肩書きに悩むビジネスパーソンが、編集者と試行錯誤し、創作大賞に入選した話
独立や転職で「自分が何者か」を明確に言語化できず、悩む人は少なくありません。輝かしい経歴を持つビジネスパーソンでも、その悩みにぶつかることがあります。
萩原雅裕さんは、日系の大企業から外資系企業、スタートアップと、誰もが知る企業名が並ぶキャリアを歩んできた一人。
それでも、「自分の打ち出し方がわからない」という悩みを抱えていました。優れた経歴自体は強みである一方で、“自分らしさ”の伝え方や悩みは別の問題、人それぞれです。
そんな萩原さんは、個人の発信に伴走する「パーソナル編集者®️」の主宰者であり、担当編集者でもあるみずのけいすけとともに、セルフブランディングに取り組み続けました。
自分のことを客観視するのは意外と難しいもの。編集者という第三者の視点が加わることで、本人には気づきづらい強みや魅力が、だんだん浮き彫りになっていきました。
その道のりの末に生まれたのが、note創作大賞に入賞した「コンサルと外資で学んだ、「アクション動詞」でタスクを書くと生産性が高まる話」です。
悩みを乗り越え、結果を掴むまでのプロセスには、キャリアを価値に変えるヒントが詰まっています。二人の対談から、ビジネスパーソンがSNSで仕事を生みだす手がかりを探ります。

萩原雅裕
ベンチャー・中小企業の社長に伴走する右腕CxO/Prodotto合同会社 代表。1974年群馬生まれ、東京在住。NTTデータ、ベイン・アンド・カンパニー、日本マイクロソフト、Microsoft Corporationを経て、LINE WORKS株式会社でビジネスチャット「LINE WORKS」の立ち上げに携わる。プロダクト責任者、マーケティング責任者、カスタマーサクセス責任者、経営戦略担当役員などを歴任。
note / X
みずのけいすけ
パーソナル編集者®主宰。goodbuff inc. 代表。広告代理店でのプランナー勤務、株式会社マイナビでのメディア運営経験を経て、2018年、note株式会社に入社後、プラットフォームの急拡大期にディレクターとして関わり、2021年に独立。企業と個人のブランディング支援に従事している。
ビジネスパーソンが「パーソナル編集者」を必要とする理由とは

──「パーソナル編集者」の受講歴が2年半を超えている萩原さん。これまでどんなサポートを受けてきたのでしょうか。
萩原:独立をして1年ほどたち、自分の打ち出し方について悩んでいたんです。大企業や外資系企業、スタートアップで働いてきましたが、自分にはわかりやすい肩書きがありませんでした。
外資系企業ではリーダーの右腕として働き、スタートアップでは事業立ち上げのためにあらゆることに取り組みました。幅広く対応できるので、会社員という立場なら、企業にとってそこそこ使い勝手の良い人間だと思うんです。
でも、独立した瞬間に“何をしているかわかりにくい人間”になってしまい、なかなか仕事につながらなくて...。
みずの:受講いただいて最初の1年は萩原さんの肩書きやプロフィールをどうしたらいいのか、主にブランディングに取り組みましたよね。
── 「パーソナル編集者」を受講しはじめた頃の萩原さんについて、特に印象深いことは何ですか。
みずの:萩原さんはすばらしい経歴があるのに、あまり自分のことを語りたがらない印象でした。「パーソナル編集者」は、Xやnoteのプロフィールを限られた文字数でどう表現するか考えたり、ご自身の名刺代わりになるような記事を一緒に作っていくこともサービスに含まれます。
萩原さんのこれまでの経歴や頑張ってきたことをnoteで発信するようにすすめたんですが、躊躇されているようでした。
萩原:みずのさんからは、SNSを通して見る僕の“表情”がわかりづらいと言われました。「必要以上に自分のことを発信しないので、本来の考えや良さが伝わりづらく、『真顔』に見える」と言われた覚えがあります。
みずの:LinkedInを訪れるとすごい人なのに、他のSNSではどんな人かわからなかった。最初の1年で、硬すぎず柔らかすぎない表情が伝わるように、一緒に取り組んでいましたね。

萩原:「パーソナル編集者」の受講中も、noteはほとんど書かずに、ブランディングについてばかりやりとりしていました。
みずの:じつはnote執筆の伴走だけではなく、継続的なキャリア相談として利用してくれる方が最近では増えてきているんですよ。
フリーランスだけでなく会社員の方の中にも、キャリアを通して自分をどう言語化して、発信していくか悩んでいる人は多くいます。対話をしながら、noteやSNSにアウトプットできることが他のコーチングとの違いです。
僕はもともとマイナビで働いていたときに就職や転職の相談を受けていたので、キャリアのお悩みに寄り添えるのは、とても嬉しいことです。
2024年創作大賞で入賞を果たした「アクション動詞」記事の誕生秘話

