圧倒的な創作意欲に読者視点で伴走する。タキアユミさんが創作大賞を受賞し、書籍化を果たすまでの編集者との歩み
「ずっと文章が書きたかった。でも、ずっと書けなかった」
そう語るのは、アフリカを拠点にファッションデザイナーとして活動するタキアユミさん。長年、言葉を綴ることへの強い憧れと「自分には書けない」という呪縛の間で葛藤していた彼女が出会ったのが、個人の発信に伴走する「パーソナル編集者®」でした。
受講期間中に発表したエッセイ「セブンイレブンに憧れた少女がアフリカでデザイナーになる話」は、応募総数約7万件のなかから、note主催の「創作大賞2025」で双葉社文芸出版部賞を受賞。今秋には書籍化も決定しています。
華やかなサクセスストーリーのように思えますが、その裏側にはタキさんの気迫さえ感じさせる熱量で書くことへ向き合う日々と、担当編集者との濃密なやりとりがありました。
今回は、タキさんと担当編集者のみかんぬさんに、受賞までの舞台裏をじっくりと振り返っていただきました。

タキアユミ
1985年生まれ。鳥取県出身、ケニア在住。新卒でレコード会社に入社し、東日本大震災をきっかけに退職。世界放浪の5年を経て、アフリカの伝統的な生地「キテンゲ」と出会い、独学で服作りを始める。現在はアフリカを拠点に、ケニアのファッションブランド、ノマディック・アルティザンのデザイナーとして活躍。note創作大賞2025年エッセイ部門双葉社文芸出版部賞を受賞。
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みかんぬ
外資系人材会社で広報を経験後、2025年に広報・編集者として独立。パーソナル編集者として働きながら、企業向けの広報コンサルティング、コンテンツ制作なども行う。国家資格キャリアコンサルタントとして、カウンセリングやライフコーチもしている。プーさんとパフェが好き。
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アフリカで活動するデザイナーが40歳の節目に「パーソナル編集者」を選んだ理由

── タキさんが「パーソナル編集者」を受講したきっかけを教えてください。
タキ:10代の頃から文章や言葉にずっと憧れてきた人生だったんです。学生時代にフリーマガジンを創設するも続けられなかったり、世界へ旅に出たときも「旅をしながら雑誌を作ります」とクラウドファンディングまでやったのに頓挫してしまったり…。
デザイナーになってからは仕事が忙しく、書くことに手の回らない日々を過ごし、「書きたい」という強い想いだけがずっと自分の中にたまっていました。
そんなとき、40歳になる節目を迎えて、何か新しいことに挑戦したいと考えていたんです。
タイミングよく、弊社のインターン生だった松岡由布子さんが、SNSで「昨年新しく始めたことで、やってよかったこと第1位!」と、「パーソナル編集者」を受講した振り返り記事をnoteに投稿しているのを見かけて。その瞬間に直感で「これだ!」とピンときたんですよね。
サービスの詳細を細かく調べる前に、気づいたらお問い合わせをしていました。
みかんぬ:本当に、直感を信じて飛び込んでくださった感じでしたよね(笑)。
タキ:正直に言うと、申し込んだ時点で「これで書けるようになる!長年の夢だった書籍の刊行も叶うかも!」くらいに思っていました。ジムへの入会と同じで、「これで私は痩せる!」と満足してしまうパターン。
でも、みかんぬさんとの最初のセッションで、そんな幻想はすぐに打ち砕かれました(笑)。みかんぬさんは「これを書いてください」と指示を出すのではなく、「アユミさんが書きたいものは何ですか」と、私の心の奥にあるものをじっくり聞き出そうとしてくれた。
そのときに、「やばい。これは私が自分自身で考えて書かなくちゃいけないんだ」と気づいて、書くことへの覚悟が決まったんです。
そこからはもう必死で筆を動かし始めていました。そのとき書いたエッセイが、創作大賞の受賞作「セブンイレブンに憧れた少女がアフリカでデザイナーになる話」なんです。
創作大賞を受賞「セブンイレブンに憧れた少女がアフリカでデザイナーになる話」の誕生秘話

