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「リズム感」について(応用)

前回の記事では、リズムは時間と強弱が組み合わさって生まれることを学びました。

今回は、さらに踏み込んで学んでいきます。

ピアノで音を強く聴かせる方法は、打鍵を強くすることだけではありません。音量を上げなくても、音価をわずかに引き延ばすことで、その音に強い印象を与えることができます。なので、楽譜に記された音価を機械的に守るのではなく、拍やフレーズの流れを保ちながら、実際に響いている時間を繊細に調整する。この視点を持つと、リズムは、どの音にどれだけの時間を与えるかという、音楽の重心を設計する問題として見えてきます。


ピアノの音は、鳴った瞬間から減衰する

ピアノでは、鍵盤を押すとハンマーが弦を打ち、その直後から音は減衰していきます。弦楽器の弓や管楽器の息のように、発音後もエネルギーを加え続け、クレッシェンドすることはできません。ペダルによって響きを残したり、共鳴を加えたりすることはできますが、一度打鍵された音そのものの音量を、途中から増大させることはできないのです。

この性質から考えると、ピアノで音量を強調するには、発音の瞬間に大きな音を出すしかないように思えます。しかし、音の「強さ」と、物理的な音量は同じではありません。聴き手がある音を強く感じるかどうかは、デシベルだけでなく、その音が置かれた拍節上の位置、前後の音との音量差、和声的な緊張、音色、発音のタイミング、そして音がどれだけ長く意識の中にとどまるかによって決まります。

つまり、「音の強さ」とは、「強い印象を与える響き」のことであり、必ずしも大きな音によって生まれるものではありません。音楽の流れのなかで、その音に聴き手の注意が集まり、意味のある出来事として知覚されることが重要なのです。


音価を引き延ばすと、なぜ音が強調されるのか

音価をわずかに引き延ばすと、その音が聴覚のなかを占める時間が増えます。短く通り過ぎる音は、次の音が現れた瞬間に意識の後方へ退きます。一方、音が少し長く保たれると、聴き手はその響き、音色、和声的な意味を受け取るための時間を持つことになります。音量を上げていなくても、その音が意識に残る時間が増えるため、結果として強い印象が生まれるのです。

ただし、「聴く時間が増えるから」という説明だけでは十分ではありません。音価の引き延ばしには、次の音へ進もうとする流れを一瞬だけ留める働きもあります。一定の拍のなかで演奏を聴いていると、聴き手は無意識に次の発音時点を予測しています。その予測された時点をほんのわずかに越えて音が保たれると、時間の流れに小さな抵抗が生まれます。その瞬間、注意は自然にその音へ集まります。

このように、音量ではなく時間によってつくられるアクセントを、アゴーギク・アクセントといいます。音を強く打つのではなく、その音にわずかに多くの時間を与えることで、拍節上、旋律上、和声上の重要性を示す方法です。音価の引き延ばしによる強調は、単に音を長くする操作ではなく、聴き手の時間感覚に働きかける表現なのです。

【参照動画】下記動画では、アゴーギクの極わずかな変化が、溌剌なリズム感を生み出している。


リズム感とは、発音時点だけを管理する能力ではない

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