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【感想】美少女万華鏡 -罪と罰の少女-

ブランド : ωstar   発売日 : 2017-07-28
原画 : 八宝備仁  シナリオ : 吉祥寺ドロレス

⚠️ここからネタバレあり⚠️

◾️️ネタバレ感想

女装モノ史上で最高峰の美。
狂愛こそ罪であり、白痴美は罰である。


★はじめに

およそロープライス作品とは思えないクオリティで毎回驚かされる美少女万華鏡シリーズ。
その第4弾にあたる本作は、シリーズのなかで最も美しく、最も罪深く、そして最も偏執に満ちた物語でした。
狂愛が辿る行く末は予想を超えた帰結を迎え、読後は言語化が難しい複雑な想いを抱えることに。
ただ分かっているのは、圧倒的に美しかったということ。
美しい物語を愛する自分にはかなり好みの作品でした。
個人的には今回の罪と罰の少女が一番好きです。

惜しまれるのは、自分が文学に精通していない為に、中原中也の詩やドストエフスキーの『罪と罰』のフィルターを通すことなく物語を終えた事でしょうか。

口惜しすぎて泣きそうです……。

というわけで無知を晒すのも悲しいので考察や論理展開は意識せず、ただ感じたままを記させていただきます。
どうぞお付き合いくださいませ。


★美しい原画と音楽

美少女万華鏡シリーズでまず真っ先に思い浮かぶのは八宝備仁さんの原画でしょう。諸手を挙げて美しいと称賛できます。
このシリーズ全てにおいて言える事で、ここまできたら既に芸術の域。
ただ美麗なだけでなく、可愛らしさまでも内包しているので虜にされるのは既定事項でしょう。

そして、美麗すぎるスチルに添えられた音楽も相変わらずに素晴らしい。
これもシリーズ共通に言える事ですね。
今回はドビュッシーやサティなど、ピアノ曲クラシックのアレンジが本作の美しい世界観にマッチしていました。

印象的だったのは夕莉のテーマ曲のように使用された「2つのアラベスク」第1番。ピアノのメロディーは音の泉を連想させ、白で透き通るような美しさに華がある夕莉にぴったりです。

また興味深いのは、作中頻繁に使用されていた「ジムノペディ」第1番。
この曲はいわくつきで、楽譜にある指示は「ゆっくりと苦しみをもって」 (Lent et douloureux)というもの。
物語にリンクして暗喩の役割を果たしています。

美しい絵と美しい音楽。
この調和は本作の美の根幹を担っていました。



★夕莉と夕摩

この二人、たまらないですね。
ため息が出るほどの美しい容貌と、背徳と罪に侵された甘美で淫靡な関係性。尊みの極みです。

【覡 夕莉(かんなぎ ゆうり】

姉の夕莉は眉目秀麗、成績優秀、スポーツ万能。しかも学園中の憧れの的。
そんなハイスペックな姉が弟を支配しようと、時に冷たく、時に誘惑し溺愛する。
姉もの好きの方にはたまらないでしょうね。そもそもビジュアルが素晴らしすぎる。

完全なる美の存在といえる夕莉は、えちシーンの乱れ具合すら美しい。

て言うか、何してても美しい。罪すぎる……。

シリーズ1作目のキリエが個人的ナンバー1だったのですが、夕莉に出会うとかなり心が揺れます。
キャストの篠原ゆみさんが抜群にハマり役で素晴らしい。やはりこのシリーズはキャストを選ぶ采配が上手い。

【覡 夕摩(かんなぎ ゆうま)】

夕莉の弟であり最狂の女装主人公。
一癖も二癖もある御し難い主人公でしたね。
彼の男の娘属性は本作屈指の見どころで、この先のエロゲ史に残すべき美しさ。
姉に転がされる展開の受け役にぴったりかと思いきや、案外グイグイに攻めたりする快楽に従順なベッドヤクザ具合。BADENDではそれが顕著でした。

コイツはヤバい!!

詩を愛する内気な性格とは裏腹に、内面に秘めた憎悪と狂愛には驚かされました。
それは夕莉に対してだけでなく、鏡子やいちかに対しても同様。
特にいちかを虐げるかのように抱くシーンは黒い本性が滲み出ていて恐ろしい。
えっちだったけど。

夕莉と夕摩の美しさは物語の全てでした。
形容が困難なほどの美は、最後に白痴美とされ果てる。まさに罪と罰の少女。


★物語と二人の罪と罰とは

背徳の愛、倒錯の愛、依存の愛。そして罪と罰。
愛憎と狂気を描いた物語は醜いのに美しい。

何より美しいのは夕摩と夕莉の関係性。
鳥籠の中にある百合の花をモチーフにしたビジュアが思わせぶりで秀逸。
男の娘属性の弟と甘え甘やかしたい姉という最狂の美を見た時点で勝利を確信していました。

きた!大好物な要素だらけ!

