1990年⑮2月25日アムステルダムで迷子#2【女子大生ヨーロッパ32日間バックパックひとり旅】
※本稿は、1990年に大学生だった私が、2月21日から3月24日の32日間バックパックでヨーロッパを旅した時のエピソードです(第15話:前回に続き、「迷子になった」というだけの話です…)。
旅の間に書いていた旅日記のオリジナルは2026年時点で行方不明ですが、その日記をもとにした原稿が残っていました。旅に慣れて写真が増えるのと反比例して文章量が減っていくその原稿をnote用に編集し、ところどころ2026年の私が突っ込み注釈[*]を入れつつ、ゆるっと投稿します。
なお1990年の旅のお話はマガジン「1990年ヨーロッパ女子大生バックパックひとり旅」にまとめています※
アムステルダム国立美術館に到着(観たのは外壁だけ)
やっと国立美術館が見えてきた。
さすが国立というだけあって大きい。
ここを訪れるために私は歩いてきたのだ。
しかし。
入り口から長く連なる2本の行列を見てすっかり萎えた。
今からこの行列に並んで、さらにこの大きな美術館を見て回る気力はすっかり失せてしまっていた。
行列には加わらず、私は美術館の脇を回って裏の方へ行った。
美術館の壁にはモザイク画があった。
中を見られない代わりに、そのモザイク画だけを写真に撮る。
(*侘しいですね)

しばらく未練がましく周辺をうろうろしていたが、とうとう近くのベンチに座り込んでしまった。
美術館のそばには広場があった。
プレハブのような小屋でたくさん絵葉書を売っている。手に取って選んでいる人たちもいる。
高校生くらいの男の子たちが3、4人、バスケットボールの練習をしていたり、隣のベンチで観光客らしいカップルが仲良くアイスクリームを食べていたり。
私はなんだかとても悲しくなった。
棒のようになった脚を投げ出してベンチに座ったまま、情けなくて泣きたくなってしまった。
何をしていたのかなぁ。
疲れたなぁ。
お腹も空いた。
もういいや、アンネの家もゴッホ美術館も諦めてホテルへ帰ろう。
そう決めて私はまた、とぼとぼ歩き出した。運河を渡り、駅への道をゆっくり歩く。
途中で女の人に道を訊かれた。
「国立美術館はどっち?」
「ここをまっすぐですよ。あの建物です」
そう、私も誰かに道を尋ねながら歩けばよかったんだ。
日曜日で大通りに面した銀行もお休み。
ティーンエイジャーの男の子たちが踊るように歩いていく。
家に電話しようかと思ったが、電話ボックスまで行き、ダイアルしかけてやめた。
今、母の声を聞いたらわんわん泣いてしまいそうだ。心配をかけるだけだからやめよう。
私は電話ボックスの隣にあった、ガラス張りの花屋に近づいた。
花屋さんも今日はお休み。
暗い店内に色とりどりの花が束になって置かれている。
その花を眺めているようなふりをしてガラスに張り付き、とうとう私は泣いてしまった。
こんなところで恥ずかしい。
悔しい。情けない。
せっかく来たのにな、アムステルダム。
よし、絶対もう一度来てやる。
今度こそ、国立美術館もゴッホ美術館もアンネの家だって見るぞ、絶対。
(*アンネの家には1996年に行くことができました)
考えれば考えるほど泣けてくるので、もうなるべく頭を働かせないようにした。
ダム広場まで戻り、駅に続く大通りの土産物屋を見ながら歩いた。
絵葉書や木靴のミニチュアを買う。
いちいち値段を確かめる気力もなくなっていた。
言われた値段は思っていたより高かったが、16.45Hflを出した。
(*1290円くらいでしょうか)
エビアンが沁みた夜
駅に着いて15時半頃の電車に乗り、デン・ハーグへ帰る。
車窓から外を眺めているとまた涙が出そうになる。
それにしても疲れた。
今晩はまともなものが食べたいなぁ。
電車を降りてレストランを探すが、どうしてもひとりで入る決心がつかない。
第一、店自体休みが多い。
イタリアンレストランの前に通りかかったものの、中のシェフと目が合っただけで怯んでしまう。
「こうなったら夕食はチョコレートサンデーでもいいや」とアイスクリーム店に入ってみたが、他の客の物珍しそうな視線に耐え切れずに、注文する前に店を出てしまった。
結局、昨日と同じマクドナルド。
もう早くホテルに帰って休みたかった。
やっとホテルの部屋にたどり着き、上着を脱いで、靴も放るように脱ぐ。
テーブルの上にマクドナルドを置き、まずミネラルウォーターを飲もうとした。
蓋のアルミがなかなか剥がれず勢いがついて、開いた拍子に少しこぼれてしまった。
「ああっ!もったいない!!」
思わず声をあげてしまってから自分の言葉に驚いた。
歩きづめで、喉はカラカラだった。
そのエビアンの美味しかったこと!水の有難みが、まさに身に沁みた。
明朝コーヒーを淹れるためにエビアンは少し残し、マックとミルクとサンデーの夕食を済ませた。
その日はテレビを見るのもやめて、6時過ぎにベッドに入った。
日記も明日の朝にしよう。
それから私は12時間ほど、ぐっすりと眠った。
【2026年の私から】
やれやれ…。何をやってるんでしょうね。本当にただ道に迷っただけの一日だったようです。
こういう要領が悪いところは、35年以上経った今でも、あまり変わっていない気がします。
