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miiro1014
【余白のエロス】 スイッチが入った瞬間、世界は裏返る
毎朝のルーティン。
布団から出て、顔を洗って、湯を沸かす。
カフェオレを入れる。
ぼんやりしたままカーテンを開けると、
今日も変わらない朝がはじまる。
──昨日と同じようで、
なにかが、すこしズレている。
そのズレは、いつも唐突にやってくる。
それは音だったり、光の角度だったり、
通りすがりの誰かの香水だったりする。
でも今日は、自分の指先だった。
カップを持ち上げたとき、
カップのふちをなぞるように小指がふれた。
その瞬間、スイッチが、入った。
世界が、じんわりと裏返る。
冷たい空気が、肌にまとわりつく感触になる。
手のひらの感覚が過敏になり、
音が、遠くて、近くなる。
わたしは今、あちら側にいる。
鼓動が、やけに近い。
首の奥が熱をもちはじめる。
足のつけ根の内側が、じわっとうずく。
何もしなくても、感じてしまう。
肌が、呼吸している。
下腹部に熱が灯る。
わたしの中の欲しいが目を覚ます。
だれかを求めているんじゃない。
自分で自分を、やさしく抱きしめるように。
ひとりきりで、ただ静かに、心をほどいていく。
手のひらで触れた感覚が、そのまま脳に届く。
濡れたようなまどろみ。
やわらかい快感が、波のように押し寄せて、
思考をすこしずつ塗りかえていく。
ここにいていい。
そう言ってくれてる気がした。
わたしは、わたしで、救える。
わたしだけの世界の裏側で、
何度でも、愛しなおせる。
誰にも見せなくていい。
誰にも教えなくていい。
ここは、
わたしだけの、秘密の救済。
エロなんて、ただの快楽じゃない。
それは、わたしがわたしを保つための、
一瞬のまたたき。
まばたきひとつで世界が裏返るなら──
その裏側に、わたしはちゃんと、生きている。
