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どうやらレイリーが産卵したらしい

幼稚園に通う少年はどうしようもないほど気になるものがあった。

そこにあったガラス製の器はリンゴくらいの大きさで黄色い着色がされていた。決してセンスのあるデザインとは思えないが 数十年前の記憶の残像なので何であるのかと聞かれるとおそらく 彼も答えることはできないだろうが 何か独特な雰囲気を醸し出していたに違いない。
だが 彼が気にしていたのは その何とも言えないガラス製の器ではない。
器 上部の丸みを帯びたくぼみに鎮座し のろしを上げている物体の方だ。

当時 彼の祖父が吸っていた煙草である。

彼はなんとも美味しそうに祖父が吸うのを見て自分も吸ってみたいという好奇心と煙草は大人にならないと吸ってはいけないという教えの狭間で揺れ動いていた。

そう そんなある日のことだ。 玄関先に据え置かれていたガラス製の器に火のついたハイライトが鎮座したままのろしを上げていた。

置き去りにされたハイライトは表面的には穏やかだが八百度近い温度で今にも落ちそうな長い灰を形成し なんとなく悲しげにそして無駄に燃えていた。

少年よ!今がチャンスだ。
誰も見ちゃいねえ。
お試ししちゃいなよ。

そんな声が聞こえたのかどうかはもうどうでも良いことだけれど 彼は周りを警戒しながらおもむろに短くなったハイライトに手を伸ばした。

彼の祖父がしていたように見よう見まねのまま一気に吸い込んだ。

ゲホッゲホッ

その時 少年はこんなもの絶対に一生吸わないと誓った。



いつしか大人になった少年は 遠い昔の誓いを忘れたようだ。絶対なんてものは この世に存在しないのかもしれない。言い訳を重ね 彼は立派なヘビースモーカーへと変貌を遂げていった。

そんなこともあったよね と今は吸わない煙草を思い浮かべながら
ちょっとカッコつけて文学的に表現してみる。

「紫煙をくゆらしていた」

煙草をゆったりと吸い 煙を漂わせる そんな描写だろうか。
浮かんでは消えてゆく感情のように ゆらゆらと空気中に拡散しどこへ向かいどこに消えてゆくのだろう。
脳内ではドーパミンが分泌され ささやかな高揚感がおとずれる。
喫煙者しか理解できぬ至福の瞬間だ。

そんな回想をしていると「紫煙」という言葉に素朴な疑問が浮かんできた。何故なら彼の半世紀以上務めた人生の舞台に紫の煙は存在していない。

疑問に思った彼はすかさずチャッピーに質問を投げかけてみた。そして 目の疲労を感じていた彼はいつものようにEdgeの音声読み上げ機能を使用する。

疑問に思っているにもかかわらず いつものように流し聴いていた彼の耳に聴きなれぬ言葉が飛び込む。


「れいりーさんらん」


レイリーが産卵を?

レイリーという名の魚か?
あるいは昆虫?両生類?鳥?ありえない話ではない。

それとも レイリーさん RUN?そんなわけがないか…

そして卵を産むレイリーが哺乳類ではないという結論に達したが…
それでは紫色の煙とも全く関係ないことも当然 理解している。


でも そっちの方がなんか面白そうだから まあ いいか。

そう言えば 何に疑問を感じていたのだろう。
彼は 過去の喫煙による脳細胞の死滅が物事を覚えれない理由であるという結論に辿り着き 達成感に酔いしれていた。

西の空を茜色に染め沈みゆく夕陽を眺めて どうしてこんな色に見えるんだろうとつぶやいた。

なんのはなしですか



最後までお読みいただき ありがとうございました。
では 素敵な1日を✨



#なんのはなしですか


※煙草の煙は細かい粒子であり 光の波長以下の場合
光が当たるとレイリー散乱とよばれる現象によって屈折 散乱し 青や紫がかって見えることがあるらしい。

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