📖掌小説❤️はつこい❤️
ぼくは今、古い日記帳を読んでいる。増えてしまった本の整理をしているとき、小学生の頃、毎日書いていた日記帳をたまたま見つけたのだ。
昭和59年11月✕日。小学2年生のときの日付だ。ぼくにとっては大きな転機になった日のはずだ。しかし、その日の日記に限って、日付以外なにも書かれていない。僕の記憶では、たしか晴れていたはずだ。
「ちかちゃん、おはよう」
「うん、ごめん、さきに行くね」
いつもなら、
「ともくん、おはよう、いっしょに学校行こう」となるはずなのに。
なんとなく避けられているような気持ちになった。
なにか、嫌われるようなこと、言ったかな?
胸に手を当てて考えてみる。ずっと考えてみても避けられるような理由は思い浮かばなかった。
その日の帰り道も、ちかちゃんと帰るつもりだった。朝の理由を聞きたい気持ちもあったし、普段からいっしょに下校していたから。
「今日もいっしょに帰ろう」
「ごめん、やっぱりどうしたらいいか、わからないから」
「なにが?」
「だって、ちかちゃんとともくんは、コイビトでしょ?コイビトだったら、キスするでしょ。」
「そうなの?」
「うん。そうなんだって。テレビで見たもん。でも、キスするとき、お鼻がぶつかると、困るでしょ。一生懸命考えたけど、よくわかんない」
「そっか。じゃあさぁ、ちかちゃん、ちょっと首をかたむけてみて。」
「これでいい?」
「じゃあ、キスするね」
ぼくは、ちかちゃんのくちびるに、ぼくのくちびるを近づけた。
くちびるより先に、お互いの鼻と鼻がぶつかってしまった。
けれど、ちかちゃんの気持ちにこたえたい。そのまま、ちかちゃんと初めてのキスをした。
「そっか。お鼻がぶつかったあと、キスしてもいいんだね。ともくん、男の子だね。どうもありがとう」
その日、ちかちゃんに「バイバイ」を言ったあと、家に向かったぼくは、家に着いてからも、お母さんにもお姉ちゃんにもなにも言わず、疲れてそのまま寝てしまった。
きっと、微笑みながら。
おしまい
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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします