イモトのWiFiの決断力──市場適応力で生き残る戦略
はじめに
先のコロナ禍はまさに予測不能な危機に直面した際の対応力が企業の生死を分かちました。
従来のビジネスモデルに固執した企業は消え去り、状況に柔軟に対応できた企業は逆に大きく業績を伸ばしました。
業績を大きく伸ばした企業の代表例として「イモトのWiFi」が挙げられます。
旅行業の危機と迅速な事業転換
イモトのWiFiを展開しているエクスコムグローバルは、もともとは海外旅行者向けのモバイルWiFiレンタルサービスを生業としていました。
しかし、コロナ禍で海外渡航が制限され、業界全体が未曽有の危機に陥ります。
この環境変化によって、実に売上の98%が減少するという憂き目にあいます。
この時、エクスコムグローバルはどんな手に打って出たのか。
彼らは「旅行業の回復を待つ」のではなく、自社の強みを活かして実に迅速に新規事業に転換します。
同社は、医療法人「にしたんクリニック」のマーケティングや経営戦略の支援を行い、PCR検査サービスの立ち上げをサポートしました。
エクスコムグローバルは、WiFiレンタル事業で培った予約管理・物流・カスタマーサポートのノウハウを活用し、PCR検査の申し込みから結果通知までのプロセスをスムーズに運営できる体制をあっという間に構築しました。
この迅速な事業転換により、PCR検査サービスは大きな成功を収め、多い時には1日1億円以上の売上を記録することもあったようです。
自らのアセットがこの緊急時にどう役立てることができるかを柔軟にとらえ実行する力が会社を救ったのです。
企業が生き残るための市場適応力とは
イモトのWiFiの事例から見えてくるのは、単なる「対応力」ではなく、市場適応力の重要性です。
ここでは、企業が変化に適応するために必要な要素を整理します。
1. 迅速な意思決定
変化の激しい市場では、意思決定のスピードが企業の生死を分けます。
エクスコムグローバルは、旅行業が回復するのをじっと待つのではなく、PCR検査市場へ転換する決断を迅速に行いました。
このスピード感がなければ、同社の存続は難しかったでしょう。
2. 柔軟な発想
PCR検査の需要が急速に高まる中、エクスコムグローバルは自社の強みが活かせるという発想に最短でたどり着くことができました。
これは意思決定に柔軟性がない大企業には不可能なことです。
また発想の転換を考えられる柔らかい頭が経営陣にあるかどうかという点も、我々は再点検したいものです。
3. リソースの再活用
エクスコムグローバルは、全くの新規事業を立ち上げたわけではなく、これまでの旅行業のノウハウ(予約管理、物流、カスタマーサポート)をPCR検査事業にみごとに転用しました。
このように、自社資源の価値を理解し、フレームワークとしてとらえることでスムーズな事業転換に成功しました。
他企業の対応との比較
エクスコムグローバルの市場適応力をより深く理解するために、コロナ禍での他企業の対応を比較します。
例えば、星野リゾートは「マイクロツーリズム」という新たなコンセプトを打ち出し、遠方旅行が困難な状況下で近場の観光を活性化させました。
これもまた、市場の変化を的確に捉えた成功例です。
一方、菅義偉元首相のコロナ禍での対応は、決断のスピードが遅いと指摘されることが多いです。
彼は官房長官としての調整能力は高く評価されていました。
しかし、首相としては環境変化に対する迅速な政策実行には欠けていました。
先日も、超氷河期世代に就職難に見舞われた30~50代の就労支援やリスキリングなどの対策を政府が出しましたが、これこそがまさに対策が後手に回った火消しの対応に他なりません。
企業であればあっという間に倒産していた遅々たる対応の恒例です。
環境変化への迅速な対応は、企業よりもむしろ政治の世界のほうがより強化すべき能力なのだと思います。
市場適応力こそ生存戦略の鍵
イモトのWiFiの事例は、「市場適応力」が企業の存続を左右することを示しています。
企業が生き残るためには、変化への迅速な対応、市場のニーズを捉える力、そして既存リソースの再活用、そしてそれを実現する柔軟性を備えていなければなりません。
これはコロナ禍だけに限らず、イノベーションを考える上でも重要な視点です。
これからの企業には、市場の変化を先取りし、新たな価値を創造する起業型リーダーが求められるでしょう。
