子どもとの外出、だいたい戦場
玄関の床って、なんであんなに冷たいんだろう。
靴下の裏に細かい砂が張りついて、チクチクする。
片方だけ脱げた靴下が、玄関の端で丸まってる。ドアノブに手をかけた瞬間、聞こえる。
「ちがう」
開始0秒でボス戦。
親の脳内に【イベント発生】の文字が出る。
最初に言っておきます。
外出で詰むのは当たり前。
ムカつく日があっても当たり前。
親が悪いのではありません。今日がハードモードなだけです(笑)。
①玄関:靴を履く直前に世界が終わる
玄関マットの上。
片方の靴を履かせた瞬間、子どもの目が細くなる。
急に賢者の顔。
「ちがう」
ちがう、って何が。
靴は靴だろ!!
こっちはもう片足の靴を持ってる。
手の中で靴がだんだん重くなる。鉄アレイみたいに。
子どもは座り込んで、足を引っ込める。
その動きだけやたら俊敏。
さっきまでゴロゴロしてたのに。
ここで恐らく親がやってしまいがちな失敗例。
それは【長文説明】
「それじゃないならどれがいいの?」
「今日はこっちだよ?」
「もう時間ないよ?」
説明が長いほど、子どもの気持ちは固まる。
親の顔が「頼む…!」になった瞬間、相手は察して固まる。
なので言葉を短くする。
「どっち?」
世界を二択に縮める。
赤い靴か、黒い靴か。
選ばせるというより、世界を小さくして落ち着かせる。
それでもダメな日はある。
その日は、抱っこで玄関突破。
勝利条件を「出発」に変える。
運営判断。勇者の撤退。
②出発:だっこ要求という名の強制イベント
外に出た瞬間、風が強い。
髪が顔に当たって、目がしぱしぱする。
車の音、自転車のベル、遠くの犬の声。
世界がいきなりうるさい。
次の瞬間。
「だっこ」
出た。必殺技。
玄関であれだけ抵抗したのに、ここで急に甘える。
タイミングだけプロ。
抱っこすると、体温がじわっと腕に広がる。
あったかい。そして重い。
肩が、わずかに沈む。
ここでのコツは、気合じゃない。
抱っこを敗北として扱わないこと。
親の口から出す言葉も固定。
「30秒だけね」
でも、30秒では終わらない。腕取れちゃう。
③店:買う!買う!買う!の三連コンボ
自動ドアが開く。
その瞬間、子どもが見つける。
カラフルなパッケージ。
目が光る。
指が伸びる。
「これ!」
次。
「これも!」
次。
「これも!!!!」
三連コンボ。
しかも抱っこしながら買い物だと、だいたいこうなる。
片手に子。片手にカゴ。手のひらに汗。
レジが遠い。通路が狭い。
腕がつりそう。ついでに心もつりそう。
ここで詰む原因は、店内で会議が始まること。
親が説明を始めると、子も議論モードになる。
だからルールは入店前に短く。
・買うのは1つ
・今日は買わない日
言葉も短く。
「1つ」
「今日はなし」
それでも崩れる日はある。
床にぺたん。背中が反る。声が天井に届く。
周りの視線が点描画みたいに刺さる。
その時の必殺技は、説得じゃなく回収。
抱えて外に出る。
外の空気は冷たい。頬が少し痛い。
子の泣き声も、ほんの少し丸くなる。
ほんの少しだが、それで十分な日がある。
④移動:走る・飛び出す・迷子ごっこ
突然ダッシュ。
走る。
飛び出す。
こっちを見る。ニヤッ。
迷子ごっこ開始。
親の心拍が上がる。
喉が一瞬で乾く。
声が出そうになる。
「待って!!!」
これ、出した瞬間にゲームが始まることがある。
追いかけっこに変換されるやつ。最悪。
なので、自由ゾーンと手つなぎゾーンを分ける。
世界に線を引く。
線があると、親も子も迷いにくい。
詰んだら、親の足を止める。
実況より運営。
声量を上げる前に、親の動きを止める。
止まると、子も振り返る確率が上がる。体感。
⑤待ち時間:静寂が破られるまでのカウントダウン
病院の待合室。
椅子が固い。
時計の秒針がやたら大きく聞こえる。
最初は静か。
それが怖い。
静かすぎると、次に来るものが分かる。
子どもの足がぶらぶら。
指が椅子をトントン。
視線があちこちに飛ぶ。
そして、爆発の前兆。
待ち時間で詰むコツは、武器を持ちすぎること。
選択肢が多いと、親も迷う。子も迷う。
迷いは興奮の燃料。
だから武器は3つだけ。
・シール1枚
・指あそび
・数える
見通しは時間より回数が強い。
「あと3回呼ばれたら終わり」
数字が見えると、脳内にゴールが置ける。
置けるだけで、爆発の導火線が短くなる。
詰んだら、小休憩を先に入れる。
「一回外の空気吸お」
待たせ続けるほど爆発が育つ。育つな!!
⑥公園:帰らない、帰らない、帰らない
滑り台の階段。
子どもは何回目か分からない往復をする。
夕方のチャイムが遠くで鳴る。
胸がきゅっとする。
こっちはこの後のステージを知ってる。
帰宅→ごはん→風呂→寝かしつけ。別ボスが待ってる。
言う。
「帰ろっか」
返ってくる。
「まだ」
まだ、は強い。
終わりを拒否する呪文。
親の心が一瞬で小さくなる。
ここは終わり方を先に決めると絵が変わる。
「あと3回」
滑り台3回。ブランコ10こぎ。
数字があると、終わりが見える。
それでも無理な日はある。
その日は撤退。
抱えて帰る。
子の汗と土の匂いが服に残る。
⑦帰宅:手洗いが最終試練になる謎
家の玄関。
安心するはずなのに、第二戦場になる。
「手洗お」
「イヤ」
靴も脱がない。
床にごろん。
なぜか床が一番好き。
外であれだけ動いたのに、まだ動ける。意味が分からない。
ここで親がやると詰むやつ。
追撃。
外出で削れたHPのまま、さらに殴り合いを始める。
両者HP1で殴り合うゲームほど悲しいものはない。
だから、工程を減らす。
言葉も減らす。
「手」
それだけ。
できたらラッキー。できなくても死なない。
⑧最後に:外出の勝利条件
外出の勝利条件はこれで十分だと思っています。
①家を出た
②大事故なく帰った
③親のHPがゼロじゃない
困る瞬間を全部潰そうとすると、必ず疲弊します。
今日よく出てくる敵を1匹だけ減らす。
とりあえずそれだけで次の外出がちょっとラクになりますよ。
