「川のめぐり」〜アナログ巌流島〜[毎週ショートショートnote]
『アナログ巌流島』とラベルされたそのカセットテープを再生すると、老いた祖父の一人語りが流れた。
武蔵と小次郎の決闘の話でなく、落語の『巌流島』。
隅田川の渡し舟で若侍が行き違いから乗合わせた屑屋を手討にすると激昂。
同乗の老武士が見かねなだめるも若侍はおさまらず却って老武士と果合いをすると断じる。
岸に着いたら真剣勝負だぞと舟を付ける桟橋に若侍が飛び移り……
語りはここで再び舟上でのやり取りが始まり再び桟橋の見えた所で、また舟上のやり取り……
聴くうちに、思い出された。
寄席好きで素人落語の真似をした。
晩年は物忘れが進んだが、『巌流島』は覚えており寝床で話し始めたのを録音した。
若い頃の私は喧嘩早く迷惑をかけてたものだが、その度祖父は私に『巌流島』で説教をした。
若侍の馬鹿らしい姿がお前だぞと、言うつもりだったのか。
アナログ録音だから『アナログ巌流島』ではない。
アナログレコードの音飛びの如く繰り返し終わらなかったからだ。
(2023年(令和05)06月13日(火)00:05)/408文字
※#毎週ショートショートnote 「アナログ巌流島」「デジタル混入島」