──「コンサルと外資で学んだ、「アクション動詞」でタスクを書くと生産性が高まる話」は、2024年の創作大賞で入選しました。noteを書いた経緯を教えてください。
萩原:ブランディングの一環として、これまでのキャリアで培ってきたタスク管理術をコンテンツとして読者に届けることができるのではと思い、執筆しました。
このnoteに書いたのは、タスクリストに「A社へ連絡」ではなく「A社へ連絡する」と書く。名詞ではなく動詞でタスクを記述することで、アクションにつながりやすくなる...という方法です。
みずの:最初の構成で、記事に盛り込む内容が多すぎるとフィードバックしましたよね。タスク管理について全4章くらいのボリュームで書いていた。そのなかで「アクション動詞」のネタがとてもおもしろかったので、その1章だけにテーマを絞りましょうとお伝えしました。
読まれるか不安という気持ちから、タスク管理についてのノウハウを網羅して書かれていた記憶があります。
萩原:当時、noteでノウハウ集大成みたいな記事が増えてきた流れを感じていて、僕もノウハウ記事を書くならば、網羅性がある記事を書くことが重要ではないかと考えていました。
そのときに、みずのさんから「読者って、網羅性を求めているんでしたっけ?」という問いをいただいたんです。

みずの:すべての情報がほしい人もいれば、要点を絞った情報を求めている人もいる。萩原さん自身が総集編的なnoteに価値を感じているけれど、実はそうでない人もたくさんいます。トピックを絞って、お土産一つあれば十分という人もいるはずなんです。
萩原:初稿の段階で1万2000文字ほど執筆していましたが、「アクション動詞」のテーマに絞って、書き直しました。それでも、みずのさんは「もっと内容をシンプルにしましょう」と、次に提出した原稿の内容をバッサリとカットしました(笑)。
みずの:「アクション動詞」という切り口があまりにもキャッチーで読者を選ばずに読まれると感じたんです。たくさん語れることを、ちょっとだけ書いて伝えることで、多くの人に読まれるすぐれたnoteを見てきました。
萩原:僕にとってアクション動詞でタスクを管理することは、あまりにも当たり前過ぎたので、これだけの情報量で読者は満足するのかなと不安に思っていました。
みずの:内容を濃くしていけば、業界の人には届くと思うけれど、界隈の外には届きづらくなる。
情報量が多いと、どこから始めたらいいかわからない人もいるし、読者自身に落とし込むのに時間がかかってしまうこともあります。大切なことが一つだけであれば、取り入れる判断もしやすいと思うんですよね。
でも、じつはこういう書き方ができない人が多いんです。仕事のことを書くときに、同業者に見られたらどうしようと不安になり、あれこれ書き加えたくなってしまう。気持ちはわかるけれど、初見の人にとっては情報が多すぎる場合があることを、たくさんのnoteを読んで感じています。
多くの人に届くために、タイトルで誰が書いたかわかるようにする

萩原:タイトルについても二人で練りましたよね。最初は「タスク管理」というワードを入れていました。でも、noteで「タスク管理」とキーワード検索すると、軒並み「スキ」がついてなくて。じつはnoteでタスク管理の記事はニーズが少なかったんですよね。
それで、みずのさんからタイトルを提案してもらったんですが、頭に「コンサルと外資でーー」とあって…。「これ、いる?いやらしくないかな?」というやり取りを3往復くらいしました(笑)。
みずの:萩原さん、最初はまったく頷いてくれなくて。でも、しつこく説得し続けました。
萩原:どうしても経歴を書きたくなくて、代替案として「タスク管理マニア」などにしてみても、みずのさんから「違う」と言われ(笑)。
「誰がこのnoteを書いたかわかるワードを入れてください」と何度も言われたんですよ。さすがにここまで言われると、そうなのかと思い「コンサルと外資で学んだ」をタイトルに入れました。
── みずのさんはどういう思いがあって、萩原さんにご自身の経歴を出すように伝えたんですか。

