循環器初学者向け-第2回-前負荷・後負荷・収縮力を感覚で理解する!
難しい言葉を「動き」でつかむ!
循環の話でよく出てくる「前負荷」「後負荷」「収縮力」。
どれも教科書では見たことがあるけれど、
実際のリハビリでどう活かせるのか、イメージしにくい言葉かもしれません。
でも、これら3つは心臓リハビリの基本であり、
“循環を読む”ための土台になります。
今回はリハ場面での具体例を交えながら、
この3つを“感覚でつかむ”ことをめざして整理していきます。
1. 前負荷=心臓に戻ってくる血の量
心臓はポンプのように血液を送り出していますが、
その前に「どれだけ血が戻ってくるか」で動き方が変わります。
この戻ってくる血の量を“前負荷”といいます。
血液がしっかり戻れば心臓はよく膨らみ、強く収縮できます。
逆に戻りが悪いと、ポンプの中の“水”が足りず、
全身への血流が減ってふらつきや倦怠感が出やすくなります。
リハビリで見られる場面
朝の離床直後や利尿薬投与後:体液が減り、立位で血圧が下がる
初回離床や長時間臥床後:下肢筋ポンプが働かず、静脈還流が少ない
急な体位変換:血液が下肢に落ち、前負荷が一時的に減る
こうしたときは、起立前に足関節運動や下肢の軽い収縮を入れるなど、
「血を戻す工夫」をすると安定しやすくなります。
つまり、“前負荷を整えてから動かす”ことが安全なリハの第一歩です。
2. 後負荷=心臓が押し出すときの抵抗
後負荷は、心臓が血液を全身に送り出すときに感じる“出口側の抵抗”のことです。
ホースの先を狭めると水を出すのに力がいるように、
血管が収縮していると心臓の仕事量は増えます。
リハビリで見られる場面
息こらえ(排便、起き上がり、ズボン上げなど):胸腔内圧が上がり、後負荷が急上昇
強い抵抗運動や下肢の同時収縮:血圧が上がり、心臓の負担が増す
寒冷刺激や緊張・不安:交感神経反応で血管収縮、血圧上昇
入浴や温熱後:末梢血管が拡張し、後負荷が下がって血圧が下がりやすい
リハ中に顔が赤くなったり、呼吸が止まっていたり、
血圧が想定より高くなるときは「後負荷が上がっている」と考えましょう。
“息を止めずに動く”こと、それだけでも循環の負担を大きく減らせます。
3. 収縮力=ポンプそのものの力
収縮力は、心筋が自分で生み出す“押し出す力”のことです。
心筋梗塞などで筋肉が傷ついたり、β遮断薬で収縮が抑えられたりすると低下します。
リハビリで見られる場面
運動しても脈が上がらない
軽い体動で血圧がすぐ下がる
息切れや倦怠感が強い
これは“ポンプの出力”が限界に近いサインです。
無理に負荷を上げず、運動後の回復の速さを観察しながら進めることが重要です。
4. バランスを読むのが「循環を見る」こと
循環は、前負荷(戻る血)× 収縮力(押し出す力)÷ 後負荷(抵抗) で成り立っています。
この3つのバランスが少し崩れるだけで、体の反応は大きく変わります。
利尿薬を使ったあとや発汗が多い日は前負荷が下がり、
立ち上がるとふらつきやすくなります。
息こらえや強い抵抗運動では後負荷が上がり、
血圧が跳ね上がったり胸部圧迫感を訴えたりします。
β遮断薬を服用している人では収縮力が抑えられ、
脈が上がりにくく、少しの運動でも疲れやすくなります。
このように、数字だけでなく体の反応から「どこが変化しているか」を読むことが、循環を理解するということです。
血圧や脈拍がいつもと違う動きをしたら、
「今は前負荷?後負荷?それとも収縮力?」と考えてみてください。
そうやって循環のバランスを読む力がつくと、
リハビリを“安全に止める”だけでなく、“安全に進める”判断もできるようになります。
まとめ
前負荷・後負荷・収縮力は、心臓の働きを支える3つの柱です。
前負荷:戻る血を整える(足を動かして循環を助ける)
後負荷:押し出しを邪魔しない(息を止めない・いきまない)
収縮力:心臓の力を尊重し、無理に負荷を上げない
循環を見るとは、数字を追うことではなく、
“体の反応としてバランスを感じ取ること”。
その感覚を身につけることが、心リハの理解への第一歩です。
