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PIST6は「ギャンブル依存症の入り口」なのか?~渡辺俊太郎社長の理想と現実~

千葉市議会の2025年9月定例会一般質問で、日本共産党千葉市議会議員団の野島友介議員がPIST6に関する質問を行った。

その主旨は、
①若年期や幼少期に体験しているとギャンブル依存症のリスクが高まる
②PIST6は若年層や家族連れが多く来場している
③若いうちからギャンブルへ触れる環境をつくるべきではないと考える
④学生利用やアマチュア大会の実施、補助輪卒業教室などは自転車競技の普及や市民が自転車に親しむ機会に大きく寄与していると思う
250競走(PIST6)をやめ、自転車競技の振興にのみ力を入れるよう求める
――だった。

執行部(千葉市)の回答は
①車券販売を行っておらず、ギャンブルのイメージを抑え、安心して楽しんでもらえる環境になっている
②週末には、子ども向けのイベントを実施している
――であり、質問内容に対して若干嚙み合わない印象を受ける。

▼野島議員による一般質問(一部)

▼野島議員による一般質問(全部)
 録画放映(本会議等)|千葉市議会
・野島議員質問   21:27~
・経済農政局長答弁 32:07~
・野島議員要望   35:34~


JPFの渡辺俊太郎代表取締役の理想(PIST6)が実現するとき、それは野島議員が懸念する「ギャンブル依存症の入り口」となるのだろうか。


ギャンブル依存症の実態


わが国には、競輪場43場を含めて97の公営競技場がある。
公営競技は、多くの国で主流となっているスポーツベッティングやカジノと異なり、その売上が主催自治体(PIST6であれば千葉市)に還元されることが特徴だ。

日本は「ギャンブル大国」と言っても過言ではなく、ギャンブル依存症となる人の割合も他国と比べて多い傾向にあるという。

ここで、日本におけるギャンブル依存症の実態を踏まえておきたい。

ギャンブル等依存症対策基本法


同法では、ギャンブル等依存症の基本的施策などを示すとともに、政府に対して「三年ごとに、ギャンブル等依存症問題の実態を明らかにするため必要な調査を行い、その結果をインターネットの利用その他適切な方法により公表しなければならない」と規定している。


ギャンブル障害等実態調査の結果


最近の実態調査は、2023年度に行われた。

この結果を見ると「若年期や幼少期に体験しているとリスクが高まる」とする記載はない。
ギャンブル等依存症を助長する要因として特筆すべきであれば、その示唆があって然るべきと思うが、どうか。

また、20代における「ギャンブル等依存症が疑われる者」の割合は0.9%(20代の調査対象952人のうち、依存症が疑われる者は9人)で、全世代の中で最も低い(10代を除く)。
全体を見ても、「ギャンブル等依存症が疑われる」20代は全世代のうち6.4%(全世代140人のうち、20代は9人)と、各世代で最少だ(10代を除く)。

30代以降にギャンブル等依存症になるのならば、それは親が公営競技場に連れていったせいではなく、本人の自己責任ではないだろうか。

PIST6における依存症対策


同法では、国および地方自治体に対し、「ギャンブル等依存症の予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとする」と規定している。

PIST6が行われる千葉JPFドーム(旧・TIPSTAR DOME CHIBA)においてはギャンブル依存症を啓発するポスターが掲示されているほか、ポスターと同様の主旨が記載された車券入れと消毒液が配布されていた。

ドームで配布された消毒液に同封されたチラシ

ウマ娘は善か、悪か


若い世代が触れることができる公営競技関連の作品として、ゲームやアニメなどが展開されている「ウマ娘」シリーズがある。

競馬はやらないが、ウマ娘のアニメとゲームに触れたことはある

その人気ぶりはPIST6の比では無く、これをきっかけに競馬を知った人、親とともに競馬場に行った人もいるだろう。

アニメの放送開始は、今から7年前の2018年。当時、15歳だった人は、調査時点で20歳だ。

7年前と比較して、ギャンブル等依存症の20代は著しく増えたのか。
比較可能な過年度の調査結果が出てこなかったので断言はできないが、2023年度の調査結果を見るに、大して変わっていないのではなかろうか。

