キジムナー その1
僕は沖縄が大好きだ。
できれば永住したい、なんて思っているのだが、
現実的にそれがなかなか厳しいので毎年沖縄旅行に行く……のも厳しいので、
沖縄料理が食べられる居酒屋さんに行く。
ひいきにしているお店は「うりずなー」という名前で、
空手何段という鋼鉄のような身体をしたおじいと、
コロコロ太ったかわいいおばあがやっている。
沖縄出身のこの二人の話がおもしろいので、
常連客は多い。
僕もその一人で、最近ではキジムナーの話を聞いた。
キジムナーとは、沖縄の民話などに古くから伝わる妖怪だ。
沖縄では非常にメジャーな存在で、
観光客向けの土産屋ではTシャツのイラストや、
菓子のパッケージや携帯ストラップのマスコットなど、
あらゆる土産物にその姿を見つけることができる。
土地の伝承によって容姿や行動に微妙な差はあるが、符合点も多い。
五歳から十歳くらいの少年の姿。裸。赤い髪。赤黒い肌。ぎょろりとした大きな目。
子供好きでいたずら好き。ガジュマルの木にぶら下がって遊ぶ。
ガジュマルの木の根元にうずくまり、砂遊びをする。
ガジュマルの木の根元に砂で小さな階段を作ると、
翌朝には足跡が残っていることがある。
基本的に害はないが、
馬鹿にしたりからかったり罰当たりなことをすると恐ろしい報復をされる。
妖精と妖怪。精霊と魔物。実体と霊体。崇拝と畏怖。その中間の存在。
しっかり調べたわけではないので無責任なことは言えないが、
そういった存在らしい。
このおばあとおじいは、
沖縄のまったく違う土地で生まれ育った。
しかし二人ともキジムナーと会っている、らしい。
その話が興味深い。
どこが興味深いか。
二人の話から受けるキジムナーの印象が、
大きく乖離しているのだ。
おばあの話からはあたたかさを、
おじいの話からは恐怖を感じた。
おばあの話はこうだ。
彼女が十歳くらいの頃、海岸でヤドカリを採って遊んでいた。
すると砂浜の向こうから、真っ黒に日焼けした少年が歩いてくる。
あばらが浮いて見えるほど、少年はがりがりに痩せていた。
燃えるような真っ赤な髪をしていた。
ぼうっと少年を見ていると、目の錯覚か、
少年は陽炎のように消えたり現れたりした。
気づくと、1メートルくらい近くまで来ていた。
<つづく>