── タキさんが創作大賞に応募しようと思ったいきさつを教えてください。
タキ:「パーソナル編集者」に申し込んだあと、初めて創作大賞の存在を知りました。ついに本を出版できるチャンスが訪れたと運命じみたものを感じ、迷わず挑戦を決めました。
ただ、過去の受賞作や応募の規模感を調べていけばいくほど、私なんかでは絶対に無理だろうなと、どんどん萎縮してしまって。「創作大賞で大賞を獲りたい」なんて言うのが恥ずかしくて、最初はみかんぬさんにも伝えていませんでした。
みかんぬ:創作大賞を目指しているとは知らずにフィードバックしていましたよね(笑)。
タキ:で、ようやく2回目のセッションで「創作大賞に出してみようかなぁ…なんて」と探るように言ってみたんです。
そうしたら、みかんぬさんが「アユミさんは、たとえ創作大賞という機会がなかったとしても、いつか絶対に本を出す方ですよ」と本当に明るく言ってくださって。「本を出したい」という私の目標そのものを肯定してもらえた気がして、背中を押されました。
もし、みかんぬさんに出会えていなかったら、私は「どうせ無理」と諦めて、ひとりでモジモジと思いを抱えたまま、挑戦することすらできていなかったと思います。
── 受賞作「セブンイレブンに憧れた少女がアフリカでデザイナーになる話」の完成に向けて、お二人でどんなやりとりをされたのでしょうか。

タキ:私の「もっと突き詰めたい、ガッツリ添削してほしい」という熱量を早い段階で見抜いて、的確にフィードバックを届けてくれましたよね。
みかんぬ:アユミさんは最初から遠慮のないフィードバックを求めていると感じました。ただ、アユミさんの文章を読んだとき、フィードバックをしなくても本当におもしろかったんです。
すべての言葉に意図があり、一文一文にしっかり想いが込められている。だからこそ「これほど書けるアユミさんに、パーソナル編集者としての私ができることは何だろう」と考え込んでしまったほどです。
タキ:とにかく最初の読者として率直な感想を教えてほしいとお伝えしました。
家族や身近な人に見せると大絶賛してくれるけれど、関係性があるからこその反応もある。だからこそ、私のことをよく知らない、まっさらな視点で読んでくれる存在が、ものすごく貴重でした。

みかんぬ:アユミさんは、最初から表現したいことが明確にありつつも、ご本人が「言い過ぎかも…」と少し遠慮して、控えめに書かれている部分もありました。
だから私は、純粋に一人の読者の視点に立って、「ここが少しわかりづらいです」「ここの背景を、もっと教えてほしいです」ということをフィードバックしていきました。
タキ:例えば、創作大賞を受賞した記事の一部に、私の人生の大きな転機である震災で会社を辞めた場面があります。でも、自分にとって重要なシーンほど照れくさくて足早に書いてしまうクセがあって。
そこをみかんぬさんが「読者の感情として、ここはもっとアユミさんの気持ちを味わわせてほしい」と言ってくれましたよね。
最初から最後まで向き合ってくれたおかげで、迷うことなく創作に没頭することができました。
7,000字の長編を作品の強みに。二人三脚で最後まで突き詰めた創作

── そこまで創作に没頭するアユミさんの姿は、みかんぬさんの目にはどう映っていたのでしょう。
みかんぬ:「まだ足りない。とにかく突き詰めたいんです」と凄まじい熱量だったのを覚えています。だからこそ私も全力で、とことん付き合おうと腹をくくりました。
アユミさんのこだわりは、まるで終わりのない建築であるサグラダ・ファミリアで職人が繊細な彫刻を削り続けるように、自分が納得できる形にたどり着くまで細部を磨き続けるものでした。
タキ:締め切り直前まで、読んで、寝かせて、また読んでを、ずっと繰り返していました。みかんぬさんが伴走してくれなければ、途中で迷子になって辿り着けていなかったかもしれません。
── 創作大賞は毎年数万件もの応募がある狭き門です。タキさんはご自身のどの部分が評価されて受賞に至ったのだと思いますか。
タキ:コンテストは1本勝負ですよね。だから「読後感の爽快さ」は効いたのかもしれません。最初の数行でインパクトを与え、そこから迷子にさせずに一気に読ませ切ることができるように意識して書きました。
みかんぬ:1行目で読者の心を掴んで引き止め、そこからアユミさんの世界に入り込んでラストまでノンストップで駆け抜けたあとに、それまでの苦労がギュッと報われる。
あの「報われた感」の設計が、創作大賞でも評価されたのかなと思います。私には絶対に書けない、圧倒的な文章力でした。
── 受賞作は7,000字を超える長編でしたが、文字数への不安はありませんでしたか。