みずの:「アクション動詞」でタスクを管理しようという内容は、とてもおもしろい切り口だし、本屋さんにあれば手に取りそうなテーマだと感じました。ただ、あらゆるnoteに言えることなのですが、“誰が言っているか”がとても大切なんですよね。
noteのプロフィールを見ればどんな人物像かわかるけれど、noteは1本の記事として発見されることが多いです。
SNSのフィードに流れてくるのは一瞬です。だからこそタイトルで勝負しないといけない。タイトルで、これまでの経験を踏まえた萩原さんの「売り」を入れたかったんです。
萩原:その後に、みずのさんが主催する「書けるようになるnote勉強会」に参加したんです。みずのさんがふだん伝えてくれていることを、改めて客観的に聞くことでとても腑に落ちました。
いまは「誰が書いているか」を意識しているし、自分の顔が現れるように心がけて書いています。
── 「アクション動詞」のnoteは、執筆当時に創作大賞を意識して書いたのでしょうか。
萩原:まったく意識はしませんでした。ただ、公開してすぐに反応がよくて、たくさん読まれたんです。そのときに、note社の方とみずのさんから創作大賞にビジネス部門ができたと聞いて、せっかくだからと応募しました。
みずの:過去のnoteも選考対象なので、「アクション動詞」の記事と「40代オッさん「中年の危機」の正体と乗り越え方を見つけた」を応募したんですよね。そうしたら、ふたつとも中間選考に残ったんです。50,000を超える応募作のなかでふたつ残るなんて、ほんとうにすごいことですよ。
── みずのさんは「アクション動詞」のnoteを読んで、創作大賞に入賞する手応えは感じていましたか。
みずの:確信にまでは至っていませんでした。でも、読者の反応がとても良かった。「アクション動詞」に内容を絞ったからこそ、他の情報へ気を取られず読者に届いたんですよね。
読者の感想に「明日から取り入れます」というのがあって、こういうものが創作大賞で目に留まるのではないかと思いました。
ひとり法人の代表を務める萩原さんとみずのさんのこれから
── お二人ともひとり法人の代表ですが、noteでの発信の重要性をどう感じていますか。

萩原:noteは事業の背景にどんな考えや思いがあるのか発信する場所ですよね。僕の価値観に共感する人が記事を読んでくれて、事業を理解してくれて、仕事につながることがあります。
あらゆる人の価値観を伝えるメディアとして、読者に自然と受け入れられるプラットフォームだと思います。
みずの:僕もまさしく同じことを思います。独立したときに先輩から、SNSで“生存報告”をつづけることの大切さを教えてもらいました。「急に『会いましょう』と営業するのもいいけど、ゆるくでもいいから普段から投稿をして、SNSを耕しておくといいよ」と言われたのを覚えています。
── 萩原さんは、今後はどんなことに挑戦を考えていますか。
萩原:最近、僕はあらためて自分がBtoBマーケティングが好きなことに気づいて。これまでの経験を活かして、BtoBマーケティングに取り組むと、好機が生まれるんじゃないかと思っています。
みずのさんには、僕がBtoBマーケティングについてのnoteを書くとしたら、どんなことを届けられるかを相談しています。
すでに、BtoBマーケティングについて書かれた読み物はたくさんあります。でも、そこに僕のキャリアを通して考えたことをプラスしたテーマにすると、おもしろい記事が書けるのではないかと思っています。
みずの:ブランディングを考えながらnote執筆の作戦会議をするの、いつもワクワクします。ぜひ、やりましょう。
── みずのさんは萩原さんに2年半伴走していて、変化をどう感じていますか。
みずの:noteだけでなく、他のSNSでもご自身をしっかり出せるようになりましたよね。信頼感もグッと伝わるようになってきている。そのうえで、ご自身でビジネスチャンスを掴んでいるのを側で実感しています。
あと、個人的には僕もひとり法人で代表を務めているので、萩原さんが近しい立ち位置でいてくれることが励みになっています。同じビジネスパーソンとして、戦友のような気持ちでいます。
「パーソナル編集者」は、フリーランス、経営者、会社員など、いろんな人が悩みを抱えてやってきます。萩原さんとの伴走を経て、そういう人たちへ支援する自信にも繋がったし、もっと力になりたいと思っています。
── 最後に、萩原さんからみずのさんへ、みずのさんから萩原さんへ、それぞれメッセージをお願いします。

萩原:みずのさんとは会社員から独立したタイミングも近く、同じ悩みを抱えることが多いですよね。岡目八目ではないですが、悩みをもち合って話をしています。お互いに参考になることも多いし、セッションはいい時間だと思っています。
みずの:共通の悩みが多く、オンラインセッションではお互いに壁打ちをしている不思議な関係です(笑)。
キャリアの違いだけ見たら、萩原さんと対等に話す機会なんてなかったはずです。でも、編集者の立場だからこそ、これだけのキャリアの人とフラットに話せるんですよね。
そこに編集者としてのおもしろさも感じているし、自信にもつながっています。
萩原さんは編集者と受講者の関係性のおもしろさを教えてくれた一人です。今後もよろしくお願いいたします。
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独立後のブランディングで悩んでいた萩原さんに、「自分が何者なのか」という大切さを伝えつづけてきたみずのさん。お二人の歩みは大きな実を結び、創作大賞入選という快挙につながりました。
noteは自分らしさを伝えることで、未来を切り開く場所だと教えてくれた対談でした。
追記:出版のお知らせ(2026.1.23)
本記事でも触れていた、萩原さんが創作大賞で入選した作品が、このたび書籍化となりました。以下のお知らせをご覧ください。
制作:ふたり広報(執筆・撮影:三浦えり / 編集:金井みほ)
