ありがとう、愛しのソフトケース | お別れは突然に【よもやま話 ep.11】
こんばんは!
低音に静かな情熱を注ぐアラフィフ、チューバ吹きのサンチです。
それは突然のことでした。
朝、いつもどおりママさんブラスの練習に向かうため、電車に乗りました。
席が空いていたので座ろうと思い、背中の相棒をよっこらせと下に降ろそうとしました。
ブチッ
何かが布か紐のようなものが切れる不吉な音。
突然肩から相棒が滑り落ちました。
慌てて腕で抱える私。
なんと背負うための紐(ショルダーストラップ)が根元から千切れてしまったんです!
購入してから15年超。見かけ的にも経年劣化がだいぶ進んでいましたが、まさかこのタイミングで壊れてしまうとは…
幸い相棒を地面に打ち付けるようなヘマはせずに済んだんですが、これから駅に降りて、練習場所まで15分ほど歩かなければなりません。
電車の席で半ば呆然としつつ、3つ先の下車駅までの間に善後策を必死に検討。
ケースの小物入れの中に、スポーツバックのように肩掛けをするためのストラップが入っていたのを思い出し、急遽それを取り付けて持ち運ぶことにしました。
最寄り駅を下車し、ホームの空いているスペースを探します。
右肩にストラップをかけつつ、相棒を体の外側に「エイヤッ」と遠心力で外向きに放り出すようにスイング。
腰と右肩で支えるかたちで相棒を背負い、なんとか歩き始めました。
ただ、普段とは違う持ち方な上に、相棒とソフトケースの全重量が片側だけにズシッとかかるので、2、3分歩いただけでフラフラよろよろ。
しかもチューバを横向きに背負っているので横幅を取ってしまい、通行人の皆さんからするとひどく邪魔になっているように思います。
いつも以上に周りの人の目線が痛い(ような気がする)。
でも足早に先を急ぐこともできません。
いつもの1.5倍近くの時間をかけて、ようやく練習場所に到着しました。
団員の皆さんも私の話を聞いてとても心配してくれて、何かよい手はないか一緒に考えてくれたんですが、結局、
なるはやで楽器屋さんに行ったほうがよい
という結論になりました。
練習の帰り道、私は家から比較的近くにある楽器屋さんに電話をしてチューバ用の取扱いがあるか聞いてみました。
「幸い取扱いはあるものの、サイズ感を確かめるため一度来店したほうがよい」とのことでした。
ケースの取扱いがあったことは朗報でしたが、気になるのはお値段。恐る恐る聞いてみると、
「税込みで約8万円になります。」
とのこと。
痛恨の一撃!!!
正直予想していた金額の倍近くはしました。
店員さんに動揺を悟られないようにしつつ、いったん電話を切った私。
帰宅後、妻とプチ会議。
ネット販売で4万円代のケースも見つけられましたが、サイズ感や材質等を確かめられない点がネック。そして、何より、悲鳴を上げているアラフィフの身体のことを考えると、壊れたケースで当面凌ぐという選択肢は取りえませんでした。
最終的に妻も納得してくれましたので、その日の夕方、私は相棒の入った先代ソフトケースを携え、えっちらおっちら電話をした楽器屋さんに向かいました。
楽器屋さんに到着して、近くにいた店員さんに昼頃の電話の件をお伝えすると、早速販売しているソフトケースの見本を持ってきてくれました。
奇しくも、色合いは先代とよく似ている青色でした。
さすがお値段が張るだけあって、つくりはとてもしっかりしています。
つい「とても良い品だと思いますけど、いかんせんお値段が、、」という心の声を思わずそのまま口に出してしまうけちん坊こと私。
「そうですよねー。楽器が大きいとケースもねー。」と苦笑する店員。
恥ずかしい気持ちをごまかすように、引き続きケースの仕様を確かめましたが、小物等の収納も問題なさそうです。
大きく違う点を挙げるとすれば、先代がファスナーを開けて楽器を横向きに収納するタイプだったのに対し、お店のソフトケースは、ケースのベルのかたちをした部分のファスナーを開けて、縦向きに楽器を収納するタイプでした。
試しに相棒を入れてみたところ、多少手間取りましたが、思ったよりもスムーズに収納できました。サイズ感も大丈夫そうです。
よし、買おう!
店員さんに購入の意向を伝えると、私の懐具合を察してくれた店員さんから救いの手が。
「購入するのは、新品がよろしいですか?それともアウトレット品でも大丈夫ですか?」
即座に、
「安い方で(アウトレット品で)お願いします!」
と答える私。
アウトレット品は、新品と比較して、若干内部のほつれや汚れが見られるそうですが、品質的には問題ないとのこと。
そしてお値段は、7万円弱と少しディスカウントされていました。
ありがとう、気が利く店員さん!
これで、新しいケースに入れて持ち帰るめどは立ちました。
さて、そうなると、ストラップの切れた先代をどうするかが問題です。
店員さんに相談すると、有料で処分してもらえるとのこと。
ケースが2つあってもしょうがないし、そもそもケース2つ持ち運ぶのは無理そうです。
ただ、このケース、色合い・デザインともに買った当初からお気に入りでした。
考えてみれば、押し入れやトランクルームに封印されていた15年間も、ずっと相棒の側にいてくれたのは先代でした。
再起動した後の私の練習通いにも、毎週付き合ってくれたよね。
そのことに、今さら気づきます。
ただ、結局私は先代とお別れをすることにしました。
今までありがとう、先代ソフトケース。
お陰で私は、15年の封印期間を経てもなお、相棒とともに音楽を楽しめています。
先代が寂しそうにカウンターの横に立てかけて置かれている様子をなるべく見ないように、そそくさとお金を支払い、店を後にしました。
帰り道、二代目を早速背負ってみると、やはり両肩がけの方がはるかに楽です。
しかも先代よりもストラップがしっかりしていて、肩や腰への負担感も減ったようです。
また、ケース自体の色が青色で先代を彷彿とさせる点も私的には気に入りました。
うん、よい買い物だった!
自分を納得させるように心の中でつぶやきます。
そこへ、
そうだ、せめて写真でも一緒に撮っておけばよかっただろうか。
いまさら後悔する気持ちがふと頭をもたげましたが、壊れたソフトケースと記念写真を撮る自分の滑稽な姿を頭に思い浮かべ、ないない、それはないと思い直す。
まずは、この二代目を相棒と同じく大事に取り扱って、なるべく長く使うようにしよう。
そう心に決めて、夕方の人混みをよけつつ、家路へと急ぎました。
ほっとしたせいもあってか、正直心身ともにどっと疲れていましたが、背中の二代目の柔らかさが、自分には何よりの癒しに感じられました。
自然と足取りも軽くなったように思いました。
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