強いチームは「速い」のではなく、「回りやすい」
「強いチーム」と聞くと、どんなイメージを持つだろうか。技術的に卓越している、意思決定が速い、アウトプットが多い、といったイメージを持つ人は多いかもしれない。しかし、現場を見ていて私が思うのは、強さの正体は速度そのものではない、ということだ。
強いチームは、「回転しやすい構造」を持っている。次に取り組むべき仮説として何が適切かを互いの会話の中から見出し、早速のアクションを講じて、次のスプリントで動き出している。仮説立てから動き出しまでのリードタイムが短い。そうすることがごく自然になっているチームとは、「作る」「試す」「正す」が滑らかに回る構造を備えていると言える。

「回らないチーム」には何が起きているのか。多くの場合、能力や熱量の問題ではない。構造の問題だ。
作るまでが重い
作り始める前の合意もしくはチームの外側への承認が重く存在する(説明、合意形成のための資料が重たく求められる)。「試す前提のもの」を作るだけで一仕事になる。小さく作るはずが、なぜか最初から失敗できない構えになっている。一向に試せない
作ったものを早速ユーザーや利用現場で試す…のではなく、その前にステークホルダーの「評価」や「認識」の突破が重たく必要になる。現実に触れないまま、会議の中、想像の中での正しさが議論される。正してはいけない
一度決めた判断が「約束」や「前提」になり、学びが得られても方向転換に動けない。方向性の間違いが明らかになっても、正してはいけない理由を探し始める。
このようなチームは、止まっているわけではない。むしろ忙しい。しかし回ってはいない。作業は進むが、学習は進まない。
一方、回りやすいチームは回りやすくなるための手立てを取っている。それは、「摩擦」を下げることだ。例えば次のような工夫やスタンスがあげられる。
作る:小さく始められる
「完成」を前提にしない(仮置き・たたき台であることを明文化)
最初のアウトプットの粒度を1週間〜1ヶ月などと決めておく
「事前承認」から「事後共有」に切り替える
作る目的を「検証用」と明言する(本番適用ではない)
使う道具・型を決めておく(迷わないようにする)
試す:すぐ試せる
試す相手をあらかじめ決めておく(毎回イチから探さない)
検証方法をむやみに複雑にしない(まずは最初の反応を早く得る)
検証の場を日常に組み込む(定例・レビューに紐づける)
試すこと自体を成果(や目標)として扱う
正す:ためらわず変えられる
判断を「仮決め」と呼ぶ(確定にしようとすると重たくなる)
変更理由を「失敗」ではなく「学び」と表現する
日常的に正すタイミングを決めておく(重たい儀式に仕立てない)
過去判断を責めないルールを持つ
正した結果を次の仮説に即つなげる(アクションアイテムを作る)
こうした動きを取れるようにするために、アジャイルの必要性が言われ、とにかく速く回すことが期待されるところがある。しかし、アジャイルの本質とは動きが速いことではなく、回転を阻む摩擦をなくすことにあると私は思う。
動きの速さをどうにかして上げようとする前に、まず問うべきはここだ。
なぜ次の一手に進みにくいのか
どこに私たちの動きは引っかかっているのか
回らない理由を人やその能力に求める前に、チームに埋め込まれている構造を疑う。「作る・試す・正す」が回りやすくなったとき、チームは結果として速く、そして強くなる。