その為に序盤からズブズブと物語に没入していき、直ぐに虜となりました。

はじめは圧倒的に美しい姉である夕莉が、弟の夕摩を手玉に取り、甘美で淫靡な誘惑で愛に堕落していく姉属性もの作品だと思っていましたが‥‥。

……全然違いましたね。

姉と弟の愛、いわゆる近親愛を題材としつつ描かれたのはエゴイスティックな狂愛。姉を手に入れるために”課題”という凶行を犯し、堅牢な”心の鳥籠”に閉じ込めようとする夕摩の罪が真の題材でした。

夕莉の視点で見れば、幼い頃からずっと愛していた弟を自分だけのものにしたい邪な独占欲剥き出しですが、常識的な考えを持ち合わせている。
“形ある鳥籠”の中からは抜け出せないと、血の壁は越えられないと頭で理解しています。

ただその愛が大きくなるほど歪みが生じ、狂信的な愛に染まっていく。
社会の常識という”形ある鳥籠”から抜け出し羽ばたいていく。
物語も大筋この流れで進行していたはずです。

ただ夕摩の視点は純粋な狂愛。物語終盤で語られた彼の思想は全てをひっくり返すインパクトがありました。

「一つの微細な罪悪は、百の善行に償われる」

「選ばれた非凡人は、新たな世の中の成長のためなら、社会道徳を踏み外す権利を持つ」

どうやら『罪と罰』の主人公ラスコーリニコフの思想らしいですね。(読んでないのでよく知らない)

美しい姉を手に入れるためならば、愛する姉すらも毒牙にかけ、心を侵す。それこそ”心の鳥籠”に閉じ込めようとする常識を逸脱した愛でした。

夕摩なしでは生きられないよう狡猾な手段を以て依存させて、言葉通り全てを手に入れようとするもの。
呪縛の母を殺し、実の父を殺し、姉の心を侵して義父を殺させようとも。

なんて恐ろしい奴なんだ……。

可愛い顔してやることエグい。
姉への愛と自己実現欲求が彼を狂わせたのでしょうが、この最強カードをラストにズバッと切ってくる物語構成は見事。
叙述トリックのように惑わされてしまいました。

これこそ作品タイトルにある”罪”です。

では”罰”とは何だったのか。
これは勝手な憶測ですが、結ばれた二人が授けた双子の子供の事でしょう。
歴史は繰り返すという言葉こそ”罰”を示唆していたはずです。

夕莉と夕摩の母は実の弟を愛していた。
またその弟も実の姉を愛していた。
罪である禁断の愛を以て生まれた双子。
そして罪を隠すために罪を重ね築いた仮初の家族。

その双子も両親と同じように姉は弟を愛し、弟は姉を愛した。
罪に罪を重ね、結ばれた夕莉と夕摩。
そしてその子供は双子‥‥。

果たしてこの先、夕摩と夕莉は幸せになれるのでしょうか。その双子の子供に将来幸せは訪れるのでしょうか。

エピローグで白痴的な幸福という言葉があったように、取り繕ったような幸福だったのかもしれません。
一見すればハッピーエンドですが、実は恐ろしい罰であったかもしれないという帰結。何ともやるせない。モヤモヤしますね。

でも…このエンディング最高……。

心の抉り加減が程よく、陰鬱な気分になり過ぎないからこそ、二人が美しかったという感情がそのまま乗っかってくるというか。

二人の愛は本物なので美しいですが、その中身は独占欲や支配欲を伴うもの。
夕摩と夕莉の行動を俯瞰して見ると、非常に浅ましく醜い行いと言えるかもしれません。
ただ二人の心情を文学のようなアプローチで見せ、かつ絶対的に美しい姿を見ていると精神まで美しいと錯覚してしまうんですよね。

もの凄く薄っぺらい感想になってしまいますが、美しい物語だったと結論付けさせてもらいます。


★えちシーンについて

この作品はジャンルで括るなら抜きゲーにあたるので、スチルの8割はえちシーン。ならば触れないわけにはいかないでしょう。
本作の魅力であるアニメーション付きシーン回想は、八宝備仁さんの原画が動くだけで価値あるもの。

えちシーンについて個人的な感想を述べるのであれば、”凄くえっちだけど美しすぎて気分は全然えっちじゃない”でしょうか。
ビジュアルとしても構図としても美しすぎるゆえ、芸術作品を見ているかのような気分でした。

ちょっと珍しいなと思ったのはアニメーション付きで顔のアップがあった事。
これはあまり見た事なかったので少し驚きました。えっちかと言えば、うーん、えっちだけどうーん。
やっぱり美麗という感想が先に出ますね。

夕莉の顔面美しすぎる問題。


シーンテキストはキャストさんの艶めかしい声でかなり頻度高く淫語が飛び交いますが、劣情に駆られるというよりは、愛の発露と戯れを俯瞰して見ている感覚。これも前作までと共通で美しすぎるために実用性は皆無。(個人の感想です)
むしろ汚したくない気持ちが先行します。

批評空間のユーザーレビューでは自分と異なる評価でしたので、趣向の違いという事でこれ以上は意味を成さない不毛な話題となります。


◾️最後にまとめ

愛憎と狂気を描いたシリーズ第四弾は圧倒的な美しさを見せてくれました。
この作品をプレイするとつい忘れがちなんですが、これロープラ作品なんですよね。あまりにも高いクオリティに毎度ながら驚かされました。

次回作『美少女万華鏡 -理と迷宮の少女-』がシリーズ完結になるそうですが、本作プレイ時には既に『美少女万華鏡異聞 雪おんな』の発売も4月と迫ってますので、しばらくは楽しみが続きそうです。

では最後に謝辞を。
美しい物語を届けてくれたオメガスターの皆様、制作に関わられた全ての方に感謝を。
また、この感想を読んでくださったあなたにも最大限の感謝を。
ありがとうございました。

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