仕事中に地震っ!!
『あっ、揺れてる…」
保育中に地震が来た。
「怖い。誰か…」
ひとりだったら、きっとそう思ってた。
声に出さなくても、喉の奥にそれが詰まって、飲み込めなくて。
でも、そのとき私は“ひとり”じゃなかった。
目の前で、子どもたちが笑って遊んでいる。いつもと変わらない顔で、何も知らない顔で。その無邪気さが、逆に胸を締めつけた。
「どうしよう」
さっきまで一緒に笑っていた先生たちの顔が、一瞬で変わった。
笑顔が消える。目つきが変わる。空気が変わる。
防災頭巾を引っ張り出す先生。おんぶ紐を手に取る先生。それぞれが、そばにあるものを迷いなく掴んでいく。
まもなく、お部屋の内線電話が鳴った。
この建物は本園から離れていて、アナウンスは聞こえない。今ごろ本園では、スピーカーから子どもたちにも分かるように、一斉に放送が流れているはず。それでいつもの避難訓練もバッチリだから。
内線を受けた先生が、顔をこわばらせたまま話しを聞いている。周りの先生たちも、黙ってその表情を見つめている。
誰も声を出さない。誰も笑わない。
「…とりあえず待機しててって」
受話器を置いた先生が言った。
“待機”。
その言葉を、こんなに重いと思ったことはなかった。
わたしが担当している0歳児は、まだ歩けない。避難するなら、おんぶが必要。背中におんぶして、もうひとりを前に抱っこ。合わせてふたり。どう頑張っても一度にふたりが限界。
その状態で、階段を何度も往復する。
頭では分かっていたはずのことが、急に現実の重さでのしかかってきた。
もし、大きく揺れたら。
もし、避難の指示が出たら。
もし、泣き出したら。
もし、パニックになったら。
“もし”が一気に押し寄せて、胸がギュッと締め付けられた。
それでも、子どもたちは目の前にいる。
わたしに向かって微笑んでいる。
怖いを飲み込んで、いつもの声を探して、いつもの手を伸ばした。
幸い、今回は大事にはならず、揺れもすぐにおさまった。
落ち着いたあと、私たちは先生同士で動きを確かめ合い、防災グッズを点検し、お部屋の環境を見直した。
“怖い”は消えない。けれど、子どもたちの笑顔が私を強くしてくれた。
だから私は、この小さな命を守る。
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!