「おっさんパンツ」第3話【漫画原作部門】
おっさんが俺のパンツに宿ってから1週間くらい……
奇妙な生活が続いてる。
今までレギュラーの一員として活躍していたあのパンツも今では部屋のオブジェみたいになってる。
パンツとしては引退。
その引退したパンツの上で横になって寛ぐおっさん。
…………冷静になって考えてみれば、このおっさんも少し前までは、俺と同じようにこうして生きてたんだよな………
おっさんて何者だったんだ。
そういや名前すら知らねえぞ。
『なぁ……おっさん』
「んあ?」
『おっさんって生きてた頃の記憶も残ってんだよな』
「何だいきなり」
『いや……何か気になって……』
「……魂宿は自我を保ったまま、物に宿るからな。生きてた頃の記憶もあるぞ」
『じゃあ名前とかも?』
「あたりめえだ」
『おっさんの名前って何?』
「それは言えねえ」
『えっ……何で?』
「そういうルールなんだよ」
『名前を名乗っちゃいけないの?』
「そうだ」
『名乗ったら?』
「即刻あの世行きだ」
『へぇ〜厳しいな……』
ん?何かおかしくね?
本来はおっさん達のことって……
「最初にそのルール聞いた時は意味分かんなかった。なんせ本来、魂と人間は会話出来ないはずだからな。名乗りようがない」
そうだよな。
俺とおっさんが話せてるのはバグが起きてるからって………
それもよく分かんないんだけど……
「今思えば……わざわざそんなルール決めるってことは、バグが起こる想定があったってことだわな。閻魔もテキトーな野郎だ」
『名前を名乗る以外にも強制的にあの世に帰らされるルールがあるの?』
「ん………あったかな………あったような、なかったような………」
あんたも大分テキトーだよ。
「とりあえず名前は名乗れねえから、何とでも呼べや。別に今のおっさんで構わねえ」
『そう……じゃあ……このままおっさんって呼ぼうかな』
「俺はお前の呼び名を変えたいな。ボロペラボーイじゃ長すぎる」
『普通に俺の名前教えるって……俺の名前は…………』
「いやっ!待てっ!」
『なに………?』
「お前は俺のことあだ名で呼ぶんだ。俺もお前のことをあだ名で呼ぶ。名前は知らんでいい。お前に最適なあだ名をつけてやる」
変なところにこだわるなぁ……
めちゃくちゃどうでもいいんだけど……
「えーそうだな……………よし!決めた!お前のあだ名はパンツだ!」
『…………マジで言ってる?』
「大マジだ。シンプルイズベスト」
『今やパンツのイメージはおっさんの方があるぞ………』
「んなわけあるか。このボロペラはお前のだろうが」
『いや……そうなんだけど……』
あだ名がパンツなんて聞いたことないんだけど……
「あだ名がパンツなんて聞いたことないだろ!」
うわぁ……何か同じ思考働いてんのすごい嫌だわ………
「だから今日からお前の呼び名はパンツだ!」
『反応しづらいって……』
「んで俺の呼び名はおっさん。2人合わせておっさんパンツだな!ガハハハハッ!」
合わせんな。
売れない漫才師か。
「売れねえ漫才師みたいな名前だな!」
……っっ‼︎
「俺達のコンビ名が決まったところで、俺から1つ質問とお願いだ」
コンビ名じゃねえわ。
勝手に決めんな。
『……何?』
「お前学校いつから?」
『明日から』
「ほう……なるほどな……」
『お願いは?』
「お前………俺を学校に連れてけ」
『嫌だよ』
「…………リュックの中に入れるだけでいい」
『それが嫌だ』
「……………いやマジで頼む。部屋の中飽きた」
『だから嫌だって』
「……………」
『……………』
「てめぇ!こっちが下から頼んだら偉そうに!」
『どこが下からだよ!』
「深夜に騒ぎまくって寝かしてやんねえぞ!」
『困ったらすぐにそれで脅すなよ!』
部屋にいるだけでもやかましいのに、何で携帯しなきゃいけないんだよ。
ずっとリュックの中から声が聞こえてくるのも気持ち悪いし。
「遠慮すんなって。俺達コンビじゃんか。なぁパンツ」
『コンビじゃねえし、その呼び方も認めてねえ』
「反応した時点で認めてる。お前はパンツだ。パンツよ、このパンツをリュックに入れて持ち歩くんだ」
『パンツパンツうるせえ』
「いいのかなぁ〜?お前が寝られなくなるだけだよぉ〜?こちとら霊体化してるから体力とか関係ないんだよねぇ〜?」
じゃあ何でいつも寝てんだよ。
てか顔腹立つ。
『別にこっちもいくらでも対策はあるさ』
「なにぃ?」
ボロペラを衣装ケースの1番奥へ。
これならこいつの声もそんなに聞こえてこないだろう。
「おい!待てコラ!仕舞うのだけはやめろって言ったろうが!」
『明日まで静かに出来たら出してあげる』
「てめえ!くそっ!」
ふう……
これでひとまず大丈夫でしょ。
明日から学校だし。
もう寝るかな。
「……………ダンッ!」
………
「ダダンダンダダン!ダダンダンダダン!テレテーテーテーテー」
……………
「ダダンダンダダン!ダダンダンダダン!テレテーテーテーテー」
………………………
「ダダンダンダダン!ダダンダッ………」
チッ………
うざってぇぇぇぇ‼︎
『うるせえぞ!クソジジイ!』
「アイルビーバック」
『やかましい!』
はぁはぁ………
ちくしょう。
「ハッハッハッー!寝かせないと言っただろう!」
いや待てよ。
別にこの部屋に置く必要はねえのか。
「おい!それは卑怯すぎるぞ!」
『1階の洗面所に置いとけば、声は届かんでしょ』
「ふっ!舐めちゃいかんなパンツよ。地元でハマの遠吠えと恐れられた、俺の声量を思い知るがいい」
横浜出身なんだ。
てかハマの遠吠えダサッ
『………さっ!寝よ』
流石にこれだけ離れれば……
「わおぉ〜〜〜〜〜ん!」
………
「はふっ!はふっ!っっふっ!ふぁふぉん!ふぁふぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!」
……………
「ふぉふっ!ふぉふっ!っはっは!ふぃん!ふぃふん!ふぃふぉ〜〜〜〜〜〜ん!」
だらぁ!くそがぁ!
