boss of the business?
なぜ俺がこのビジネスのボスなんだ?

個人的に渾身の一節。
Drakeがカルチャーの面でhiphopから評価を受けられていないことは言うまでもない。
しかし最もストリーミングされているラッパーはDrakeである。
ストリートや評論家たちはKendrickを王と呼び、JColeをカリスマと呼ぶ。
しかしhiphopというビジネスのボスは間違いなく彼である。

Fifty millimeter president
50ミリのプレジデント

President」はRolexの「Oyster Perpetual Day-Date」の愛称で、歴代の大統領・国家元首たちが愛用してきたモデル。「50 millimeter」は大型ケースのサイズ感を示す。権力と富の象徴を一語で凝縮した表現。

This album, I'm never submittin' it
このアルバムは、絶対に提出しない

'Cause I know that they'll never consider it
どうせ評価されないと分かってるから

グラミー賞などの審査への提出を拒否する宣言。業界の評価基準そのものへの不信と反抗。

These niggas recoupin' on 2012
あいつらはまだ2012年のスタイルで食いつないでる

They gotta do it in increments
少しずつ、少しずつ、やっとのことで

in increments」=少しずつ、段階的に。2012年のサウンドで今も食いつなぐ競合ラッパーたちへの冷たい視線。

What happened to Drake from 2009
2009年のDrakeはどこに行ったんだ

When all of the moments was intimate?
すべての瞬間が、ちゃんと親密だったころの

What happened to Drake with the innocence?
あの無垢さを持っていたDrakeは?

I don't think we'll be seein' him again
もう二度と会えないと思う

2009年——「So Far Gone」でDrakeが世界に現れた年。傷つきやすく、正直で、感情をそのままさらけ出していたあのDrakeは、もういない。それを誰よりも分かっているのは、Drake自身だ。

Outro

Iceman, baby, why are you so cool?
アイスマン、なんでそんなに冷たいの?

I don't know, but I ain't no fool
分からない——でも俺は馬鹿じゃない

Freeze the world, freeze the world
世界を凍らせろ

アルバムタイトル「ICEMAN」が最後に自己申告される。冷静、計算高い、感情を見せない——それが「アイスマン」としてのDrakeだ。「世界を凍らせる」という宣言で幕を閉じることで、曲全体の怒りと自省が、最終的には支配の意志へと昇華される。


クレジット

Songwriter(s): Drake
Producer(s): 40, Gordo(ICEMAN アルバム主要プロデューサー)
Release Date: 2026年5月15日
Album: ICEMAN


アーティストについて

Drake(本名:Aubrey Drake Graham)は1986年、カナダ・トロント生まれ。俳優として出発し、2006年にラッパーとして活動を開始。
2009年のミックステープ「So Far Gone」で一夜にして世界的な注目を集めた。

感情的な自己開示とハードなラップを融合させた「エモラップ(現行のエモラップの走り的な。ニュアンス的にはメロディラップ)」のパイオニアとして、ヒップホップの文法を塗り替えた存在。

2024年のKendrick Lamarとのビーフ、度重なる法廷闘争を経て、2026年5月に『ICEMAN』『Habibti』『Maid of Honour』の3枚を同日リリース。業界への反逆と自己証明を、かつてない規模で実行した。


参考・引用元

Make Them Know – LETRAS.COM
Drake's Best ICEMAN Lyrics – Variety
Drake "Make Them Know" Lyrics Meaning – Neon Music
Make Them Know Deep Lyric Meaning – Tailem
Drake Releases Three New Albums – Consequence
Iceman (Drake album) – Wikipedia
Inside Drake's Three-Album Iceman Takeover – Rolling Stone

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