「流行るAメロ」には条件がある。MON7Aに聞く、TikTok時代の楽曲制作とスマホ時代の音作り
現役高校生の恋愛リアリティー番組『今日、好きになりました。』(ABEMA)で話題となり、アーティストとしても自身の楽曲がTikTokを中心にバイラルヒットを記録しているMON7A(もんた)。 「おやすみTaxi」や「HEA7EN」といった楽曲で見せる、一度聴いたら離れないメロディセンスと、10代ならではの瑞々しくも冷静な視点は、どのように形作られているのか。
今回は、自身の制作背景からSNSとの向き合い方、そして高解像度イヤホン「ピヤホン」を通じて再発見した「音へのこだわり」について、本人の言葉を丁寧に紐解いていく。
<取材・編集:小沢あや(ピース株式会社)>
<MON7Aさんプロフィール>
2007年7月6日生まれ。東京都出身。昨年6月ABEMA 恋愛リアリティ番組「今日、好きになりました。ハロン編」に出演し大きな話題となる。現在、SNS総フォロワー数は270万人を超え、各メディアのトレンドランキングに軒並みランクインするなど今最も注目を浴びる現役高校生アーティスト。今年1月にシングル「TOGE TOGE」でユニバーサルミュージック/EMI Recordsからメジャーデビュー。
知名度が音楽に繋がる手応えと、バズのよろこび
デビューから数か月。楽曲のリリースを重ねるごとに、MON7Aというアーティストへの注目度は急速に増している。現在の状況について、本人は「自分の知名度とやってきたことが、音楽に繋がってきている」と、その手応えを語る。世間では「バズ」という言葉で一括りにされがちだが、彼自身のよろこびはもっと切実で、純粋な場所にあった。
「曲を出せば出すほど、自分のことを知ってもらえている気がします。『おやすみTaxi』が音楽配信サイトに並んでいること自体がまずうれしいですし、インフルエンサーさんがTikTokで俺の曲で踊ってくれていることによろこびがあります。自分の曲がSNSで広がっていくのが夢だったので」
15秒の入口と、10代の憧れを形にする MON7A独自のヒット論
「おやすみTaxi」の制作にあたって、彼は「TikTokで流行らせたい」という明確な動機を持っていた。小学生の頃からTikTokに触れてきた世代として、どんな音楽が「回る」のかを体感値として持っている。
「パッと言語化はできないし、感覚的なものなんですが、キャッチーなメロで、こういう尺で、ああいうテンポで……といったイメージが自分の中にははっきりあるんです」
制作手法も、今の時代を象徴している。
「『流行る部分(Aメロ)』を先に作って、残りを後付けして曲にしていきます。そこから、次は『ダンスをしやすい音を入れてみよう』とか考えて広げていくんです」
楽曲制作の際には、耳に残る「フック」をどう作るかを徹底して意識している。
「同じメロディを何回か繰り返すようにしています。『TikTokで流行らせたい』という動機はもちろんですが、『音でも歌詞でも、耳に残るフックを作ろう』と考えていました。たとえば、『おやすみTaxi』だと歌い出しの『ね Taxi』だけで『何? どういう意味?』って引きになるかなと思って」
印象的な「タクシー」というキーワード。そこには、背伸びをしたい10代・現役高校生であるMON7Aの等身大の感覚が込められていた。
「ずっとタクシーに憧れがあったんです。まだ10代だし、お金がかかるから、普段は全然乗れてないんですけど、タクシーってなんか大人っぽいなって思ってて。今はそういう『小さな憧れ』を大事にしたいと考えています。
とにかく、今は17歳とか、18歳にしか書けない曲を作りたい気持ちがあるんです。大人からしたら身近なタクシーも、僕には馴染みがないし、特別な存在。年齢を重ねたら、この憧れも変わっちゃうかもしれない。今『いいな』と思うことを曲にしています」
無駄なプライドを捨て、戦う土俵を広げる
TikTokでは2つのアカウントで190万人以上、Instagramでも38万人のフォロワーを抱えるインフルエンサーでもあるMON7A。SNSでの発信において、MON7Aは「無駄なプライドは捨てた」と言い切る。そんな彼も、昔は「日本語の曲を使わず、洋楽でイケてる感じを出す」といったこだわりや、叩かれるのを避けたいという思いもあった。しかし、今はそれを「無駄だった」と振り返る。
「SNSをやるうえで、早めにプライドを捨てられてよかったなと思っています。TikTok出身のアーティストもいっぱい活躍しているし、抵抗はなくなりました。
もともとはプロモーションだと思ってやってたけど、今はインフルエンサー的な俺と、音楽、どっちも伸びたらいいなと考えています。俺のことを好きでいてくれるなら、『今日好きで知ってて好き』でも『顔が好き』でも『世界観が好き』でも、なんでもうれしい」
