うちに来てくれて、ありがとう
うちの犬は、ペットショップから迎えました。
犬と暮らすことを決めた時、どこからどのように迎えたらいいのかを、たくさん調べました。
その時、「パピーミル」という言葉を知りました。
なので、保護犬団体やブリーダーさんから迎えようと考えていたのです。
ところがある日のこと。
立ち寄った隣県のホームセンターのペットショップを覗いたときでした。
一匹の犬に目が止まりました。
その犬は、他の小さくて可愛らしい犬たちより二回りくらい大きくて、三分の一くらいの値段で、まるで投げ売りされるように置かれていました。
毛は伸び放題で目に覆いかぶさり、目の周りは涙の跡で真っ赤になっていました。
私たちがその犬をじっと見ていると、店員さんが抱かせてくれました。
伸び放題の毛のせいで外見からは分かりませんでしたが、抱き上げると、驚くほどガリガリでした。
背骨の形がゴリゴリと分かるほどでした。
そして、本当は真っ白なはずの毛が、お腹のあたりまでおしっこで黄色く染まっていました。
抱いているあいだ、犬はずっと私の指を舐めていました。
夫に渡すと、夫の指はなぜかガジガジと噛みました。
「この子、連れて帰る」
私がそう言うと、夫も同じ気持ちだったようです。
「いだい、いだい」
と指を齧られながら、うなずきました。
ケージやトイレ、クレートなどを買い、床にクッションマットを敷き詰めて、大急ぎで犬を迎える準備を整えました。
そして2日後、また隣県まで車を走らせて迎えに行きました。
手続きの間、店員さんは私たちに何度も
「優しい」と言いました。
隠しきれない聖母のごとき慈愛オーラが出ちゃってるのかしら、私。
最初はそうのんきに思っていました。
けれど、店員さんの言う「優しい」の言外には、
「こんな子をわざわざ迎えるなんて」
というニュアンスが含まれいるのだと気づき、なんだか悲しくて、悔しくて、涙が出そうになりました。
そうやって、我が家の一員になったのが、うちの犬です。
「こんな子」は、今、私たちの世界一の宝物です。
あのホームセンターで、
私たちを待っていてくれて、ありがとう。
うちに来てくれて、ありがとう。