「ハッハッハッ!ハマの遠吠えの声量に耐えられなかったようだな」
『イライラも込みでだ‼︎』
本当の遠吠えってのはこの上なくうぜえ。
「ボロペラを地面に叩きつけたって、俺には何のダメージもないぞ?」
『うるせえ!』
『さぁどうする?この家にいる限り、俺の声はお前の耳に届くぞ』
すげえ腹立つな。ハマの遠吠え。
こいつのドヤ顔もうぜえ。
『………分かったよ………………明日リュックに入れてくよ』
「その言葉を待ってたぞ!パンツゥゥゥ!」
ひとまずこの場はこれで収めて早く寝よ。
どうせこいつ朝寝てるから、寝てる隙に家出ちまおう。
「お前……今、どうせ俺が朝寝てるから、寝てる隙に家を出て、置き去りにしようと考えてないか?」
『うぇっ?』
「図星だな」
ちょいちょい勘が鋭いの何なの。
「お前が俺を学校に連れて行かない限り、ハマの狼は吠え続けるからな」
『うるさい。分かったからもう寝る』
早急に手を打たねば………
翌朝。
「大学生は基本クソ〜♪なんとなく行ってるだけ〜♪やりたいことは特になし〜♪ヤることしか頭になし〜♪」
朝からうるせえな。
なんだその歌は……
「俺の即興ソングだ」
聞いてねえよ。
「いい出来じゃね?」
『思ったけどさ。リュックの中に入れたとしても外見えなくない?』
「バカ野郎。それは上手いこと入れろ」
『上手いことって何だよ』
「いいか?俺はボロペラから離れることは出来ないが、霊体化してる。だからボロペラを上手いところに入れれば、リュックから透けることが出来る」
なるほど。
確かに。
「だからそうだな………リュックの横にあるペットボトルとか入れるポケットあるだろ。そこに入れてくれ」
『嫌だよ。友達に見られる可能性あんじゃん』
「アホか。誰がそんなとこ見んだよ」
『万が一があるだろ。別のところにしてくれ』
「あんだよ。わがままだな」
こいつマジで1回殴りたい。
1度だけ実体化しないかな。
「じゃあチャック付きの小さいポケットでいいわ。チャックついてりゃ問題ないだろ」
『うん………まぁ………』
「はいっ!決まり!ほれ!早くしねえと学校に遅れるぞ!」
急かすな。
「ぶほっ!おい!雑に入れんな!」
『そのくらい我慢しろよ』
「なにっ!生意気な!」
『連れて行くだけでもありがたいと思えよ』
「何ちゅう口の利き方だ……これだから最近の若者は………」
『何かとつけて、最近の若者に物申そうとするよな………最近のおっさんは……』
「もう死んでるわ」
『ご愁傷様』
「口の減らねえガキンチョが……」
今日だけの我慢だ。
今日を乗り切って何とかこいつを家に置き去りにする方法を考えなければ………
ずっとこいつと学校に行く羽目になる。
『………家出る前に1つ言い忘れた』
「何だ?パンツ」
いちいちパンツって言うな……
『外に出たら、おっさんの声には一切反応しないからな』
「なにぃ?それはあんまりだろ」
『いやいや当たり前だろ。おっさんの声は他の人には聞こえてないんだから、俺がいちいち声に反応してたら、ずっと独り言言ってる頭おかしいやつだろうが』
「なんでい。そんなことか。気にすんな」
『気にするわ』
「じゃあ!何だ?あの某死神みたいに無視され続けながらついて行けってのか!?」
『何だよ!某死神って!』
「デ◯ノート知らねえのか!?」
『知るかっ!』
「あの名作知らねえなんて、おまっ………」
口を開けば言い合いになるおっさんと俺。
喧嘩するほど仲が良いなんて言い方をするけど、この場合はどうなんだろうな………
決して仲が良いとは思わないけど………
でもこの時はまさか………この口の悪い小さいおっさんと長い付き合いになるとは夢にも思わなかったなぁ……………
えっどのくらい長い付き合いかって……?
それは………この続きを書かせてくれれば分かると思うよ。
とりあえず今回はここまでかな。
字数ギリギリまで書いても良いんだけど、俺的にはここがベスト。
おっさんパンツの今後に幸あれ。
