Perplexityクエリ設計|実験でわかった4つの法則
ChatGPTやClaudeは使えているのに、Perplexityだけ「なんか違う」と感じたことはないだろうか。その違和感の正体を確かめるために、クエリ形式を変えながら実験してみた。
結果からいうと、Perplexityは他のAIとは検索の入口が違う。この記事では実験結果をそのまま共有する。「なんとなく」から「意図して設計する」への切り替えに使ってほしい。
まとめ(先に読む用)
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\begin{array}{|l|l|}
\hline
\text{発見} & \text{結論} \cr
\hline
\text{指示文の有無} & \text{最も効く。ないと説明モードに入る} \cr
\hline
\text{OR演算子} & \text{キーワード列挙と差なし} \cr
\hline
\text{言語} & \text{英語≒日本語 > 中国語 > 低リソース言語} \cr
\hline
\text{カスタムプロンプト} & \text{改善も劣化も起きる。一方向ではない} \cr
\hline
\end{array}
$$
注意点
この記事の実験はN=1。同一条件での繰り返し検証はしていない。「可能性がある」「要追加検証」の表記がある箇所は結論として断定していない。
Perplexityの検索はなぜ「別物」なのか
まず前提として、Perplexityは従来の学術データベース(PubMedなど)とは仕組みが異なる。
多くの人がやりがちなのはGoogleと同じ感覚でキーワードだけ投げるか、ChatGPTのように丁寧な自然言語で話しかけるかのどちらかだ。どちらもPerplexityではベストではない場面がある。
Perplexityはセマンティック検索ベースのハイブリッド検索で動いており、キーワードの一致を前提としたBoolean検索とは処理の入口から違う。この違いを意識せずにPubMed流のクエリを投げると期待した結果にならない。それが「なんか違う」の正体だ。(詳しくは付録3参照)
既存のクエリ作成知見と、Perplexityへの適用可否
クエリ設計の知見は多くがBoolean検索時代のものだ。
OR演算子:複数キーワードのいずれかにマッチする結果を広く取る
AND演算子:複数条件を同時に満たす結果に絞る
自然言語優位説:LLMには丁寧な自然言語が効くとされる
ただし「自然言語が優位」という知見にも条件がある。タスクの複雑度が高い場合、自然言語よりキーワード検索の方が成功率が高くなるという実験結果もある(Springer, 2005)。「丁寧に書けば良い」は万能ではない。
これらがPerplexityに通じるか、実験で確かめた。
実験の概要
Perplexityは論文検索専用ツールではなく、ビジネス調査・競合分析・市場動向把握など幅広い用途に使える。今回は一次資料との照合がしやすいため、実験テーマとして論文検索を選んだ。
固定条件
テーマ:LLMのハルシネーション関連論文の検索(全パターン共通)
変えた条件
クエリ形式:指示なし・キーワードリスト・自然言語・OR演算子
指示文の有無
指示言語:日本語・英語・中国語・スワヒリ語
カスタムプロンプトの有無
測定したこと
論文の有無・量、確認レベル(◎一次ソース確認済み・○部分確認・△候補のみ)、回答の具体性、挙動の特異性
実験結果
$$
\begin{array}{|l|l|l|l|}
\hline
\text{条件} & \text{論文数} & \text{確認レベル} & \text{特記} \cr
\hline
\text{指示なし・キーワードのみ} & \text{少} & \text{△} & \text{概念説明モードに入る} \cr
\hline
\text{指示あり・キーワードリスト} & \text{多} & \text{◎○混在} & \text{最も安定} \cr
\hline
\text{指示あり・OR演算子} & \text{多} & \text{◎○混在} & \text{リストと差なし} \cr
\hline
\text{指示あり・自然言語(丁寧)} & \text{少} & \text{△} & \text{絞り込みすぎの可能性あり} \cr
\hline
\text{英語指示} & \text{多} & \text{◎多} & \text{日本語と同等} \cr
\hline
\text{中国語指示} & \text{中} & \text{○△混在} & \text{英語・日本語より低下} \cr
\hline
\text{スワヒリ語指示} & \text{少} & \text{△} & \text{最も低下} \cr
\hline
\text{カスタムプロンプトあり} & \text{ケースによる} & \text{混在} & \text{改善・劣化どちらも発生} \cr
\hline
\end{array}
$$
実験から見えたこと
発見1:指示文の有無が最も効く
キーワードだけ投げると、Perplexityは「論文を探す」モードではなく「概念を説明するモード」に入る。OR演算子を使っても同じだった。
使えるクエリの最低条件は「何を・どんな形式で出してほしいか」を書くこと。
NG例:`LLM hallucination, factual error`(指示なし)
