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ねむりの森。

どのくらい歩いただろう
馬から降りて
あたりはすっかり暗くなった

兄ちゃんお腹すいた

もう少し我慢できるか?

もういややわ

ん。

ショウトは妹の手をひいて
川を渡った

道迷ったかもしれん

え?

川なんか無かったんや

どうするの?

だいじょうぶや
今日はここで焚火しよ

え、なんで?
いやや、かえりたい

手足を左右にゆすり
鼻にかかった
甘え声

そんなんゆうとったら
兄ちゃん消えんで?

え!あかん、いややわ

ほな、ガマンして
手伝い火おこすで

パチパチ
火がゆるく
くねる

ね、兄ちゃん?
兄ちゃん?お兄ちゃん!!

サユミがどんなにゆすっても
兄は目を開けない
だらっと手が落ち
首が左右に踊るだけ

顔より大きく口を開き
泣き叫ぶ

イヤヤ、コワイ、コワイ!
なんやの?兄ちゃん!!

顔が火照り
首筋は汗でびっしょり

涙なのか
鼻水なのか

ぐちゃぐちゃになりながら
狂ったように叫ぶが
状況は変わらない

すぐそばを流れてた川も
流れが止まったように
静かだ

サユミは暗闇の中
うっすらと
どこかの月明りに
反射した水面に頭を近づけ
顔を洗い始める

ええええええええん
えんえんん

洗う端から涙が汚す

おかしいわ
なんか温い
この川へんやわ

に、兄ちゃん・・
えええんえんえん

声を上げながら
どうにかしようと
右往左往しながら
川へと入る

川の水は温い
それなのに
肩先が凍えるように
ヒンヤリし始める

あぁなんか眠い
兄ちゃんとこ戻らな

ゆっくりと
まぶたが閉じてゆく





サユミ、サユミ!
しっかりしいや?
サユミ!

焚火したで?
あったかいか?
寒ないやろ?

サユミ!
なんで川に入ったん?
いったい何があったんや?

サユミ、兄ちゃんが悪かったで
もっと早く帰ればよかったんや

サユミを抱え
苔蒸す大地へ横たえた

グッショリと濡れた
着衣は身体に張り付いて
さらに体温を下げそうだ

慌てて衣服を脱がし
力いっぱい絞る
火のそばに並べて干した

妹のために
自分の衣服を脱いで
着せた

ふと気づくと
また妹の服がグッショリ
汗だくなのか?

兄は不可思議に思いながらも
また脱がせ絞る
先ほど干した服もまだ乾かない

背負っていた荷物の中
馬から降ろした
小さな毛布があったはず

タオルや毛布を妹に巻き付け
着せた

寒ないか?

妹は人形のように
動かない

兄ちゃん悪かったで
起きや


堪えてた
大粒の涙がぽたぽた
垂れる



おーーーーい
着いたぞ起きろ

馬たちの嘶き

ゴトゴトゴト
台車から荷物が落とすように
降ろされてゆく

ふたりはぼんやり
目を覚ます
あたりの様子を飲み込めず
互いを見つめ
わんわん泣いた

よかった!

よかったわ!

夢か

夢や

え?夢見たん?

そうやウチもみたんよ


なんやお前ら
あんなにゆうたのに
森抜ける前に寝てもたんかいな

あの森はな
ねむりの森ゆうて

大切なひとが
いなくなったら
どんな思いするか
思い知らされる場所なんや

鼻も垂れてるし
ふたりとも
疲れた顔してるわ
少し寝たらいいで

あぁなんや
ひとに説明させといて
ふたりとも
もう寝てんのんかいな

風邪ひくで
しゃあないなぁ

馬蔵から降ろされた
大きな毛布に包まれ
ふたりはやっと安心して
ねむりについた



FIN



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伊藤ぱこ 読了ありがとうございます 世界の片隅にいるキミに届くよう ボクの想いが次から次へと伝播していくこと願う 昨年のサポートは書籍と寄付に使用しています 心から感謝いたします たくさんのサポートありがとうございました