眠る女
会社からかえる時に起こった小さな出来事。
僕は地下鉄に乗っていた。
僕が帰る時間は電車もすいているので、
容易に座席をキープできる。
座ったままで、二駅ほど。
なぜかすぐには気づかなかったのだが、
隣に女性が座っている。
25歳くらいのキャリアウーマン、といったふうだ。
黒いパンツスーツを着ていて、髪が黒く、長い。
こっくり、こっくりと頭が揺れている。
居眠りをしているのか、と思った時、
その人はゆっくりと僕にもたれかかってきた。
こうなると男の心理としてはひとつ。
顔が見たい。
そう思い、僕は彼女の長い髪の隙間から顔を覗き見た。
ぎくりとした。
髪の隙間から覗いたその人の目はしっかりと開かれており、
横目で僕のことを凝視していた。
眠っていなかったのだ。
一瞬で全身に鳥肌が立った。
ただそれだけの話。
