カメラのメーカーを一つにそろえたい。でも決められない
私は、道具や仕組みをできるだけシンプルにしたいと思っている。
服はユニクロ、靴はニューバランス、時計はG-SHOCK。ある程度、自分の中で定番を決めてしまえば、買い物のたびに一から悩まなくて済む。選択肢を減らすことで、本当に考えたいことに時間を使える。
だから、カメラも一つのメーカーにそろえたい。
同じメーカーでそろえれば、操作方法を統一できる。バッテリーや充電器、スマートフォン用のアプリもまとめられる。レンズ交換式カメラなら、購入したレンズを次のボディでも使い続けられる。
長く使うことを考えても、一つのメーカーに決めたほうが合理的だ。
そう思っているのに、現在、私の手元には3社のカメラがある。
最初に買ったカメラは、OLYMPUS PEN E-PL10だった。
初めてのカメラなので、なるべく小さくて、扱いやすく、気軽に持ち出せるものがいいと思って選んだ。大きなカメラやたくさんのレンズを持ち歩くつもりはなかったし、そもそも、この先カメラを複数台買うことになるとは思っていなかった。
今振り返れば、このころから私はカメラにもシンプルさを求めていたのだと思う。
ところが、カメラを使っているうちに、フルサイズというものが気になり始めた。
センサーが大きいと、写真はどのくらい変わるのか。暗い場所ではどれくらいきれいに撮れるのか。背景のボケ方は違うのか。一度は自分で使って確かめてみたくなり、SONY α7Ⅲを買った。
小さくて気軽なカメラがよかったはずなのに、フルサイズ機を増やしてしまった。
それでもα7Ⅲは、買ってよかったと思っている。発売から時間はたっているが、写真の画質には今でも大きな不満がない。フルサイズらしい余裕があり、暗い場所にも強い。オートフォーカスも私の使い方には十分で、レンズの選択肢も多い。
合理的に考えるなら、このままSONYを軸にするのが自然なのだと思う。
今後もSONYのカメラを選べば、レンズや操作方法を引き継げる。新しくカメラを買うたびに、一から環境をつくり直す必要もない。
ところが、その後、私はFUJIFILMにも手を出した。
理由は、フィルムシミュレーションを使ってみたかったからだ。
写真を撮ったあとに細かく編集するのではなく、カメラの中で色や雰囲気を選び、そのまま完成した写真として楽しむ。SONYとは違うカメラの楽しみ方があるように見えた。
そうして、X-M5が加わった。
X-M5は小さくて軽く、持ち出す負担が少ない。フィルムシミュレーションによって、写真の仕上がりを変えて楽しむこともできる。α7Ⅲとは違う方向の魅力がある。
メーカーを一つにそろえたいと思っている人間が、OLYMPUS、SONY、FUJIFILMと、順調にメーカーを増やしている。
そして現在、私が一番欲しいカメラはLUMIX L10である。
ここまで来ると、かなり矛盾している。
カメラのメーカーを一つにまとめたい。持ち物を増やしすぎたくない。操作方法やアプリも統一したい。同じ道具を長く使いたい。
そう思っているのに、次に気になっているのは、今持っているどのカメラとも違うメーカーの製品だ。
合理性だけで考えれば、新しいメーカーを増やす必要はない。SONYを使い続けると決めるか、FUJIFILMへそろえていくか。どちらかを選んだほうが、機材も運用も整理しやすい。
それでも、LUMIX L10が気になる。
普段から持ち歩けそうな大きさや、一台で幅広い場面を撮れそうなところにひかれている。レンズを何本もそろえるのではなく、一台でなるべく多くのことを済ませたいという考え方は、むしろ私が求めているシンプルさに近い。
メーカーを増やすことになるのに、カメラ単体ではシンプルに見える。
ここにも矛盾がある。
ただ、そもそも私は、カメラのメーカーを一つに決められるほど、それぞれのカメラを使い込んできたのだろうかとも思う。
カメラは本当に好きだ。
新しい機種を調べたり、メーカーごとの特徴を比べたりするのも楽しい。写真を撮ることだけでなく、カメラという道具そのものにひかれているのは間違いない。
ただ、毎日カメラを持ち歩き、日常のあらゆる場面を撮影しているわけではない。
私がカメラを使うのは、旅行に行った日や、どこかへ出かけた日など、少し特別な時間を残したいときが多い。毎日使い続けて操作を体に覚え込ませたり、さまざまなレンズを試したりしながら、一つのシステムを深く掘り下げてきたわけではない。
そのため、どのメーカーが自分に最も合っているのかを決められるほどの経験値が、まだ私にはないのかもしれない。
本当に一つのメーカーへ絞るなら、もっと多くの時間をかけて撮影し、レンズや機種を試し、それぞれの長所と短所を自分の使い方の中で確かめる必要があるのだと思う。
けれど、そこに最も多くの時間やお金を使いたいかと聞かれると、そうではない。
今持っているカメラに、大きな不満があるわけではない。どのカメラでも、出かけた日の景色や、そのときの思い出を十分に残すことができる。
メーカーを一つに決めるために、さらに機材を買い、比較し、自分にとっての正解を探し続ける。それよりも、今ある機材を使って、写真に残したい時間を増やしていきたい。
たとえば、自由に使える30万円があったとする。
そのお金で新しいカメラやレンズを買うこともできる。しかし今の私なら、新しい機材を買うより、旅行に使いたいと思う。
カメラが好きではないからではない。
むしろカメラが好きだからこそ、今持っているカメラを持って、新しい景色を見に行きたい。
そう考えると、メーカーを一つに統一することは、今すぐ達成しなければならない目標ではないのだと思う。
一つのメーカーにそろえたいという気持ちは、機材をどこまでも深く追求したいというより、選択肢を減らし、管理を簡単にしたいという気持ちから生まれている。
しかし、管理を簡単にしたいのに、それぞれのメーカーの違いが気になってしまう。
SONYには、フルサイズの画質やレンズの豊富さ、システムとしての安心感がある。FUJIFILMには、フィルムシミュレーションや撮って出しの楽しさがある。OLYMPUS PENには、小さく気軽に持ち出せる魅力がある。そして今度は、LUMIXにまた別の魅力を感じている。
どれか一つを選ぶということは、ほかのメーカーにしかない魅力を手放すことでもある。
だから決められない。
私は、カメラを買い始めたころからシンプルさを求めていた。それなのに、フルサイズを試したくなり、フィルムシミュレーションも使ってみたくなり、今度はLUMIXにひかれている。
言っていることと、やっていることが一致していない。
今の機材に不満はない。新しい機材より旅行にお金を使いたい。メーカーも増やしたくない。それなのに、LUMIX L10が気になっている。
やはり矛盾だらけである。
一つのメーカーに決めたい気持ちは、今もある。ただ、その答えを出すために、さらに多くの機材を買って使い比べることが、本当に私の望んでいることなのかは分からない。
今はまだ、メーカーを決めることよりも、手元にあるカメラで思い出を残していくほうが大切なのだと思う。
そう言いながらLUMIX L10のことを調べているのだから、結局のところ、私はまだしばらく、この矛盾を抱えたままなのだろう。
