世界史の飾り窓115エリザベス1世(イングランド絶対王政)
絶対主義(絶対王政)に官僚制と常備軍が不可欠だとすると、イングランドは中世以来、その両方を欠いていた。イングランドには絶対主義はなかった、と言われる所以である。官僚制が発達しなかったのは、「コモン・ロー」の国だったので、地方の地主階級=ジェントリを治安判事として利用できたからであり、彼らの忠誠はヘンリ8世の修道院財産分配でより強固なものになった。常備軍については、「ノルマンの征服」(1066)でできた「征服国家」イングランドでは、①王権から伸びる封建制が社会の末端まで貫徹し、国王直属の陸軍は不要だった。②海軍についても島国イングランドをドーヴァー海峡が守っていたことが影響している。しかし、オランダがスペインからの独立戦争を始めると状況は一変し、姉の夫だったフェリペ2世との結婚話まで持ち上がった。
ウェールズ辺境のいかがわしい貴族であったテューダー朝の最大の敵は、外国ではなく国内の貴族と彼らが牛耳る議会であった。姉メアリ1世の死を受けて即位したエリザベス1世の初期政治は「いかに貴族や議会に口出しさせないか」で一貫している。エリザベス1世が治めた時代は「良きベスの時代」と呼ばれ、「運に恵まれただけ」という酷評もあるものの、イングランドを統治し、アルマダの戦いでスペインを破った手腕は高く評価されている。それは教科書に登場するだけで、トマス=グレシャム(「シティ」を設立)、フランシス=ドレーク(私掠船の船長で、1588年のアルマダ海戦に勝利し、最初に世界周航を成し遂げた)、ウォルター=ローリー(ヴァージニア植民を試みる)などのキラ星のような人材あってのことだった。教科書には出てこないが、彼女の即位を助け、即位後も暗殺計画をすべて未然に防いだフランシス・ウォルシンガムの働きも大きい。彼女の結婚問題は当時の最大の国際関心事だったが、ロバート・ダドリーが既婚者だったが愛人であり、ローリーもそうだった。ローリーは北米植民地計画で、彼女に捧げた植民地をヴァージニアを恥ずかしげもなく名付けたが、バカにされたことを逆手に取って笑いを取るのがイギリス(イングランド)のユーモア。なお映画『エリザベス』『エリザベス ゴールデン・エイジ』が参考になります。ついでながら妄想だらけの映画『もう一人のシェークスピア』というのも母子相姦というエグいネタになっております。

