間近に見えたスイスの山と、清く美しかったジュネーブ|1990年ひとり旅
※これは1990年のヨーロッパひとり旅のお話です(第27話)。
3月13日 ベルンからジュネーブへ
32日間の旅の21日目。
スイスの山を車窓から初めて見た時、私は思わず声をあげてしまった。
ポスターなどで見るのと同じ雪山が、そこに見えたから。
日本で見るような、緑の多い山やなだらかに連なる稜線とは違う。
かち割り氷のようにゴツゴツして、直線をつないだような山々は、青みがかった灰色の山肌が白い雪に覆われている。
思いのほか間近に迫る山を目の当たりにして、
「スイスにいるんだ」
と実感した。
(*それなのに、写真撮ってないって、まったく…)
ベルンは、中世の風情を漂わせる、赤い屋根の建物が並ぶ山間の小さな首都だった。
一方、ジュネーブには国際機関もあり、すっきりと垢抜けた清潔な街という印象を持った。

レマン湖そばの公園の花もよく手入れされ、咲き揃っている。
噴水周りもきれいに清掃してある。
湖の水も澄んでいて、街全体が「お行儀がいい」印象を受けた。

しかし、どうも親近感はわかない。
整い過ぎた美女に近寄りがたいものを感じるのと同じかもしれない。



もしかすると、郵便局で郵便を出そうとした時の対応のせいもあるかもしれない。英語で話しかけると冷淡な反応が返ってきて少し残念だった。

でもヴィクトリノックスのおじさんは、優しかった。
家族へのお土産にナイフを買い、名前を彫ってもらった。
(*2025年にも、ヴィクトリノックスのお店に行きました。
1990年に訪れた時の規模を正確には覚えていませんが、おそらくかなり大規模なっていたはず。Google Mapsを頼りにたどり着いた時に、うっすら覚えているより立派なビルが現れ、若干驚きました。
目当てのナイフは地下1階で取り扱い。
同じように家族にお土産を買い、
「私、1990年にもここに来て、名前を彫ってもらったの」
と告げると
若い店員は少し驚いた顔をしていました)


32日間の旅の21日目。ふと気付けば、私もちゃんと旅らしい旅をしている。
夜行列車に乗ったり、博物館や美術館を見学したり…。
もう3週間なのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。
ヨーロッパに来たばかりの頃、ブリュッセルの街角で迷子になって、途方に暮れて泣いていた自分とは、もう明らかに違うと思う。
残りはもう10日ばかり。
あとは、スペインの都市3か所ほどを回り、パリに戻るだけだ。
残り時間が少なくなった今、振り返ると、迷って過ごした最初の約10日間の時間が本当に惜しい。
しかし、あの時ああして迷ったからこそ、今こうして、旅ができているのだとも思う。
無駄に思える時間でも、あとから振り返れば、実は自分のためになっていることって案外あるのかもしれない。
その夜、私は夜行列車でバルセロナへ向かった。
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