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追伸 その3

ある雨の日。

G君は駅で電車待ちをしていた。
唐突に携帯が鳴った。
見たこともない番号だった。

「Sからの電話だった。名乗らなくてもすぐわかったよ」

おい、というG君の制止を無視して、
S君は淡々と引継ぎをはじめた。
しばらくの間、G君は黙って聞いていた。
しかしS君が『……本当にすみませんが』と言った瞬間、
G君はブチ切れた。


「てめえいい加減にしろよっ‼
なに死んでまで謝ってんだよ?
てめえはなあ、もう働かなくていいんだよ!
もう休んでいいんだよっ!
引継ぎなんか気にしてんじゃねえよバカ!
とっとと寝ちまえッ‼」


ホームにいた人間全員が、
狂人を見る目でG君を睨んだ。
S君は電話の向こうで黙り込んでいた。
そしてぽつりと『……ごめんなさい』と言った。
消え入りそうな声だった。
G君の脳裏に、
受話器を持って小さくなっているS君の姿がありありと浮かんだ。

「……いや……それからな、S」

G君は深呼吸してこう言った。

「前も言ったけどおまえ、
まず俺に電話してこいよ。俺、
おまえのメンターなんだからさ」

五秒ほど沈黙が続き、電話は切れた。

「電話は切れたんだけどさ。その後も声が聞こえたな」


ありがとうございました、と。


G君の話だと、
それは飛行船からのアナウンスのように高い場所から聞こえたという。
周りに聞こえていないのが不思議なくらい、
はっきりとした声だった。

それ以来、S君からの電話はない。


「よかったよ。あいつからかけられた最後の言葉が“ごめんなさい”じゃなくて」

そうG君は言い、
最後に「ほんとは俺がどなられたいくらいだよ」と結んだ。



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