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【ショートショート】時の魔女とアメジスト

 エルフの館で事件があった。
 応接間に飾ってあった家宝の紫水晶アメジストが、くすんだ灰水晶と取り替えられていたらしい。

 館の主人は怒り、従者たちを使って犯人と紫水晶の行方を追った。
 しかし事件から半年経っても、紫水晶の行方どころか、犯人の足取りは一向に掴めない。

 困り果てた従者たちは村外れに住む魔女を尋ね、どうか力を貸して欲しいと頼んだ。

魔女は快く引き受けると、半日もしないうちに紫水晶を見つけて、家に帰ってきた。

 家で待つまでいた魔女の弟子は、魔女の好きな紅茶を差し出すと待ちきれない様子で尋ねた。

「先生すごいです!どんな魔法を使って、紫水晶を見つけたのですか?」

 魔女はくつくつと笑うと、角砂糖をころんと紅茶に入れる。

「今から話す話は、誰にも言っちゃいけませんよ」

 弟子がこくこくと頷くのを見届け、魔女はずずっと紅茶を啜った。

「もともと紫水晶は盗まれていなかったのですよ。応接間は西陽が差し込む場所にあったから、そのせいで紫水晶が褪せて別物と入れ替わったように見えただけだったんです」
「ええ!?つまり家宝が変色したことに気付かなかったってだけなんですか?」
「何せあの館の主人はエルフですからね。長き時を生きる者にとっては紫水晶が変色してしまう時間すら、あっという間なのでしょう」
「人騒がせな話ですね」
「いいじゃありませんか。巻き戻しの魔法で色褪せる前の紫水晶に戻してあげれましたし、何より私の懐はかつてないほど潤っています。私たちが真相を黙ってさえいれば、この事件は解決ですよ」
「もし館の主人が口封じにきたらどうするんです?」
「日光で紫水晶が変色することすら知らない不勉強者でも、身の程くらいはわきまえているでしょう。もし、それすらわからないというのなら、そうですね。時を感じるほど、時計の針を進めてあげるのも一興ですね」

そう言って、魔女は一緒に出されていたクッキーをぱくんと口に放り込むとにんまりと微笑んだ。


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