その徹底したポジティブさの裏には、自分を変えようともがいてきた軌跡があった。
「よく『自分のこと大好きでしょ!』って言われるんですけど、もともとは違うんです。自信がないからこそ、『ちゃんと自分を愛さなきゃ』と考えるようになって、頑張って今があります。もともとはネガティブですよ。それが嫌で、どうにかして変えようと思って今のMON7Aになりました」
自身の楽曲への想いも同じだ。歌詞作りにおいても、理屈より「自分自身がときめくかどうか」を優先する。
「歌詞も、文章として成立しているか、などはあまり気にしないです。『自分が意味をわかっていればいいや』と思って書いています。他の人から見て不自然でも、『こういう曲が作れちゃう自分が好き』という自己満足ですね。自分が納得できるまで作り込んじゃうタイプなので、制作の締切が守れないこともありますが(笑)、完成系にしたときは『これ以上はいいものは作れません!』と思って出しています」
iPadとイヤホンマイクから始まった、MON7Aの音
かつての制作環境は、驚くほど身近な道具だけで完結していた。
「『おやすみTaxi』のdemo制作は、お金も無かったので録音マイクさえ使えていなくて。iPadとイヤホンの付属マイクだけで作りました。今はいろんな音を知ったから『荒削りだな……』とも思うけど、それはそれで当時の俺が詰まっていて『いいな』って思うんです」
メジャーレーベルと契約後、プロとの仕事を経て、彼は「音」の解像度を上げていった。レコーディングを重ねる中で、低音の違いや、無数の要素が組み合わさって音楽ができていることを学んでいったという。
「昔は『聴ければなんでもいいや』と思って、手軽なワイヤレスイヤホンや安い有線イヤホンを使っていました。自分の曲を作る過程にいくまで音の違いがあんまりわからなかったんですけど、『好きな音』を知ってからこだわるようになりましたね」
SNSで音が加工されたり、楽曲の再生速度が変えられたりすることに対しても「全然嫌じゃない」とMON7Aは寛容だ。
「曲を知ってもらえている方が嬉しいです。リミックスしている人もいるけど、抵抗ないし『かっこいいな』と思ったら自分でも聴いちゃいます。音楽って自由でいい。俺の作品でみんなが楽しめるなら、どう使ってもらってもいい。知られないよりは、遊んでもらえた方が全然いい」
ピヤホンの衝撃は空間の広がりと「隠された通知音」
そんな彼が「イヤホンの新体験」と語ったのが、ピヤホン9との出会いだ。
「ピヤホンは全然違います。全部の音がそれぞれ主張して、はっきり聞こえる。同じ曲でもまったく違う曲に聴こえますし、音が飛び込んできます」
特に「グルーヴモード」での試聴には驚きがあったという。
「ベースの強さもありつつ、空間の広がりを感じるんです。自分の曲でも、ベースとキーボードが別のところから流れている感覚がありました。全部の楽器の音がそこにいるような生感がある。値段も良心的だし、音楽が好きな学生はピヤホンがいいと思います」
ピヤホンという高解像度な環境だからこそ、彼が楽曲に忍ばせた「二周目の仕掛け」も鮮明になる。
「『おやすみTaxi』も『HEA7EN』も、どちらにもみんながわかる通知音を入れているんです。メールを飛ばした時の『シュンッ』って音とか、踏切の『カンカン』音。ピヤホンは、そういう日常の中でハッとさせられるような、細かい一回しかない音がしっかり聞こえる。『この音を入れたいな』と思って入れた音がパッとわかりやすく聞こえるんです」
飽きられる恐怖を越えて、今を全うし続ける
「楽曲を広く、長く愛してほしい」と願う一方で、MON7Aはあえて「10年後」を見すぎないようにしている。
「10年後も聴かれたいとかあんまり考えてなくて、今やりたいことを全力でやっています。今しかできないことをやりたい。常に挑戦していきたいし、みんなにとってずっと新しい俺でいたいんです。飽きられるのは嫌だし、成長し続けたいです」
メジャーデビューしたての新人アーティスト。そんな今のMON7Aが考える「MON7Aっぽい音楽」とは、「聴く時に体力を使わない」ことだという。
「心にグッと刺さる重い曲も好きだけど、俺の曲はいろんなところで、気軽に聴いてほしいですね。時代やトレンドは考えすぎないようにもしています。今を大事にしたいので」
最後に、彼はこう提案した。
「聴き込んだ曲を、改めてピヤホンで再生してみてほしいです。その楽曲をさらに愛するきっかけになると思うから」




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