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火事ばか 追記

先日、たまたまW君と会う機会があった。
君のことnoteに書かせてもらったよ、と告げた。
彼は、ああ、あのことねえ、という顔をする。

「最近はどう?」

僕が尋ねると、ほんの数日前、妙なことがあったらしい。


W君は電車に一本乗り遅れて焦っていた。
このままでは会社の朝礼に参加できない。
最寄り駅でなんとか電車に飛び込んだものの、ドアが閉まらない。

「急行待ちをいたします。しばらくお待ちください」

車内に無常なアナウンスが流れた。
W君の最寄り駅には各駅停車しか止まらない。
会社までは五駅もある。
朝礼に参加しないと上司からの信用を失ってしまう。

(ああ、くそっ!)

胸中で舌打ちし、目をつぶった。
いらいらして、つい電車のドアを少し蹴ってしまった。
するとすうっと電車が動いた。
気付くと、いつも間にかドアが閉まっている。
あれ、と思う間もなく車内にアナウンスが流れた。

「次は○○駅、○○駅です」

W君は呆気にとられた。
車掌は、W君が降りる駅の一つ手前の駅名を告げたのだ。
車窓から風景を見ると、確かに見覚えがある。

まさか、と思い腕時計を見た。
さらに呆気にとられた。
時間にはまだ余裕があった。

W君は、一本乗り遅れていないことになっていた。
かくしてW君はいつもの時間に駅に着き、
いつもの時間に会社に着いた。


どんなに首をひねっても、
自分の身の上に起こったことを理解できなかった。

「理解できますか?」

W君が僕に訊いた。

できるわけないだろっ。




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