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寺で見た“それ” その2

すると、またも廊下が現れた。

今度もまた様子が違っていた。

突き当りまでは十メートルくらい。
高い天井から蛍光灯が吊るされているのはさっきと変わらない。
ただ、廊下の左右に部屋がいくつもあるのだ。
一つ一つは四畳くらいの広さ。

そしてそれらの部屋には、
座敷牢のような木の格子がはめられていた。

つまり格子越しに部屋の中は丸見えである。
格子の木は太く頑丈そうだが、
かなり古く、黒く燻されたような色をしていた。
それは刑事ドラマなどで見た、
刑務所を思わせる光景だった。

僕はどきどきしながら廊下を進んだ。

いずれの部屋も空っぽだ。
中には何もない。
と、思っていたら。

あった。
最後の部屋、廊下の突き当たりの、右側の部屋にだけ。

それは、ぼろぼろに錆びた槍だった。
先端が三叉になった槍が一本、
無造作に壁に立てかけられていたのだ。

槍は子供の手首くらいの太さの鎖でぐるぐる巻きにされていた。
その鎖の先は、太く頑丈そうな木の柱に深々と打ち込まれている。

ぞくりと震えがきた。

柱の、鎖の打ち込まれた辺りに、
無数の細かな亀裂が入っていたのだ。
何かはわからない。
しかし、明らかにその太い鎖は、
途方もない力で引っ張られたことがあるようだった。

そしてもう一つ、僕を戦慄させたもの。
お札だ。
槍の全体にびっしりと、
経文めいた言葉が書かれたお札が何十枚も貼られていたのだ。
そのほとんどは筆を使い、行書体のような崩した字で書かれていたので、
幼い僕にはなんと書かれているか全然わからなかった。

ただ二文字だけ、はっきりとわかる漢字があった。
『禁』
という文字。

そして、
『呪』
という文字。

なんだ。なんだこの威圧感。
僕の体中の危険感知物質がアラームを鳴らしていた。

<ココニイテハイケナイ>

そう思った刹那、全身に鳥肌が立った。

僕は振り返らず、突進するように出口に向かって走った。
光の差す方へがむしゃらに走ると、すぐに外に出た。
安堵感でほとんど泣きそうになっていた。
僕の鬼気迫る表情を見て、
大きな銀杏の木の下でタバコを吸っていた父が変な顔をした。
そしてすぐにやりと笑い、

「寺では悪さすんなよ」

と言った。
僕も顔を変な具合にゆがめ、なんとか少しだけ笑った。


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