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お守り その3

「ね、怖いでしょ」

「怖いね」

K君は角を曲がると猛然とダッシュした。
マンションに帰り着くまでに、何回も後ろを振り返った。
部屋に飛び込み、鍵を閉め、
ドアにチェーンをかけてはじめて人心地ついた。

ふと。

異臭がした。

最初は何の匂いかわからなかった。
どこから匂っているかもわからなかった。

「電気を点けて、部屋のあちこちを歩き回って。
 どこからも匂うんです。それこそ、部屋全体から」

そしてK君は気づいた。

異臭を放っているのが自分であることに。

「正確には僕のカバンからです」

焦げ臭いのだ。
K君はタバコを吸わないので、
もちろんカバンの中に火の気はない。
K君はカバンの中身をベッドの上にぶちまけた。

匂いの正体はすぐに判明した。


「お守りだったんです。これですよ」

K君は、例のお守りをつまんでぶらぶらさせた。
そして結わえられた紐をほどくと、
お守りの中身を引っ張り出した。

「木の板が入っていたんですけどね」

真っ黒に焦げていた。

「外側の布もね、最初は黄緑色だったんです。
 その夜カバンから出した時には、この色になってました」

K君は木片をお守りの中に入れると、大事そうにカバンにしまいこんだ。

「K君はどう解釈するの?」

「どうって?」

「お守りさ、力使い果たしたのかな」

「そうなんですかね」

「持ってなかったらK君、どうなってたのかな」

K君は、わからない、と言った。
もちろん僕にもわからない。
ただ、皿に残った鳥皮の串にはもう手をつけたくない。
それだけが暫定的な事実だった。


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