令和の今だからこそじわじわ来る映画『ハンサム★スーツ』(2008年)
2010.5.1 Saturday
原作も脚本も鈴木おさむ。監督はこの作品が監督デビュー作の英 勉。

鈴木は、妻である森三中の大島美幸とは交際期間なしで結婚している。
その結婚までの顛末と赤裸々な新婚生活をつづったエッセイのタイトルが『ブスの瞳に恋してる』(2004年・マガジンハウス、のち2006年にドラマ化)。

そしてこの『ハンサム★スーツ』。映画内には「ブスーツ」も登場し、2025年の現在ではなかなか許されない容姿いじりが目立つタイトル群である。
ちなみに本作には、妻の大島美幸も登場。「これで美人だったら最高なのにね」と周りから言われるブスを演じる。(「ブス」という言葉を打つとドキドキする、これぞ令和)
この映画は「人間は顔じゃない」と主張する映画だといわれるが、そうではない。
「男は顔じゃない!」といいつつも「やっぱり女は顔だよね」というダブルスタンダードを隠さない映画である。

サクッとネタバレ。
主人公・琢郎(塚地武雅)は定食屋を経営する非モテの不細工な男性。美人アルバイトの寛子(北川景子)に告白するが振られた上に寛子は店を辞めてしまう。
そんな琢朗が友人の結婚式のためにスーツを買いに行き、勧められたのが「ハンサム★スーツ」。このスーツを着ると、彼は身長180センチ越えのすらりとしたハンサム・杏仁(谷原章介)に変身する。
モデルとして活躍し、美人モデルに言い寄られたりと、この世の春を満喫する琢朗。杏仁になってもう一度寛子に告白するが、やっぱり振られてしまう。
そんな彼は、寛子のあとにアルバイトに来た不美人な本江(大島美幸)のことが気になりはじめる。
実は本江は、琢朗とは逆に、「ブスーツ」を着て不細工になった寛子だったのだ。実は寛子は琢朗が好きで、「外見じゃなくて中身を見て欲しかった」のだという。
こうして、「外見なんて関係ない」という美人の寛子と、「『ブスなのに気になる』と思っていた本江が本当は美人の寛子だと知ってホッとした」不細工な琢朗のカップルが誕生、というお話。

2025.10.12 Sunday
ね?やっぱり「女は顔だ」って言っている映画だよね。不美人を自称する筆者にとっても悲しい結末ではあるが、でも残念ながら真実でもある。
そして、男だってやっぱり「顔は大事」なのだ。塚地はイケメンではないけれどチャーミングだ。だから美人に愛されても説得力がある。
ただ、これを書いた鈴木おさむ自身は「男も女も顔じゃない」と考えていると思っていた。
この映画の大島は、すっごく魅力的で、めちゃくちゃかわいい。これこそ、「鈴木の愛」なのだと感じた。
鈴木は大島を「かわいい」と思ってるのだろう。とはいえ、いわゆる「美人」だとは思っていないし、「美人じゃなくていい」と思っているのではなかろうか。
でも、どうやらちょっと違うらしい。
鈴木は大島と出会う前は、モデルなど美人とばかり付き合っていたという。しかし、どんなに美人でも飽きると気づく。そして、せっかく結婚するなら変わった結婚がしたいと、初対面のブスである大島にプロポーズした。
『ブスの瞳に恋してる』なぞ書きつつも、鈴木は大島に恋愛感情はない、一度も持ったことがない、という。要するに、どんなブスでも一緒に生活していればどうでもよくなるものだというのだ。なんだそれ。
よくよく考えれば、この『ハンサム★スーツ』における大島演じる本江の魅力とは、気立てがいいとかよく気が利くとか、いわゆる「男にとって都合のいい女性像」なんだよね。
そして、前々から疑問に思っていたのだけど、『ブスの瞳に恋してる』がドラマ化されるときに、なんで大島役は森三中の村上や女優の富田望生など、「美」を売りにしているわけではない女性なのに、鈴木役は稲垣吾郎やEXILE NAOTOなど「イケメン枠」の男性なのか。

これこそ忖度じゃないのか。

おそらく「男は顔じゃない」「女は顔だ」と心の底では考えている制作陣の男性諸君はその逆に、もっともあり得ない「イケメン」と「不美人」の組み合わせこそが、一番「美談」になりうると判断したのだろう。
やっぱり、『ハンサム★スーツ』も『ブスの瞳に恋してる』も令和の世、いや「本来の世の中」では許されないのは確かだ。
『ブスの瞳』は2019年だからギリ再ドラマ化できたのだ。
鈴木のWikiには「尊敬してきた人物は、SMAP×SMAPを共に作り上げてきた元SMAPの中居正広」と書かれている。放送作家引退の大きな理由の一つとして、「SMAPの解散」を挙げているという。
中居が消えることとなった、令和のコンプライアンスに鈴木の居場所はないように思えてならない。でも彼の特にバラエティでのスゴイ功績を見るにつけ、コンプライアンスキツキツの時代が早すぎなくてよかったと胸をなでおろしてもいる。
そうそう、『ハンサム★スーツ』について忘れてはならない。谷原章介もとっても魅力的だってこと。振り切ったギャグタッチの谷原、最高!それまで役柄からか、あまりいいイメージのなかった谷原を好きになった記念すべき映画なのだ。