OK例:`LLMのハルシネーションに関する2023年以降の実証研究論文を、タイトル・著者・一言要約の形で出してください`
発見2:キーワードリストとOR演算子の差はない
`LLM hallucination, factual error` と `LLM hallucination OR factual error` の結果はほぼ同等だった。
PerplexityはRAGベースのハイブリッド検索で動いているため、
OR演算子を特別扱いしていない。Boolean検索の知識をそのまま持ち込んでも機能しない。研究レベルでもセマンティックモデルがBoolean論理を処理するには専用の対応が必要とされており(SetBERT, 2024)、デフォルトでは効かないことが前提だ。
発見3:言語で結果が変わる
英語≒日本語 > 中国語 > スワヒリ語の順で論文数が減少した。
これはLLMの既知の弱点と一致する。学習コーパスの言語分布とLLM性能には強い相関があり、低リソース言語では性能が落ちることが複数の研究で確認されている。MMLU-ProXの実験では、英語で70%超の正答率を出すモデルがスワヒリ語では40%程度まで低下したと報告されている(Xuan et al., 2025)。
日本語で調査するなら英語クエリを併用する価値がある。
発見4:カスタムプロンプトの影響は一方向ではない
「最適かどうかを疑う」「より効率的な方法を提案する」という内容のカスタムプロンプトを入れた状態で実験したところ、パターンによって改善・劣化どちらも起きた。中国語指示では逆に改善した。
カスタムプロンプトは「入れれば良くなる」ものではない。内容と言語の組み合わせによって結果が変わる。なお、Perplexityのカスタム指示の仕様は公式非公開で、学術的な検証論文も存在しない。

こんな記事も書いてます。良ければお読みください。
FAQ
Q:自然言語で丁寧に書くと逆効果なのか?
今回の実験では、丁寧な自然言語指示が最も論文数の少ない結果になった。ただし「絞り込みすぎ」による影響を排除できていない。N=1のため断定はできない。ただし先行研究でも、タスクが複雑になるほど自然言語よりキーワードの方が成功率が高くなるという実験結果がある(Springer, 2005)。また別の研究では、ユーザーが自然に書いたクエリには曖昧さ・不完全さ・語彙のズレが含まれやすく、検索システムの性能を著しく低下させると指摘されている(Query Optimization Survey, 2024)。「丁寧に書けばPerplexityに効く」は少なくとも過信しない方がいい。
Q:結果は毎回同じか?
同じプロンプトを2回投げたところ、1回目は検索ループで停止・2回目は正常に回答した。重要な調査は複数回投げて比較することを勧める。
付録:DR(Deep Research)との比較
同じテーマをGemini DR・GPT DR・Perplexity通常検索・Claude(web検索)に投げてLLMの構造的弱点を調査した別実験の結果も参考として載せる。
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\begin{array}{|l|l|l|l|}
\hline
\text{ツール} & \text{弱点数} & \text{特徴} & \text{論文質} \cr
\hline
\text{Claude(web検索)} & \text{18項目} & \text{技術的弱点中心} & \text{◎△混在} \cr
\hline
\text{Gemini DR} & \text{9項目} & \text{アーキテクチャ的限界に特化・深い} & \text{◎8本・○1本} \cr
\hline
\text{GPT DR} & \text{11項目} & \text{社会・倫理系も含む広い} & \text{URL付き(未検証)} \cr
\hline
\text{Perplexity通常} & \text{9項目} & \text{一次ソースが弱い・日本語記事中心} & \text{△多い} \cr
\hline
\end{array}
$$
DRは通常検索とは別次元で自律的に検索を繰り返す。論文の質・量ともに差が大きい。Perplexity通常検索を使うなら、DRモードの利用も検討する価値がある。
付録2:3原則に沿ったPerplexityクエリをClaude・GPT・Geminiで作る
この記事で紹介した3原則を自動で反映したクエリを生成するプロンプトを置いておく。Claude・GPT・Geminiいずれにも使える。ただし「情報が不足している場合は質問して」という指示が最も素直に機能するのはClaudeだ。GPTやGeminiに使う場合は「必ず質問してからクエリを作ること」と強調する方が確実。
調べたいテーマ:{{ここにテーマを入力}}
モード:{{広い/深い どちらかを選んで入力}}
上記のテーマについて、Perplexityで論文・信頼性の高い情報を検索するためのクエリを作ってください。
情報が不足している場合は、クエリを作る前に質問してください。
以下の条件を守ってください。
・指示文を冒頭に入れる(何を・どんな形式で出してほしいかを明示する)
・OR演算子は使わない(キーワードはカンマ区切りで列挙する)
・日本語クエリと英語クエリの両方を出す
・各クエリはそのままPerplexityに貼れる形で出す
・条件は必要最小限にする(詳細すぎると検索範囲が狭まり逆効果になる場合がある)
【広いモードの場合】
