呼吸のまま、遊ぶ
静かだ。
画面の光だけが、部屋の中で淡く揺れている。
コントローラーを握る手は、少しだけ温かい。
昔は、この時間が何より好きだった。
ゲームの中に入れば、
自分はもっと上手くなれる気がしたし、
もっと遠くまで行ける気がした。
勝つこと。
ミスをしないこと。
効率よく進めること。
それが楽しいことだと、疑わなかった。
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でも、いつからだろう。
気づけば、ゲームの中でも
「やるべきこと」を探していた。
最適な動き。
無駄のない選択。
正しいルート。
それをなぞることに、
どこかで安心していた。
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うまくいけば、少しだけ満たされる。
でも、少しでも崩れると、すぐに苦しくなる。
「なんでできないんだろう」
そんな言葉が、画面の向こうじゃなくて、
自分の内側に向けられていた。
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ある日、手が止まった。
いつも通りゲームを起動して、
いつも通り進めようとして、
それでも、身体が動かなかった。
やりたいはずなのに、動けない。
画面の中の世界が、急に遠くなる。
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そのとき、ふと気づいた。
呼吸をしている。
ただ、それだけ。
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コントローラーを置いて、
少しだけ目を閉じる。
吸って、吐いて。
何も起きない。
何も進まない。
でも、確かにここにいる。
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「そっか」
小さく、そう思った。
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ゲームは、本来、
何かを証明するものじゃなかった。
勝たなくてもいいし、
うまくできなくてもいい。
ただ、触れて、感じて、
その時間を味わうものだったはずだ。
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呼吸と似ている。
うまくやろうとしなくても、
自然と続いていくもの。
止めようとすると苦しくなるけど、
任せれば、ちゃんと流れていく。
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もう一度、画面を見る。
さっきと同じ景色なのに、
少しだけ違って見える。
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うまくやろうとしなくていい。
ただ、ここにいて、
触れていけばいい。
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コントローラーを握り直す。
深く一度、息を吸う。
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それだけで、十分だった。
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ゲームの中でも、外でも。
私はただ、呼吸をしている。
それだけで、ちゃんとここに在る。
