かが・のと百物語(16)そしてサンマイタロウがやってきた/峰守ひろかず
まずはこちらの引用を御覧ください。
「三昧(さんまい/ざんまい)」という語が、本来の意味(※引用者注・梵語の音訳で専考寂想の意)でなく、この墓場の意味で使われている例は日本全国あちこちにある。数例を示してみると、三重県飯南郡森村では共有の埋葬地をさし、近畿から北陸へかけての広い範囲にわたっては墓場を「三昧」といっている。石川県鹿島郡では、屍を千体焼くと「三昧太郎」が出てくるといって恐れている。これは火葬場の怪で大入道ということだ。しかし水を渡れないので墓地の周りにかならず溝を作るという。
これを書いた池田弥三郎(1914~1982)は高名な国文学者ですが、妖怪好きにとっては、民俗学の泰斗・折口信夫に師事して「日本の幽霊」や「空想動物園」ほかを著したことで知られている人物です。
今回はここに紹介されている火葬場の妖怪「三昧太郎(サンマイタロウ)」の話です。
「三昧(さんまい/ざんまい)」は、かつては火葬場の意味だったんですが、今では皆さんご存じの通り「贅沢三昧」的な意味でよく使われる言葉です。回転寿司チェーンの名称などでも知られており、そうなると「三昧太郎」は某二大大手寿司関連会社のコラボキャラクターみたいにも見えてきますね。
そもそも「○太郎」というネーミングは日本では昔も今もお馴染みのもので、桃太郎、金太郎、浦島太郎、鬼太郎、ウルトラマンタロウ、蒲焼さん太郎等々、多くの太郎が知られています。
これを連載しているメンバーシップ企画の運営者であるparubooksさんともご縁の深いアニメ制作会社であるところのピーエーワークスさんの最新作にも「モコ太郎」という人(たぶん)が出ておられました。「日々は過ぎれど飯うまし」、いいアニメでしたね(再度噛み締めるように)。夏コミで出たお疲れ様本の通販はあるんでしょうか。
閑話休題。
この三昧太郎、先の引用文中に「石川県鹿島郡では」とあるように、石川県の妖怪で、近年出た「日本怪異妖怪事典 中部」の「石川県」の章にも記載されています。とはいえ客観的に見ても知名度は低く、あまり知られていない印象の妖怪ですが、どうも一昔前はそうでもなかったようなんですね。
以下に引用するのは、1987年の「日本の夜 電灯以前」というエッセイの一節です。
さて、照明の不十分な夜は、陰影が多く、思わずはっと驚かされる。また夜、陰にこもってひびく動物の鳴声も怪奇的だ。ここに百鬼夜行の、怪奇な夜の世界の一面がある。夜鳴き伝説、人魂、狐火、種々の怪火、一ツ目小僧、納戸婆、枕がえし、オイテケ、袖引小僧、神隠し、天狗から、山女郎、海坊主、火葬場の三昧太郎、ネコマタ等々の種類は数十種にも及び、子供達はその話におびえ、夜行をひかえた。
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