なお、千葉市では、幕張メッセにおいてウマ娘のイベントが開催されたことがある。また、白井市ではウマ娘とのコラボレーションが行われている。

開催概要|ウマ娘 プリティーダービー Twinkle Circle!|ウマ娘公式ポータルサイト|Cygames
「ウマ娘 プリティーダービー」とのコラボレーションについて/白井市

野島議員は、ウマ娘も「ギャンブル依存症の入り口」と考えるのだろうか。

PIST6以外の公営競技場も


PIST6のみならず、多くの公営競技場で子ども向けのイベントが開催されている。
実際、私もPIST6に出会うかなり前、当時3~4歳だった息子を連れてウルトラマンや仮面ライダーのショーを観に行った記憶がある。

子どもが公営競技に触れる可能性のある場所がPIST6だけではないことにも言及しておく。

入場時に、仮面ライダーの変身ポーズを決める黒瀬浩太郎選手。
PIST6休止を前に「長く続いてほしい」とコメントした

PIST6の集客のターゲットは「家族連れ」


野島議員が言う、「PIST6に、家族連れなどが多く来場している」という点は間違ってはいない。
なぜなら、PIST6は、家族連れや若者を集客のターゲットとしているからだ。

夏まつりイベントの様子

市内の小学校には、千葉JPFドームで行われるイベントのチラシが配布される。普段の開催の寂しさから一転、夏まつりなど人気のイベントは家族連れでごった返すほどだ。ガチャではニンテンドースイッチやポケモンカードが当たる。

小学校で児童に配られたチラシ

私も、小学生の娘を連れて何度もドームに足を運んだ。世界最速のレースを眼前に盛り上がり、そして子どもはイベントを楽しむ。娘とともに優れた施設で過ごせる環境は「最高」の一言に尽きる。

渡辺社長の理想


現行競輪に対する発言が物議を醸すこともある渡辺社長だが、自転車競技、そして競輪(ケイリン)に対して熱い思いを持っていることは疑いようがない。
渡辺社長の過去の発言から、PIST6への思いを紐解いていきたい。

以下は、PIST6開幕に際しての発言などだ。
「競輪をスポーツとして普及させ、もっと市民が関われる施設にしたいと思っていた。ただ、個人では理解してくれる人はいても、組織としては一つもなかった。では『自分がやるしかない』」
「最も大切なのは、競輪と自転車競技の融合。バンクを国際規格と同じにすれば、競輪を続けながら国際大会も目指せる」
「会場に券売機を置かなかったのもスポーツ性を高めるため。あくまでもスポーツを見に来る場であり、それにベッティング(賭け)もできるというようにしたい」
出典:ギャンブル色薄めてスポーツを前面に 競輪に巨額投じた社長のねらい [千葉県]:朝日新聞(2021年)

「当社が運営する競輪場をサイクルスポーツの普及拠点とすること、そして国際規格の競輪を実施することに注力してきた。競輪自体が日本のサイクルスポーツの頂点として君臨し、子ども達の憧れになり、競輪場自体がサイクルスポーツの普及・強化拠点になれば、日本は少なくともトラック競技の世界トップであり続けることができ、競輪を開催する正統性が維持できると考えた」
出典:JPF_FB_印刷用24P_0329_nyuko(2022年JPFファクトブック)

次に、休止に当たってのコメントなど。
「競輪界への恩返し、競輪界の飛躍の為に、千葉の競輪場を国際規格のドームに建て替えた」
多くの家族連れのファンが足を運んでくれるようになり、さらに世界に挑戦する選手も現れ、マスターズ世界選手権で優勝する選手まで誕生している。PIST6をきっかけに競輪選手のファンになり、競輪もやるようになったという声も聞くようになった」
「カジノやスポーツベッティングが始まろうとしている現在、競輪のステイタス向上はその存続、発展のための急務。これからも、競輪や自転車競技をメジャースポーツにすべく、挑戦を続ける。子どもたちや若い世代に知ってもらい、憧れてもらえるように。千葉から日本中へ、いや世界中にこのスポーツの魅力を広げていく
出典:2025年度下期「250競走(PIST6)」の開催について | 株式会社JPF(2025年)