・類義語・関連語・言い換えを含む複数のキーワードを列挙する
・テーマの周辺領域も拾えるよう、検索対象を意図的に広めに設定する
・クエリは3〜5本出す
【深いモードの場合】
・テーマを絞り込む条件(年代・手法・対象分野など)を明示する
・類義語の展開より特定概念への集中を優先する
・クエリは1〜2本に絞る
テーマを変えるだけで繰り返し使える。論文検索以外(競合調査・事例収集など)にも応用可能。
このプロンプトをPerplexityのスペース機能のカスタム指示に登録しておくと、毎回入力する手間が省ける。ただしカスタム指示が検索結果に与える影響は一方向ではない(発見4参照)。効果が出ない場合はスペースなしで試すのも手。
※Perplexityのクエリ上限については公式仕様が非公開のため記載なし。上限に達した場合は複数回に分けて投げることを推奨。
付録3:検索手法と各AIの仕組み
検索手法の種類
$$
\begin{array}{|l|l|l|}
\hline
\text{手法} & \text{仕組み} & \text{代表例} \cr
\hline
\text{Boolean検索} & \text{AND・OR・NOTで条件を組み合わせる。完全一致が前提} & \text{PubMed・学術DB} \cr
\hline
\text{全文検索} & \text{文書中の言葉を直接照合。前方一致・曖昧検索も含む} & \text{Google・一般検索エンジン} \cr
\hline
\text{セマンティック検索} & \text{クエリと文書をベクトル化し意味的な近さでヒットを判断。同義語が自動処理される} & \text{Perplexity・Elicit} \cr
\hline
\text{ハイブリッド検索} & \text{全文検索とベクトル検索を組み合わせる。精度と再現率を両立} & \text{Perplexity内部・現代の主流} \cr
\hline
\end{array}
$$
Web空間の構造
Webは大きく2つの層に分かれている。Surface Web(検索エンジンが届く表層)はGoogleやBingがインデックスしている領域で、通常の検索結果はここから返ってくる。Deep Web(検索エンジンが届かない深層)はログイン必須・専門DB・動的URLなど、クローラーが網羅できない領域だ。Semantic Scholarのような論文専用DBはDeep Web側に位置する。
各AIの検索方法比較
汎用AI検索
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\begin{array}{|l|l|l|l|}
\hline
\text{AI} & \text{検索方式} & \text{検索先} & \text{届く領域} \cr
\hline
\text{ChatGPT} & \text{全文検索} & \text{Bing連携} & \text{Surface Webのみ} \cr
\hline
\text{Gemini} & \text{全文検索} & \text{Google連携} & \text{Surface Webのみ} \cr
\hline
\text{Claude} & \text{全文検索} & \text{一般Web検索} & \text{Surface Webのみ} \cr
\hline
\text{Grok} & \text{全文検索} & \text{X投稿+Web検索} & \text{Surface Web+Xの一部} \cr
\hline
\text{Perplexity(Webモード)} & \text{ハイブリッド(BM25+セマンティック)} & \text{Surface Web全般} & \text{Surface Webのみ} \cr
\hline
\text{Perplexity(Academicモード)} & \text{ハイブリッド(BM25+セマンティック)} & \text{Semantic Scholar} & \text{Deep Web側の論文DB} \cr
\hline
\end{array}
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論文専用AI検索
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\begin{array}{|l|l|l|l|}
\hline
\text{ツール} & \text{検索方式} & \text{データソース} & \text{特徴} \cr
\hline
\text{Elicit} & \text{セマンティック検索} & \text{Semantic Scholar・PubMed・OpenAlex(1.38億本)} & \text{絞り込み・比較特化} \cr
\hline
\text{Consensus} & \text{ハイブリッド(BM25+セマンティック)} & \text{独自DB(2.2億本)} & \text{Yes/No問答・合成特化} \cr
\hline
\text{SciSpace} & \text{セマンティック検索(推定)} & \text{Semantic Scholar中心(2.8億本)} & \text{PDF読解・執筆支援} \cr
\hline
\text{ResearchRabbit} & \text{NIH+Semantic Scholarアルゴリズム} & \text{Semantic Scholar・OpenAlex} & \text{論文マップ・可視化特化} \cr
