「上手くできなくて足が遠のいていた」と仰っていた親御さん。視能訓練士が伝えたい、完璧じゃなくてもいい理由
視能訓練士のPlusPlotです。
3歳児検診で引っかかったあと、一度は受診したけれども、その時うまく検査できずに、その後の定期検診(受診指示あり)に来れていない男の子がいらっしゃいました。
今回はその話です。
自分が考えさせられたので、淡々とではありますが記載しました。
(特定にならないように細かいところフェイクを入れています)
その日は診療終了時間ギリギリに、予約外で「左眼がかゆい」という主訴でいらしていました。
そのため、その日の受診のメインは先生の診察です。
しかし、診察まで5人くらい分の待ちがありました。
少し勇気を出して、
「もし、診察までの時間、元気がありそうだったら、次の定期検診のために、少し練習していきませんか?慣れるために、物を触るだけでも大丈夫ですよ」
「目がかゆくて気分がのらない場合は、無理しなくても大丈夫です」
と声をかけてみました。
お母さんはスーツ。
忙しい中、お子さんのために仕事終わりに連れてきてくれたんだと思います。
お母さんは、「この子は初めてのことに不安が強く、不安が強まると癇癪になってしまうのですが、もしよかったら今機嫌はいいのでお願いしていいですか?」
と仰ってくれました。
その日は、
検査の椅子に座ってみたり、
ハンドルを持ってみたり、
絵指標の蝶や魚など(お友達だよ、と声をかけ)みてもらったりしました。
検眼枠も触ってみて2秒くらいかけてみたりしました。
その日は、(トライはしましたが)視力の数字は出ませんでした。でも道具と触れ合って慣れることができました。
立体視の検査はトライしたら再現性を持って数字が出ました。
「この前来た時より、(成長して)指示が通っている」と、お母さんは嬉しそうに表情をやわらげていました。
お母さんは、
「受診しても結局上手くできるか分からなくて、足が遠のいていたんです」と仰っていました。
お母さんには、「全部完璧でなくても大丈夫なので、また是非いらしてください」とお伝えし、
本人にも「また今度、続きやろうね」
と話してみました。
帰りの電車で(電車酔いしながら)、その子のことを考えていました。
何回か来ることで、
❝
同じ待合のソファー
同じ先生
同じお部屋
同じ道具
機械がこわそうだったけど怖くなかった
痛そうだけど痛くなかった
暗い部屋だけど、おばけさんは出てこなかった
恐る恐る検眼枠を掛けてみたら、かっこいいよと言われた
待合室のソファーの座り心地がよかった
❞
きっと積み重ねで不安が減っていくのかな思いました。
視力検査が一発でできないのと、逆上がりが一発でできないのとは、「練習が必要」という意味ではちょっと似ているのかなと思います。
何回かトライできる「場慣れ」の環境があれば、少し違うのかな、どうなのかな、と思いました。
その日のその子の検査において、当然できる限りの声かけ・テンポ・技術の工夫は尽くします。
しかし、(次に繋げるために)その子の気持ちの限界も見極めながら、進める・切り上げることも、時には必要です。
「未来のその子のために今何とかしてあげたい」という気持ちと、
「今日のその子の気持ちで無理強いしすぎない」そのバランスが難しいと感じ、非常に考えさせられました(未だにその間を揺れております)。
どんな着地でも、検査の最後には、できるだけ次に繋がるような声かけをしています。
いずれ、未就学児を対象にした「しりょくけんさのれんしゅうかい」みたいなものが、どこかでできたらいいなと改めて思った出来事でした。