「一つの集大成が千葉ドームと千葉公園。『競輪場の近くに住みたい』が実現した。 これから全国の競輪場で、地域の人々に『競輪場のある街に住みたい』と思ってもらえるような取り組み・施設整備をしていくことが今後の当社の役割と考える」
「子ども達が手軽に、安心してスポーツに触れられる環境は子育て支援にも繋がる。親子で一緒にスポーツを楽しむ。 子どもの成長を見ながらカフェや飲食、美容を楽しむ。親御さん同士の交流や、アスリートとの交流ができる。このような環境の中で、サイクリスト・競輪選手を目指す子どもたち、 応援する子どもたちが育っていく
出典:JPF_factbook_2025.pdf(2025年ファクトブック)

世界王者のみ着用を許されるマイヨ・アルカンシェル。
伊藤信選手、市本隆司選手、稲毛健太選手がマスターズ世界王者となった。これほど早く世界を制する選手が出現したことは、嬉しい誤算だろう

あくまでPIST6はスポーツであり、ギャンブルは単なる要素。自転車競技を振興する(メジャーにする)ことが最終目標だ。そして、施設整備やイベントを通してまちづくりの役割も担っている。

このように、PIST6開幕時点と休止時点で渡辺社長の思いや目指すところは大きくは変わっていない。

休止に当たり「車券が売れなければ公営競技として成り立たない」との指摘もある。
今後、理想と現実のせめぎ合いの中でPIST6を立て直さなければならないが、これまでのPIST6を愛してきた私としては、渡辺社長の理想が現実を上回ることを期待したい。

一番の懸念は、ファン不在の議論であること


私が知るPIST6ファンの複数の子どもが、「将来の夢は自転車競技選手」と口にしている。大きな開催の際には、PIST6のTシャツを着用した車いす使用者の若者を見かける。
プロのレーサーが人力最速のスピードで駆け抜ける姿が、彼らに夢と活力を与えたのだ。

休止前ラストの開催で優勝した中島詩音選手

野島議員は、有権者や支持者にとどまらず、こうした人たちの声を聞いたことがあっただろうか。

もし、「250競走をやめ、自転車競技の振興にのみ力を入れる」ことにした場合、われわれの手で彼らの夢を奪うことになるかもしれない。

伝道師としての結論


一般論として、幼少期・若年期にギャンブルに触れることが悪影響を及ぼす可能性は否定できない。
PIST6ではギャンブル依存症対策に引き続き取り組み、各家庭においてはベッティングをしている姿を親が子どもに見られないようにするといった配慮が必要かもしれない。

一方で、ギャンブルの枠から脱却し、競技(スポーツ)に重きを置かんとするPIST6に対して、従来の公営競技と同等の評価を下すのは軽率だと言わざるを得ない。
渡辺社長の思いを知れとまでは言わないが、ぜひPIST6に足を運び、ファンの声を聴いてほしい。PIST6が子どもや若者に好影響を与えている側面を見つけられるはずだ。

なぜなら、私は実際にそれを聞き、見ているからである。

PIST6休止中に引退した木谷凉さん。
YouTuberとしての収益を母子家庭に寄付。
千葉に、熱心に応援する少年がいた

また、矛盾するような話ではあるが、現実的にはJPFが公営競技としての利益を度外視して、施設の維持や運営を継続していけるとは思えない。千葉市が施設を80億円で買い取り、自転車競技振興のためだけの利用とする可能性も無い。
そういった観点からも、野島議員の主張が実現することはあり得ないだろう。

千葉JPFドームは、約80億円で建設された

ネットではPIST6が車券の売上を増進し、それによって成り立つようにしなければならないことも指摘されているが、渡辺社長の理想を具現化する場であるならば単なる公営競技にとどまる必要はない。

むしろ、自転車競技を含むスポーツ、公営競技、イベント、文化、コミュニティ、ひいては子育てや地域活性化などの機能を包括する複合施設として、既存の公営競技が目指すべきリーディングケースとなってほしい。

PIST6再開まで、5か月を切っている。
PIST6に憧れた子どもたちが250バンクを翔けるその日まで、理想を具現化し、存続することができるだろうか。


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