「悪事が次々と表に出る時代」に、私たちの心がざわつく理由
ニュースを見ていて、「昔なら隠されていたようなことが、次々と表に出てくるようになった」と感じる機会が増えました。
福岡県議会では、3年間で約2億6500万円の海外視察費が公表され、多くの人が驚きました。
この件については、「必要な調査だった」という見方もあれば、「本当に必要だったのか」という疑問の声もあります。
私が心理士として注目したのは、その是非そのものではありません。
報道を見た多くの人が抱いた「感情」です。
「私たちは生活が苦しいのに。」
「税金ばかり増えるのに。」
「なぜこんな使われ方をするのだろう。」
こうした怒りや虚しさには、心理学的な理由があります。
人は、お金(税金)を失うことだけで苦しくなるわけではありません。
それ以上に、「公平ではない」と感じたとき、心は強く傷つくのです。
◆人は「損」よりも「不公平」に傷つく
心理学の研究では、人は単にお金や利益を失う(損をする)こと以上に、「不公平に扱われている」と感じたときに激しいストレスと怒りを抱くことがわかっています。
身近な例で考えてみましょう。
【職場での例】
同じ部署に二人の社員がいます。
一人は毎日遅くまで残業して奮闘し、もう一人はほとんど仕事をしていません。
しかし、給料は働いていない人のほうがはるかに高かったとします。
このとき湧き上がる怒りは、「自分の給料が少ないから」ではなく、「なぜこんな不公平がまかり通るのか」という不条理さに対してですよね。
【家庭での例】
子どもが一生懸命お手伝いをしているのに、何もしていない兄弟だけに特別なお小遣いが渡されたらどうでしょうか。
子どもが傷つくのは「お金が欲しいから」ではなく、「自分を公平に見てもらえていない」と感じるからです。
人は誰しも、「公平さ」という土台があって初めて、安心してその組織や社会に身を置くことができます。
だからこそ、「自分たちの負担は増えるのに、何に使われているか分からない」「説明も不十分なままうやむやにされる」という状態が続くと、社会全体への強い不信感が積み重なっていくのです。
◆崩れていく「暗黙の約束(心理的契約)」
心理学には「心理的契約」という言葉があります。
これは書面で交わす法律上の契約ではなく、「お互いに誠実であり、裏切らないはずだ」という目に見えない期待や約束のことです。
私たちは「大変な時期であっても、正しく納税する」という役割を果たします。
強引に徴収されてしまうといえるかもしれません。
その代わり、政治や行政は「その大切なお金を、公正で透明性のある形で社会に還元してくれるはずだ」と信じたくなります。
この暗黙の約束が保たれていると感じられれば、人は多少の苦しい負担であっても納得し、受け入れることができます。
しかし、その前提が崩れたとき、湧き上がるのは「税金が高い」という不満を超えた「裏切られた」という深い傷です。
現場で相談を受けていても、「どれだけ頑張っても報われない」「真面目に生きているのが馬鹿らしくなる」という声を耳にすることは多いです。
これはまさに、社会に対する心理的契約が破綻しかけているサインだといえます。
◆私たちが本当に求めているもの
今、多くの人が感じている心のざわつきは、単に「誰かを激しく責め立てたい」という攻撃性だけではないはずです。
* 税金がどのように使われ、どんな成果に繋がったのかという丁寧な説明
* 頑張って生きている人が報われるという最低限の公平さ
人は、納得できることであれば、多少の我慢や苦労も乗り越えられる強さを持っています。
しかし、納得のいかない不条理は、トゲのように心に残り続けます。
安心して暮らせる社会とは、豊かな財源だけでなく、「お互いを信頼できる」という目に見えない土台の上に成り立っているのではないか。
国民が「自分たちの納めた税金が、巡り巡って誰かの助けやこの国の未来に役立っている」と自然に思える――
そんな当たり前の信頼関係が取り戻されることを、一人の国民として願ってやみません。
今、あなたの心を一番重くしているのは「税負担そのものの重さ」でしょうか。
それとも「使われ方に納得がいかないこと」でしょうか?
皆さんが日々感じていることやご意見を、ぜひコメント欄で教えてください。
#税金 、#不公平
