はじめて聞きにいったのよ
先々月のことです。
出入りしていたところの職員さんのPCに見覚えのある名前が表示されていました。音楽会的な鍋パーティをやるよ的なフライヤーの記事です。こんな珍しい名前の組み合わせは全国に2人いるかいないかというような具合なものですから、驚きました。
彼が生きていたこと、にです。
決して朗らかではないけれど、根暗という風でもない中途半端な私と中途半端に交流がある同級生のうちの一人が彼でした。
名前を見た時、世のベーシスト同様、ボベベベボベボベと絃を鳴らしていた彼の姿が脳裏に浮かぶと同時に高校卒業時、「この子は割と早くに地上を出てしまうかも」と感じたのを思い出しました。
音楽で有名になりたい/評価を上げるために音楽を使いたい、の境界がとても曖昧で進学先の音楽学校とは気質があまりにも違う上に、彼には自分でフィールドを広げる感覚が乏しいのを感じていました。
音楽世界は往々にして自らフィールドを広げることのできる者がチャンスを多くつかむ場所です。彼の性格は人好きもするし懐っこさを感じさせることには長けているように思う一方で、自分で世界を広げることはできても、活躍活動できるフィールドを増やしていく運にはあまり恵まれていないだろうなと思わざるを得ない場面が多くある人であったからです。
それだけに、彼が自分から玉の緒を絶とうとする前に彼のベースミュージックとミュージックベースを気に入り、一緒に音楽をしてくれる友や仲間ができてくれたらいいのに。もしかしたら、その時には間に合わないかも。と考えていました。そうよぎる程度には、我々の学年にはタナトスの淵にある水の匂いが、教師陣や生徒から漂っていたのです。
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というわけで、会場に連絡して今晩予約なしで行けるかどうかを確認してから現地入りしました。恥ずかしいけど作業服のまま。ぴよむらは割と気に入っているのでまあ、気にしません。会場は現代の建築物とは思えない角度の階段を上がって扉を開けると、いたのは息をしていた彼でした。
やはりとても驚いたのと嬉しかったのを覚えています。
一瞬、不思議な顔をされましたが、記憶が呼び出されたようでわかってもらえた様子です。ぎゅーっとハグタイム。名前を何度か呼びましたが人違いだったらその時は法廷に訴えて頂こうと思いながら、何度か感動の再会ハグをしました。
パフォーマーさんたちは「おー、再会や」とオーディエンスをしてくれていましたけれど、作業服の小男がベーシストと二人ぽっちでハグしあっているより見守ってくれる大人がいる方がより感動的でしょう。
人虎伝よろしくかつて豊頬の美青年の面影を求めるどころか、彼は大分サイズアップしていました。声や話し方は随分年相応のまろみを帯びるようになっていましたが、なんというか君が音楽おじさんになっていて安心です。
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開演前に少しお話ししてもらっちゃう。
今夜のおなべは何、アルコール飲める飲まないの、何曲くらいおやりに?、あちらの方がご一緒に、ふーん、線路の目の前なんていいね、ふふふ。
開け前なので話もそこそこにして椅子に座って眺めていると、彼に会いに来た人も多い様子でぴよむらも勝手に自慢げに気持ちになります。ふふ、そうでしょうそうでしょう、彼センスいいのよ。
パフォーマーさんも何人かお出になってみえたので、お客さんも多いように感じます。この手の会に大阪ではどのくらい来るのが相場なのか分からない私には万客満員のように見えます。共演者さん目当てのお客さんも多くいるととても嬉しい気持ちになりました。
いざ始まってみると結構いい音楽。バーカウンターがpaさんをしてましたが、いい音響お酒も美味しい。なんか半ばまでスピーカーが?なパートがあったけど、誰か分からない。しかし、全然聞こえるので、みんないいミュージシャンなんだなあと素人耳にもわかりました。すごいねえプロの人って。コロナ以来、ぴよむらは音感覚が悪くなっており、どうしても学生時代の耳でこの人たちの曲が聞けなくて残念でしたが、すごく「いいかんじ」。
あと雰囲気的にインストなのかと思ってたら、全然歌詞あった。
というよりは全体的にポエトリーリーディングだなあと。いかにもなポップスではないので、そうなのでしょうけれど、言葉の力を割と強く使うものが多くて、仕事柄引きずられそうになりましたが、下階にお酒をとりにいったり、お鍋をたべたりして耐えたり。リフレイン小節と比喩法が多いのでこの人たちはそういうエディター集団なのかしらともおもったり。
彼に限って言えば、音は優しくなってたり、使う言葉が迷子だったりと高校時代から変わったところもそのままのところもありつつ、その遷移具合がこうやってみられるのは楽しいなあとおもったのでした。相変わらず、会場や趣向を含めてパフォーマンス性とアプローチ技法を凝らしてるあたりは双方向的なパンクチュアリティを要求されましたが、弾いてる時の顔が高校の時ほどうるさくないので大分手加減をしてくれたのでしょう。
おひとり、森山直太朗と同様の訴求修辞法と音楽系を用いる方がいたためにかなり会にこの子(他メンバーと本人を含め)の多様性を奪われている感は否めませんでしたが、それも今回の見せどころなのかしらともおもったり。
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この日は再会だったこともあって、会自体はさることながらその後、いっぱいおしゃべりをしたことの方が個人的には嬉しい思い出になってしまって、大変彼には言いにくいです。でも、高校の私を知っている人と話すのはそれこそ最後の礼拝以来なので、8年も前となるとやはり感慨深いのも事実でしょう。
大学はどうだった、高校時代のクラスメートたちは、メガジョッキ頼んでいい?、彼の弾き方いいね好き、あなた演奏中のだいぶお顔煩くなくなったね、いっぱい傷ついたんだね、僕も多少なりと傷とまではいかないけども、君は今カレー屋さんにいるの、メガジョッキ頼んでいい?、へえ彼女とつきあったんだねえ、いい人たちと音楽してるんだねえ、お鍋は誰の提案だったの、音楽する人はだいたい同じ人かね、メガジョッキ頼んでいい?、こまったねえ、めがじょ…
終盤。
ぴよむらは普段飲む習慣がないために、嬉しいと大酒をしてしまい、ぺろぺろになってタクシーを捕まえるのにも苦労し、ズボンはおしっこ漏れてるしで、いかにも不潔な飲んだくれが出来上がってしまって大変申し訳がない。いっぱい言葉を尽くそうにも、病が言語思考と口をつぐませてしまうし、酒で足は転ぶから随分だらしない奴だなと思われたかもしれません。とはいえ、恥ずかしい訳ではないので、何かのタイミングでもう一回歌聞きに行こうかなと思ってから、もう年度が替わりそうになってしまった。カレー屋の名前聞こうとしたメモだけが残っていました。
とっぴんぱらりのぷう。