タキ:正直に言うと、こんなに長いと途中で離脱されるのではないかと、執筆中は本気で怯えて何度もみかんぬさんに相談していました。
みかんぬ:文章が長いというだけで読まない人は、たしかに一定数いると思います。
でも、気にし出すとキリがないですし、全員に読んでもらうために書こうとすると、どうしても苦しくなってしまう。だから「そこは割り切りましょう」とお伝えしたんですよね。
タキ:その言葉をいただいて、とても心が楽になりました。現代の流れから見れば、長文が敬遠されやすいのは事実です。でも結果として、私の作品においては、あの「長さ」自体が作品の凄みになってくれたように思います。
もしあのエッセイを世間のトレンドに合わせてコンパクトにまとめてしまっていたら、読んだあとの余韻の深さはもっと薄まっていたと思うんです。
読者の方にこれまでの私の人生を一緒に歩んで追体験してもらったからこそ、最後の結末の爽快感が深く刺さったのかなと今では思っています。
── 創作大賞の受賞が発表されたときのお二人のやりとりについて教えてください。

タキ:私、こう見えてとても真面目な性格なんですよ(笑)。noteの方から「公式発表まで絶対に他言しないでください」と言われたのを頑なに守って、みかんぬさんに受賞を黙っていたんです。
授賞式のために東京に着いたときも、連絡しようか猛烈に迷いました。「受講期間も終えてるし、連絡したら迷惑かな」とモジモジしているうちに、結局、受賞発表の当日を迎えてしまいました(笑)。
みかんぬ:「パーソナル編集者」主宰のみずのさんから、「アユミさん受賞してるよ!」と言われて初めて知ったんです。驚きましたけど、同時にすごく納得しました。
だって、受講期間にあれだけの熱量で作品と向き合い、ずっとコツコツと書き続けていたアユミさんを私は一番近くで見守っていましたから。
受賞をゴールにせず、書き続けるために。タキさんとみかんぬさんが描くこれから

── 創作大賞を受賞され、連載や書籍化など、エッセイストとしてスタートを切られたタキさんですが、この先どのようなビジョンを描かれていますか。
タキ:創作大賞の受賞は、素晴らしいきっかけをいただいたと思っています。ただ、今の自分はまだ、エッセイストとしての切符を手にしただけの状態。どんな世界でも同じですが、一番難しいのは「続けていくこと」ですよね。
世界を旅していたことや国際結婚をして海外で子育てしていることなど、自分の人生を軸にさまざまなテーマで書き続けていきたい。そしていつか、2冊目、3冊目という形で出版につながれば嬉しいです。
── みかんぬさんの受講者には、多様なバックグラウンドを持つ方が多く集まっています。一人ひとりと向き合ううえで意識していることはありますか。
みかんぬ:私の受講者は海外を拠点に活動されている方も多く、「自分はこれがしたい」という強いエネルギーを持って行動に移せるタイプの方ばかりです。だからこそ、そのエネルギーをどれくらい「書くこと」に向けたいのか、熱量のすり合わせを大切にしています。
私は、「書くこと」は人生を好転させていくための手段だと思っているんです。単に文章が上手くなることよりも、書くという手段を使って、その人が人生をどう切り拓いていくのかが大切だと思っています。
私はパーソナル編集者として受講者を誰よりも近くで全力で伴走し、支え続ける存在でありたいです。
── アユミさん、今秋刊行予定の書籍について教えていただけますか。
タキ:現時点では、創作大賞の受賞作品をはじめ、双葉社文芸総合サイト「COLORFUL」で連載しているエッセイ「明日死んでもいい、そう思えるほどに今日を生きたくて。」の内容、そしてnoteに書きためてきた作品を中心に、1冊にまとめる予定です。
私のこれまでの歩みがぎゅっと詰まった本になると思います。
みかんぬ:受講中に書き上げたあのエッセイが、1冊の本として世の中に送り出されることがとても嬉しいです。一人のファンとしてとても楽しみにしています。
タキ:みかんぬさんには完成した本を一番に読んでほしいです。あのエッセイを世界で最初に「おもしろい!」と受け止めて完成まで伴走してくれた。みかんぬさんがいなければ、受賞も、この本が生まれる未来も、何一つとして存在しませんでした。
もし、また私が立ち止まりそうになったときは書き続けるために「パーソナル編集者」を受講させてください。
みかんぬ:もちろん!いつでもお待ちしています。
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「自分には書けない」という呪縛を抱えてきたタキさん。「パーソナル編集者」との出会いをきっかけに、書くことに圧倒的な熱量を注ぎ続けてきました。そして、一番近くで伴走し続けてきたみかんぬさん。
二人の歩みは、創作大賞受賞、そして書籍化という大きな実を結びました。「書くこと」で新しい未来を切り拓けると教えてくれた対談でした。
