関税戦争を三面等価の原則から考える | 方程式ではなく恒等式だから誰も否定できない!
私はふだんnoteでは、いわゆる「時事ネタ」は書きません。というのは、思想信念を書くことは、好きではないからです。
もちろん、私にも「こうしたほうがいいのでは?」と思うことはあります。
健全な議論が出来ればいいのですが、感情的な議論になり、理性的な議論にならないことが多いです。
最近よくニュースで「関税」のことを聞きます。
私は、自国の産業を守るために、最低限度の関税をかけることを否定するつもりはありません。
しかし、あらゆるものに関税をかける政策は、関税を課する国にも、関税を課される国にも、なんのメリットもないと考えています。
以下に書くことは、「理論」というより、「算数」の問題です。
三面等価の原則から関税を見る
貿易収支や経常収支は、三面等価の原則における「支出」の側面に深く関係しています。三面等価の原則の支出面から見ると、国民所得(GDP)は次のように表されます。
GDP(支出面) = 民間消費 + 民間投資 + 政府支出 + (輸出 - 輸入)
ここで、(輸出 - 輸入) の部分は純輸出と呼ばれます。
簡潔に表すために、
国民所得をY (yield)、
消費をC (consumption)、
投資をI (Investment)、
政府支出をG (Government)、
輸出をX (eXport)、
輸入をM (iMport)、
(民間)貯蓄をS (Saving)、
租税をT (Tax)とします。
支出面から見た国民所得は、
① Y = C + I + G + (X - M)
一方、分配面から見た国民所得は、
② Y = C + S + T
①と②の国民所得(Y)は同一であるため、両式の右辺を等号で結ぶと、
③ C + S + T = C + I + G + (X - M)
となります。
式③を整理すると、次のようになります。
④ (S - I) + (T - G) = (X - M)
ここで、
(S - I)は民間の貯蓄超過(貯蓄から投資を引いた値)、
(T - G)は政府の貯蓄超過(租税から政府支出を引いた値)、つまり、財政黒字(マイナスであれば財政赤字)を表します。
(X - M)は純輸出、つまり貿易・サービス収支の黒字(または赤字)を表します。
この式は、国内の貯蓄超過(S - I)と政府の貯蓄超過(T - G)の合計が、海外への貯蓄超過、つまり経常収支の黒字(X - M)と一致することを示しています。
したがって、
国内で貯蓄が投資よりも多い場合(S > I)、その超過分は海外に貸し出され(資本輸出)、経常収支の黒字(X - M > 0)として現れます。
逆に、国内で投資が貯蓄よりも多い場合(S < I)、その不足分は海外から借り入れられ(資本輸入)、経常収支の赤字(X - M < 0)として現れます。
この関係は、国際収支の恒等式に基づいており、方程式ではなく、常に成り立つルール(恒等式)です。
📢これは方程式ではなく、
恒等式です!!
つねに成り立つ式です!!
具体的には、経常収支の黒字(貿易黒字を含む)が生じる場合、その金額は必然的に資本収支や金融収支で同額の赤字(海外への貸し出しや投資の減少)として相殺されます。
したがって、
貿易黒字(経常収支の黒字)が生じれば、資本収支は赤字になるという関係が成立します。
結論
最近の「関税戦争」や「貿易障壁の強化」は、この恒等式を無視した政策であり、経済全体に深刻な悪影響を及ぼします。
関税の引き上げは、輸出(X)を減らし、輸入(M)を制限する一方で、国内の生産者や消費者に負担を強いる結果となります。
米中貿易摩擦のような事例が、サプライ・チェーンの混乱、インフレ圧力、雇用の不安定化を引き起こす結果をまねきます。関税を強化するという「保護主義」が台頭すると、国内の貯蓄・投資バランスが歪み、長期的な経済成長が阻害されるリスクが高まります。
さらに、関税戦争は他国との報復措置を招き、グローバルな自由貿易の枠組みを崩壊させる恐れがあるだけでなく、本当の戦争を引き起こしかねません。
国際収支の恒等式から見ても、こうした政策は一時的な利益を追求するものに過ぎず、結局は自国経済と世界経済の双方に損失をもたらします。したがって、関税戦争は経済の基本原理を無視した短絡的な手段であり、避けるべきです。
世界各国は、関税戦争が負の影響をもたらすという認識を共有し、協力的な自由貿易政策の重要性を再確認することが求められます。
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