隠 (onu)
「隠(おぬ)」とは 姿が見えないもの
これが派生して鬼になったとされる
木梨 半次郎が祓う鬼
この鬼の姿は眼には見えない「隠(おぬ)」のことである
戦場において英雄と呼ばれる武将の活躍の様を「鬼神が如く」などと称する
半次郎に言わせると この時まさに「隠(おぬ)」が憑いているそうだ

常人はこの憑き物に支配されてしまい我を忘れてしまうらしい
そのまま人を食らったら最後 元には戻れぬそうだ
今夜の半次郎は酒のせいなのか よく口を開く
あの晩の吉原でのことを語り始めた
浅草寺辺りで「隠(おぬ)」の気配を感じたらしい
そして
「隠(おぬ)」に憑かれた私はお江を絞め殺そうとしたそうだ
もし半次郎がいなかったらと思うと
冷や汗が背中をながれ 古傷が妙に疼いた
時をさかのぼること三百年 時は戦国
尾張の国に誕生した風雲児 織田信長 公
日本の歴史史上 最強の「隠(おぬ)」の化身と伝え聞く
歴史に残る桶狭間の戦い この際に憑いたとされている

信長 公はその革新的な施策や軍事的な才能を知られているが
残虐な行為や愚行も多く語られている
比叡山焼き討ち
長嶋一向一揆の制圧
浅井長政 朝倉義景の頭蓋骨を肴に宴
荒木村重一族の処刑
これらの残虐な行為は「隠(おぬ)」に憑かれたためだ
1582年 本能寺の変
このとき 妖刀 村雨で「隠(おぬ)」を祓ったのが
明智五大老の一人で明智日向守の従弟にあたる左馬之助である
しかし 山崎の戦で明智軍は敗走し 左馬之助は坂本城で自害した
その後 妖刀 村雨は信濃の国に現れる
石川数正に憑いた「隠(おぬ)」を祓ったと伝えられている
村雨は「隠(おぬ)」を祓う
つまり村雨はその度に「隠(おぬ)」を取り込んでいる
「それが村雨の妖刀たる所以なのだ」
その言葉を最後に私は眠りに落ちた
了

どんとこい2024秋
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短編小説 「妖刀村雨」「木梨 半次郎という漢」の続編です
