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【残唐五代史演義伝】第十九回 周徳威、将を遣わして黄巣を滅ぼさんとす

 晋王しんおうが諸侯たちと酒宴を楽しんでいる最中、中軍の『帥字旗すいじき』が三度揺れた。
 軍師・周徳威しゅうとくいはこれに気づき、すぐに軍士に問いかけた。
「その旗は風で揺れているのか?それとも無風でも自ら揺れているのか?」
 軍士は答えた。
「無風で旗が自ら揺れています」
 周徳威しゅうとくいはすぐに袖をめくり、占いを行い、晋王しんおうに告げた。
「この事態は不吉でございます。
 私は長安ちょうあんの方角に殺気が立ち上るのを感じました。
 今夜、必ず黄巣こうそうが軍を率いて我が陣営を夜襲しようとしております」
 晋王しんおうは驚き、
「それは一大事だ! どうすればよい?」
 と尋ねた。
 周徳威しゅうとくいは再び占いを行い、今度は微笑んで言った。
「ご安心ください、大王。
 これは唐主とうしゅの洪福がもたらした吉兆であり、黄巣こうそうが天下を再び唐に返そうとしているのです。
 黄巣こうそう長安ちょうあんに閉じこもり続ける限り、城門を攻め落とすのは困難ですが、今夜の夜襲は我らに大勝利をもたらす絶好の機会です。どうか大王の御剣を私に賜り、すべての軍を指揮させてください。
 まず軍を引き揚げ、霸陵川はりょうせんの陣地を空にして伏兵を設けます。
 次に陣営に残した数匹の羊を吊し、餓えた馬に鈴をつけて鳴らさせ、まるで兵がいるかのように見せます。
 黄巣こうそうが陣営に入ると、空陣に驚いて混乱し、退却するでしょう。
 空が白み始めた時、中軍が合図の号砲を放てば、四方に伏せていた我が軍が一斉に攻撃を仕掛けます。
 その時こそ黄巣軍こうそうぐんを全滅させ、片甲も残さず討ち取る絶好の機会です!」
 晋王しんおうはこの計略を気に入り、すぐに腰の宝剣を解き、周徳威しゅうとくいに渡した。
「御剣はここにある。諸侯、十三太保、すべての軍をあなたに託そう。
 もし誰かが命令に逆らったならば、その場で斬首し、全軍に示せ」
 周徳威しゅうとくいは剣を受け取り、ただちに命令を下した。
「大王は十万の兵を率い、南側に伏兵を設け、夜明けの号砲が鳴るまで動いてはなりません。
 号砲が鳴ったら、すぐに攻撃を仕掛けてください」
 続いて、彼は各方面に指示を出した。
 大太保・李嗣源りしげん様、二太保・李嗣昭りししょう様は十万の兵を率いて北側に伏兵を設ける。
 鄆州うんしゅう赫連鐸かくれんたく様、華州かしゅう韓鑑かんかん様、曹州そうしゅう曹順そうじゅん様、兗州えんしゅう周順しゅうじゅん様は十万を率いて東側に伏兵を設ける。
 十一太保・康君利こうくんり様、十二太保・李存信りそんしん様は十万を率いて西側を固める。
 周徳威しゅうとくいは諸将に告げた。
「誰であれ黄巣こうそうを私放し、逃がそうとする者は即刻斬首に処す」
 将軍たちは声をそろえて承諾し、それぞれ伏兵の準備に向かった。

 この様子を見ていた李存孝りそんこうが前に進み、ひざまずいて言った。
「軍師、すべての伏兵が決まりましたが、私にはどこで働けというのですか?」
 周徳威しゅうとくいは冷静に返した。
「将軍、決してあなたを軽んじているわけではありません。
 しかし、あなたは勇猛すぎるがゆえに、謀を重んじるこの戦いでは適役ではありません。
 兵法にも『名将とは勇だけでなく謀に長けているべし』とあります。
 今回は軽々しくあなたを起用することができないのです」
 李存孝りそんこうは納得せずに言った。
「それならば、軍令状を立てます!
 もし私が黄巣こうそうを討ち取れなければ、この首を差し出します!どうか私を使ってください」
 周徳威しゅうとくいは喜び、李存孝りそんこうに言った。
「よし、そこまで言うならば命を託しましょう。
 ただし今回の任務は重要です。黄巣こうそう以外の将の首は不要。黄巣こうそうの首を必ず持ち帰るのです。
 将軍は六将と三千の飛虎兵を率い、長安ちょうあん大道の密松林に伏兵を構えるのです。
 号砲が鳴るまでは絶対に動かず、黄巣こうそうが罠にかかるのを待ってくだされ」
 李存孝りそんこうは喜び、命令を受けて三千の飛虎兵を率い、ただちに出発した。


 このような詩がある。

徳成授計勇南公 兵伏長安大道中
周徳威しゅうとくい李存孝りそんこうに妙策を授け、長安ちょうあんへ続く街道に兵を忍ばせた)
天使黄巣来送死 劫営半夜入牢籠
(天は黄巣こうそうをこの死地へと誘い寄せた。彼らは夜半に襲撃を仕掛けたが、牢のごとき包囲の中で滅びる)

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