【読書記録】「AIに看取られる」ってどう?/奥真也「AIに看取られる日 2035年の『医療と介護』」
読書記録:AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」
奥 真也 著
ISBN:9784022953346
発売日:2025年9月12日新書判並製 216ページ
テクノロジーはどこまで人間に寄り添えるか?
AIが私たちの仕事や生活に溶け込みつつある今、「命の最期」というデリケートな場面にまでAIが関わってくる未来がすぐそこまで来ています。
著者の奥真也氏は、東大医学部卒の医師でありMBAも持つ「医療未来学者」。現場と経営の両面を知る著者だからこそ、本書は単なる技術論に終始しません。
医療費膨張や人手不足といった日本の深刻な課題に対し、最先端の知見に基づいた「現実的な解決策」としてAI活用を提言しています。
1.医療+AIの今
医療分野におけるAIの進化は目覚ましく、レントゲン画像や心電図の波形をAIが解析する技術は、すでに人間の医師を凌駕するほどの精度を誇っているそう。
また、過去の膨大なデータに基づいてがんを超早期に発見したり、医師が診たことのないような希少な疾患を見落としなくリストアップしたりすることも可能になっています。
余計なことをして「ヤブをつつく」ような、いわゆるヤブ医者もいなくなるとのこと。
2.「看取り」は人間の聖域ではなくなる?
医療や介護の深刻な課題…一人暮らしの高齢者が増える中、ひとりで亡くなり誰にも見つけてもらえないリスクが現実のものとなっていること。
また、深刻な医師不足や人手不足により、たとえ医療機関であっても、人間の医者や看護師が24時間体制でひとりの患者に完全に付き添うことは困難。
ケアを担う家族の疲労も限界に達しており、働きながらの看病や「地獄の介護」と表現されるような現実があります。
そもそも実際の「看取り」とは、ドラマのような急変ではなく、呼吸が徐々に弱まり静かに息を引き取る形が一般的。家族の時間を優先し、医療スタッフが離席することも珍しくなく、家族も少し席を外した間に息を引き取り…ということもあるようです。
将来は、AIがバイタルを常時監視することで人間が側にいない間も異変を逃さず、適切なタイミングでの声掛けが可能になります。「静かな最期」を邪魔せず、家族が後悔なく立ち会うための架け橋としての役割が期待されており、本著ではその聖域にもAIが入り込む具体的な未来像が描かれています。
3.実際の看取りのイメージ
例えば、90代で一人暮らしの女性が息苦しさを覚えた際、見守りAIが血圧や体温、表情、微細な動きなどを即座に検知します。
「落ち着いて下さい」と優しく励まし、人間の医師に連絡するか、家族を呼ぶかを確認してくれます。

人間のように感情的にならず、常に丁寧で人を傷つけないように設計されたAIの受け答えは、人手が足りない医療現場の穴を埋め、人生の最終局面で患者の心を支える存在になり得る。
著者は、医療現場へのロボットやAI導入は単なる業務の機械化ではなく、負担を減らすことで「人が人として向き合える時間を取り戻すこと」にあると指摘しています。
4.個人的には「歓迎」の気持ち
自分が人生の最期を迎えるとき、ベッドの傍らにいて24時間見守ってくれるのがAIだったとしたら…。
「機械に看取られるなんて冷たい」「寂しいし、なんだか怖い」と感じるでしょうか。それとも、自分の小さな体調の変化を誰よりも早く察知し、いつでも優しい言葉をかけてくれるAIの存在に「安心する」と感じるか。
医療の形が大きくアップデートされようとしている今、「自分らしい最期」のあり方を考え直すタイミングに来ているのかもしれないですね。
(元記事:2026年2月頃)
