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clever_panda260
音のはなし
私はカラーセラピストの仕事をしつつ
犬猫の服「フルオブビガー」の広報をしている
今日のオフィスは
12月前半のSALEへ向けてみんな大忙し
このオフィスには たくさんの音が存在する
PCを打つ音
ミシン針の規則正しい音
機械の低い唸り音
撮影ブースから響くシャッター音
そして わたしは耳が敏感だ
幼い頃にしぬほど叩き込まれた
音の訓練のおかげで
今でも絶対音感持ちである
以前 オフィスで
どこからともなく小さな機械音が鳴った
その一音を無意識に拾ってしまう
……シ
Hの音だ
絶対音感の人ならわかると思う
音を意識していなくても
勝手に音階として脳が拾ってしまうあの感覚だ
そのとき 一人のスタッフがつぶやいた
「なんか音してません……?」
そのつぶやきに思わずわたしは返してしまった
「シの音ですね」
──その瞬間
スタッフの顔色が変わった
「……死の音!?」
あれは本気の声だった
「いやいや そっちの “死” じゃなくて
Hのシですよ」と慌てて言っても
耳に届く“シノオト”が
完全に death サウンドに聞こえてしまっている
______とき既にお寿司だ。
何度説明しても
「まだ死にたくない!」
必死に訴える姿がかわいくて
わたしは笑いをこらえるのに必死だった
そんな騒動をふと思い出した今日
オフィスの片隅で
ふたたび淡い金属音が鳴った
……シ
PCに向かいながら思う
この “シの音” に気づいているのは
はたして自分だけなのだろうかと
忙しさと
ものづくりの気配と
ひそやかな “シ” の響き
オフィスでは忙しさが加速しているのに
わたしだけ “シ” に全てを持っていかれている
この集中力 どこへ向かうのだろう
#なんのはなしですか
