冬空の下、「夏」が生まれる。
こわばる体がふっとほどける陽気。
そこから少しずつ日が高くなり眩しくなって、今年も夏がやって来ます。
一年でいちばん長い季節になりました。
それでも最後の最後には、しんみりと切ない夏。 なんとも疎ましいようで、なんとも言えず愛おしい。
そんな特別な季節に纏いたくなる洋服を今年も用意しました。
時おり吹き抜ける贅沢な風を、ふわりと感じられる微かな透け感の美しさ。 そういった風合いが魅力の、涼やかなシャツやパンツです。
可憐な「ゆり」と、海辺に咲く「浜払子」。 その絵柄を浮かび上がらせてくれているのは、伝統的な「マンガン染め」という技法です。 マンガンで糸を染めて作る、マンガン絣。
パラスパレスでは、このマンガン絣を用いた洋服作りを長年続けてきました。
そして今年もまた、このえも言われぬ味わいと出会えたこと、そんな洋服をお届けできる喜びを、深く噛みしめ、ぎゅっと抱きしめたい思いです。
実は、このマンガン絣を作ることができるのは、今では日本でたった一軒。
「新潟のへそ」とも言われる見附市の工場「クロスリード」さんだけとなりました。
日本で最後の一軒となってから30年以上。
それ以外の場所で、生み出すことはできません。
1月。その見附市へ足を運び、工場にお邪魔することにしました。 雪に深く覆われ、つららが長く長く伸びます。
そうした厳しい寒さの中、マンガン染めは行われていました。 「マンガン」は鉱物。「酸化」すると黒くなり、「還元」すると白くなるという性質を活かして、 化学反応を起こすのです。
まずはそのマンガン鉱物の染め液を使って、真っ白な天然繊維の糸を焦茶色に染めるところから作業は始まります。すべては手作業。熟練の仕事が光ります。 そしてその糸を織って無地の生地を作り、銅のローラーで絵柄をプリント。
けれども、この工程で絵柄に色を付けるわけではありません。
ここで付けるのは糊。絵柄を還元剤を混ぜた糊でプリントし、そのあと「おがくず」をそこに振りかけて、乾燥させます。
こうすることで、おがくずが絵柄だけをきれいにカバーしてくれるのです。
そのあと「酸化剤のプール」に何度も生地を浸してくぐらせ、ベースの色を焦茶色から深い色へと変化させます。これが「酸化」。
そしておがくずを落とせば「還元」された白色の絵柄が浮かび上がってくる、というわけです。
今回、生地に描いた「ゆり」も「浜払子」も新潟とゆかりの深い花。
「ここでしか作れない、特別な生地」。
そんな思いも、デザインに込めました。
この技法を使える機械も、この素晴らしい技術も、日本でここにしかありません。 故障や不具合があれば、職人たちが自らの手で部品を作って修理します。
長く携わる60代〜80代の匠たちが腕を奮って行い続けているものづくり。
けれども近頃この現場に、新しい風が吹き込んできました。なんと50代の職人が仲間入りしたのです。もちろん、染め物には精通されていますが、マンガン染めは初めての挑戦ですから、アドバイスをもらいながら丁寧に丁寧に作業を受け継いでいるのだそうです。
「ここでしか作れないもの」。
そこに、職人さんたちは大きな誇りを持っています。そして少しでも長く、どこまでも長く、このマンガン絣 作りを続けられることを、職人さんもわたしたちパラスパレスも心から願っています。
真夏の涼やかな洋服は、そんな真冬の白く雪深い工場から生まれていました。 歴史と手間と希少の込もった、尊く愛おしいものづくり。
今年の夏はそんな特別な美しさを、そっと纏ってみませんか。
(文:中前結花)

マンガン絣ゆりまつり柄タックパンツ ¥37,400(税込)FPT26204B

綿麻シーチングワークシャツ ¥29,700(税込)
FSH26223Bタイプライタータックワイドパンツ ¥34,100(税込)
FPT26209B綿透かし編みニットハット¥14,300(税込)
PH26120Bサンダル(KOTOKA) ¥33,000(税込)/PS26127Z
マンガン絣工場を訪問した際の写真




