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幽霊について その2

そんなはた迷惑な友人Kと、今から十五年ほど前によく遊んでいた。

Kは前述したような感じのことをちょいちょい口走る。
初対面の人間のアパートに訪れた時でも、

「ああ、この押入れ。あんまりようないな。
 閉める時はピタッと閉めへんと、隙間から這い出てくるで」

なんてことをしれっと言って素早く部屋を出てゆく。
はた迷惑な男なのだ。

そんなKと付き合っていたので、霊感がまったくない僕にも

『なんだかよくわからないけど嫌な感じ』

というのはなんとなく掴めるようになっていた。


兵庫県の六甲山にはどうやら出るらしい、
というのは関西ではわりとメジャーな話だ。
六甲山にまつわるそっち系の都市伝説はやたらと多い。
昼はデートスポットとして、夜は心霊スポットとして有名な場所なのだ。

ある夜、僕は友人Tに誘われるままにドライブに出かけた。
場所は六甲山。
当時は暇だったし、助手席に座って気の合う仲間と二人でバカ話や恋愛話に花を咲かせるのも好きだった。
そして何より、

(霊感の強いKがいないから、幽霊も寄ってこないだろう)

とタカをくくっていたのだ。


そして深夜の二時頃。
ロードマップを何度も見直しては、
舗装もろくにされていない山道を行きつ戻りつ。
完全に迷っていた。
迷走は一時間以上も続き、
バカ話や恋愛話などしている余裕など微塵にもない。

ほどよくストレスも溜まった頃、唐突に視界がひらけた。
少し広い、展望台のような場所に出られたらしい。
緊張感がすっとほぐれ、僕達二人は車外に出て大きく伸びをしながら夜気を吸った。
そしてTはちらちら光る市街地の灯りとロードマップを見比べ、
帰る方向の見当をつけていた。五分ほどするとTは、

「そうかそうか。こっちか」

と呟いて車内に戻った。
僕も続いて助手席に座った。

それから十五分も走っていなかったと記憶している。
エンジンが唸るような、悲鳴を上げるような音を立てはじめた。
下り坂である。
車内にいるのは二人だけ。
しかしTは、

「男六・七人乗せて、なおトランクに米俵を満載した状態で二十五度の傾斜   を登っているような」

重さだと表現した。
その時点で僕は完全に、

『なんだかよくわからないけど嫌な感じ』

の苦さを口いっぱいに頬張っていた。


エンジン音は唸るばかりで、回転数は上がるがスピードは出ない。
Tは黙りこくっていた。

「ふわ~あ」

欠伸をして首の間接を鳴らすふりをしながら、
僕は前部座席と後部座席のドアがロックされているか、
そしてすべての窓がきっちりと閉められているかを素早く確認した。
何というか、本能がそうさせたのだ。

うんうんとお産のように苦しげに唸りながらも、
やがて車はなだらかで新しく舗装された道路に出た。
もうすぐだ。もうすぐ町だ。
僕はカーラジオから流れるバカバカしいポップソングをハミングで軽妙に口ずさみながら、
心の中では一心に南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏と唱えていた。
<つづく> 


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