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姿見 その1

Uさんには、魅力的な粗大ゴミを拾ってくるという悪癖がある。

「ちょっと手を入れればまだまだ使えるものが、
平気で捨てられているので。もったいないなあ、と思って」

消費社会に警鐘を鳴らす、というのがUさんの口癖だ。
テレビやビデオ、電気スタンド、座椅子、小さなテーブル。
Uさんの部屋は拾ってきた家具でコーディネートされている。


そんなUさんはある日、
年頃の女性にとってありがたい拾い物をした。
姿見だ。


Uさんの家からそれほど遠くない場所に、
粗大ゴミの集積所がいくつかある。
Uさんはそこをちょくちょく覗き、
掘り出し物がないかチェックしている。

その姿見は、いつもはあまりいい出物がないところに、
ブルーシートに覆われて捨てられていた。

「一目見てピンときたんで。夜を待って拾いに行きました」

ブルーシート越しの感触で、
それは1メートル50センチくらいの姿見だとわかった。
Uさんはゼーゼー言いながら大汗をかいてそれを持ち帰り、
六畳のリビングでブルーシートをはずした。
鏡の部分は縁が多少かけていたりするものの、
周りの木枠には緻密な彫刻が施されており、
一見して良質な木材でできているのがわかる。

「すごくいいもの拾っちゃったな、って。
あたしツイてるかも、と思いました」

もちろん姿見はその日からUさんのものとなった。


それから一週間と日を置かず、Uさんの体調に変化が現れた。

「夜、寝ている時に激しく咳き込むようになったんです」

眠っていても、自分の咳で目が覚めてしまう。
しかしこれはさすがにUさんも姿見のせいだと思った。
あきらかに姿見を部屋に置いて、
しばらくしてから症状が出たからだ。
何せゴミ捨て場から拾ってきたものだ。
ハウスダストが原因だと思ったUさんは、
中性洗剤を浸したスポンジでごしごし洗い、
乾燥させたあとオリーブオイルを木枠にすりこみ、磨き上げた。
姿見は、拾ってきた時とは比較にならないほど美しくなった。

「これで大丈夫、と思ったんですけど」

眠るとまた咳き込んでしまう。

もう一つある。
これも寝ている時だけなのだが、
息が激しく乱れることがある。


はあはあはあはあはあはあ。


耳障りな息遣いで目が覚める。
起きると汗をたっぷりかいている。
これでは安眠も難しい。
Uさんは非常にストレスのたまりやすいタチで、
任されている大きな仕事が佳境に入っていたこともあり、
一時的に精神的抑圧を感じているのかも、と思った。
その時期、Uさんは定期的に心療内科にも通っていた。

ある夜。
Uさんは激しい金縛りにあった。
<つづく>




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