\hline
\text{Scite} & \text{引用分析} & \text{独自DB} & \text{引用文脈(支持・反論)の分析} \cr
\hline
\text{PubMed} & \text{Boolean+MeSH} & \text{MEDLINE} & \text{医学・生命科学特化} \cr
\hline
\text{Google Scholar} & \text{全文検索+引用分析} & \text{Surface Web全般} & \text{最大規模・汎用} \cr
\hline
\end{array}
$$
ChatGPT・Gemini・ClaudeはいずれもSurface WebをLLMが後処理する設計で、検索は副機能として後付けされている。PerplexityはそもそもRAG(検索拡張生成)パイプラインが主機能で、クエリ入力後にLLMがインテントを解析し、BM25(語彙ベース)とベクトル埋め込みを組み合わせたハイブリッド検索で候補を取得してから回答を生成する(ZipTie.dev, 2026・Vespa.ai, 2025)。「検索が主・LLMが後付け」か「LLMが主・検索が後付け」かという設計の違いが、クエリ設計の影響度の差につながっている。
論文検索に特化したツールはさらに設計が異なる。ElicitはSemantic Scholar・PubMed・OpenAlexの1.38億本を対象にセマンティック検索で動き、キーワードが一致しなくても意味的に関連する論文を拾える。ConsensusはBM25とセマンティック検索を組み合わせたハイブリッド設計で、上位20本に対してさらに大型AIモデルで再スコアリングする2段階構造だ。SciSpaceは読解・執筆支援が主機能でセマンティック検索ベース(推定)、ResearchRabbitは論文間のつながりを可視化することに特化している。これらは検索先がDeep Web側の専門DBに直接アクセスしており、Surface Web経由の汎用AI検索とは根本的に異なる。
出典・参考
・実験データはすべて筆者による観測(一次資料あり)
・Boolean検索の定義:各種学術データベース公式ドキュメントより(一次資料あり)
・セマンティック検索の定義:一般的な情報検索の文脈に基づく(一次資料なし・推測含む)
・カスタムプロンプトの仕様:Perplexity公式非公開(一次資料なし)
・DR各ツールの弱点数:筆者観測による(一次資料あり)
【参考文献】
・PerplexityのRAGパイプライン構造(技術解説)
ZipTie.dev「How Perplexity AI Answers Work」(2026)
https://ziptie.dev/blog/how-perplexity-ai-answers-work/
・PerplexityとVespa.aiの技術連携(公式パートナーブログ)
Vespa.ai「How Perplexity uses Vespa.ai」(2025)
https://vespa.ai/perplexity/
・セマンティック検索とBooleanの違い
Aaron Tay「Boolean vs Keyword/Lexical search vs Semantic」Medium(2024)
https://aarontay.medium.com/boolean-vs-keyword-lexical-search-vs-semantic-keeping-things-straight-95eb503b48f5
・BooleanをセマンティックモデルでサポートするにはFTが必要という実証
Quan Mai et al.「SetBERT: Enhancing Retrieval Performance for Boolean Logic and Set Operation Queries」arXiv(2024)
https://arxiv.org/pdf/2406.17282
・自然言語クエリとキーワードクエリの比較(タスク複雑度で逆転)
「Natural Language Query vs. Keyword Search: Effects of Task Complexity」Springer
https://link.springer.com/chapter/10.1007/11555261_12
・自然言語クエリの限界・クエリ最適化の必要性
「A Survey of Query Optimization in Large Language Models」arXiv(2024)
https://arxiv.org/html/2412.17558v2
・低リソース言語でのLLM性能低下(英語70%→スワヒリ語40%)
Xuan et al.「MMLU-ProX: A Multilingual Benchmark for Advanced LLM Evaluation」arXiv(2025)
https://arxiv.org/abs/2503.10497
・LLM性能と学習コーパスの言語分布の相関
「Language Ranker: A Metric for Quantifying LLM Performance Across High and Low-Resource Languages」arXiv(2024)
https://arxiv.org/abs/2404.11553
