【読書感想文】「押絵の奇蹟」夢野久作
歌舞伎の女形の青年と、ピアニストのトシ子を巡る長く深い因縁とは?
――男と女とが、お互いに思い合っただけで、その相手によく似た子供を生んだり生ませたりすることが出来る――
……まあ、何というステキな子供らしい空想で御座いましょう。
と書きつつ、『法医学夜話』の
生物の親子の外貌性格の相似は、その親の心理に潜在せる深刻なる記憶力が、その精虫と卵子とに影響したるものに外《ほか》ならず――直接の父母以外の、他人に酷似せる子が、姦通の事実なくして生るる事あるはこの道理に依るもの也。
が引用されている。間違いなくこの本の出版社は「民明書房」だろう(決めつけ)。
トンデモな説ながら、『ドグラ・マグラ』につながりそう。そしてこれが不義密通へのアイロニーだとかアンチテーゼだとかがあるとしたら…考え過ぎだろうか?
この話に限らないが、不義(不倫)に対する感情の男女差が酷すぎる。だからこそトシ子の母の夫への毅然とした姿は美しかった。

